SL60cm前後になる。全体に黒っぽい(ヨシノゴチは明るい色合い)。頭部の棘はあまり強くない。体は細長く、縦扁している(平たい)。ヨシノゴチと比べると目は小さく左右に離れている。口もヨシノゴチと比べて丸い。砂地に馴染む色合いで目立たない。
マゴチの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)
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魚貝の物知り度
★★★
知っていたら通人級食べ物としての重要度
★★★
一般的(流通量は普通)味の評価度
★★★★
非常に美味
分類
顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目カサゴ亜目コチ亜目コチ科コチ属外国名
学名
Platycephalus sp.2漢字・学名由来
漢字 真鯒、真牛尾魚 Magoti
由来・語源 もともとの標準和名はコチである。1991年のヨシノゴチと区別するために真をつけた。クロゴチとも。
■ 漢字で「鯒」は敵に遭うと飛び跳ねるように逃げる。この様を「踊る」として文字を作った。
■ 漢字で「牛尾魚」とも書く。牛の尾の形なので。
■ 大言海に“笏(こつ)”に似ているため。“笏(こつ)”は衣冠束帯(貴族の正装)のとき右手にもっていた細長い木の板。字音が“骨”に似ているため「しゃく」と読ませるようになった。
■ 「こち」は「こつ」で頭を表す方言。
■ 「こち」は「骨」で骨っぽいことから。地方名・市場名
生息域
海水魚。水深30m以浅の砂地。
青森県〜九州南岸の太平洋沿岸、若狭湾〜九州南岸の日本海・東シナ海沿岸、瀬戸内海、種子島。生態
■ 雄性先熟。満2歳35センチまでは雄。40センチを超えると雌に性転換する。
■ 産卵期は4月から7月。
■ 水深30メートルくらいまでの浅い砂地でエビや魚を捕食している。基本情報
コチ科で古くから愛されてきた白身の高級魚。江戸時代の江戸や大坂、名古屋など大都市は大きな湾の奥にあるものだが、そんな沿岸域でたくさんとれる。ある意味、白身の高級魚の代表的なもの。年間を通してやや高値だが、ヒラメの味が落ちる初夏に旬を迎える。夏の白身の代表格だ。水産基本情報
市場での評価 年間を通じて入荷は多いが、初夏から秋が多い。値段はやや高め安定。夏の活魚は高級。
漁法 刺し網、底引き網、釣り
主な産地選び方
コチ(まごち)に2種あり、もうひとつのヨシノゴチはやや色合いが薄く丸く褐色の斑紋が散らばる。
対して本種は全体が黒っぽく丸い斑紋がない。味はマゴチのほうがいい。活け締めよりも活魚の方がいい。野締めは味が良くない。触って張りのあるもの。目が小さく見えるもの。退色が褪せたものは古い。味わい
春〜夏が旬。産卵期と一致し、マゴチにとって「快適な温度でエサをしきりに食べる時期にあたるのではないか」と思う。
鱗は小さくて取りにくい。皮はしっかりとして厚みがある。骨はあまり硬くない。
透明感のある白身で黒い網状のものがあることが多い。日を通しても硬く締まらない。刺身などにすると非常に歩留まりが悪い。栄養
ー危険性など
ー食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)
マゴチの料理法・調理法・食べ方/生食(刺身、洗い、セビチェ)、煮る(煮つけ、浜いり、トマト煮込み)、揚げる(唐揚げ、天ぷら)、ソテー(バター焼き、ポワレ)、汁(潮汁、みそ汁、鍋)、塩焼きクリックで閉じます
マゴチの刺身 これも活魚もしくは活け締めを使いたい。水洗いして頭部を落とし、三枚に下ろす。皮を引き、薄めに切りつける。上品でいながら甘味があり、後味がよく夏に食べて爽やかな味である。柑橘類と塩で食べてもおいしい。
マゴチの洗い 活魚を冷やさないまま持ち帰り、薄切りにして流水で洗ったもの。コチの洗いはイノシン酸など旨み成分が少ないものの、なぜか甘味が感じられ、食感が涼やかだ。食感のよさに、しょうゆのアミノ酸が作り出す味。塩、柑橘類もオススメ。クリックで閉じますマゴチの煮つけ 頭部とかまの部分を薄味で煮たもの。頭部とかまは湯通しして冷水に落とす。残った鱗やぬめりを流し、酒・薄口しょうゆ・水で煮上げる。隠れ肉(ほお)、皮、など甘味があって実に味わい深い。煮汁にもいいだしが出ているので、身とからめながら食べるといい。食べた後は骨湯にして欲しい。クリックで閉じます
マゴチのフライ 野締めなどは安いので、別に生食にこだわらなくてもいい。胴の部分を三枚に下ろして、皮を引き、血合い骨を抜く。火の通りをよくするために切れ目を入れる。塩コショウして、溶き卵(バッター液でも)をくぐらせて、パン粉をまぶして揚げる。適度に身が締まり、甘味を感じる。ほどよく繊維質で非常に美味だ。クリックで閉じます
好んで食べる地域・名物料理
煮つけ 適宜に切ったマゴチを煮つけにしたもの。[千菜市 佐賀県鹿島市]長崎県雲仙市富津、コチの湯がけ 佐藤厚さんに教わった料理。水洗いして三枚に下ろし、腹骨をすき、血合い骨を抜く。皮付きのままやや厚めの刺身状に切り、まな板などにのせてゆをかける。氷水で粗熱をとり、水分をよく切り、刺身醤油、酢みそなどで食べる。クリックで閉じます長崎県雲仙市富津、コチの湯引き 佐藤厚さんに教えていただいた。水洗いして三枚に下ろして腹骨・血合い骨を取る。皮付きのままやや厚めの刺身状にきり、熱湯に落として5〜6秒湯がいて氷水に落とす。水分をよくきり、酢みそ、わさび醤油などで食べる。クリックで閉じますこちのかけ飯 岡山の郷土料理、「こちのかけ飯」は簡単で、しかも非常においしい。コチをゆでて、身をほぐし、炒め、野菜合わせてゆで汁を加え、酒、しょうゆ、塩などで味つけする。これを飯にかける。油でいためないで、ゆで汁にしょうゆ、酒などで味つけして、ごぼう、にんじんなどを煮て、コチのほぐし身を加えるというやり方もある。あっさりしてうま味が強く、何杯食べても食べ飽きぬ味だ。クリックで閉じます長崎県雲仙市富津、コチの鍋 佐藤厚さんに教わった料理。コチの鍋はよく作るとのこと。水洗いして適当に切る。ここでは湯通ししてヌメリや鱗をとったが、鮮度がよければ不要かも。油揚げ(厚揚げのことだが、雲仙市では薄揚げという)と白菜などと似ながら食べる。コチからいい味が出て非常においしい。クリックで閉じます関連コラム(郷土料理)
ゆでるタイプの「かけ飯」
岡山中央市場や書籍、また旧児島湾周辺で教わったものだ。要するに白身魚を使った、汁かけ飯である。いろいろ取材した限りでは岡山市、玉野市などでの家庭料理であるようだ・・・ 続きを開く湯がけ・長崎県の湯がけ
長崎県雲仙市小浜富津・平戸市度島で作られているもの。他の地方でも作られているはずだが、まだ情報を収集できていない。 地域によって魚種が代わる。 魚を皮付きのまま・・・ 続きを開く湯引き・長崎県雲仙市富津の湯引き
長崎県雲仙市小浜富津で作られているもの。 魚を皮付きのまま湯通しするのを「湯引き」といい。 三枚に下ろして腹骨と血合い骨を取った状態で湯をかける「湯がけ」がある・・・ 続きを開く加工品・名産品
ー釣り情報
関東では千葉県の内房でエビ、ネズミゴチ(ネズッポ科)などを餌に釣らせる船がある。すなわち生餌のくわせ釣りである。1匹かけるともう一匹くるぞと相模湾などでは言われることがある。確かにコチを釣り上げるときに他のコチが水面近くまで追いかけてくることがある。コチは必ず夫婦2匹でいるもので、片割れが釣り上がると追いかけるようにハリにかかるのだそうだ。歴史・ことわざ・雑学など
コチは夫婦仲がいい 常に雄雌、夫婦仲良くつがいで暮らすと相模湾などでは言われている。先に1尾釣れると、必ずその夫婦片割れが釣れる。1尾釣ると2尾目がくるとも。
夏の魚 歳時記・季題は「夏」。
照りゴチ 釣りの世界では真夏の、いちばん熱く日が照りこむ時期のコチのことをいう。夏のいちばん暑い時期が旬だという意味と、釣り時であるという意味がある。
江都海尤多し 〈江都海尤多し、夏月洗ひ鱠(なます)となすときは、こひすずきに次て、酒媒(さけのさかな)の一品なり〉『魚鑑』(武井周作 天保辛卯 1831)参考文献・協力
協力/ねこや商店(宮崎県日南市油津)
『日本産魚類検索 全種の同定 第二版』(中坊徹次編 東海大学出版会)、『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年)、『魚類学 下』(落合明、田中克 恒星社厚生閣)、『新釈魚名考』(榮川省造 青銅企画出版)、『たべもの語源辞典』(清水桂一編 東京堂出版)、『歳時記語源辞典』(橋本文三郎 文芸社)