殻長3-50cm前後になる。茶褐色、黒褐色でつやがあり正三角形に近く、大型になると成長脈がくっきりしてくる。内側は白く個体によっては彩色される。[比較的若い個体。木曽川産]
ヤマトシジミの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)
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珍魚度・珍しさ
★
いつでも手に入る魚貝の物知り度
★
知らなきゃ恥食べ物としての重要度
★★★★
重要味の評価度
★★★★
非常に美味
分類
二枚貝綱マルスダレガイ目シジミ上科シジミ超科シジミ科シジミ亜科シジミ属ヤマトシジミ亜属関連コラム(同定)
水産生物を調べているという病で、タイワンシジミかも? と懊悩する
千葉県の食堂でトンカツ定食を食べていた。自宅では魚貝類しか食べないので、外食ではついついトンな気持ちになる。 水産生物とヒトとの関わりを調べていると、その膨大な・・・ 続きを開く外国名
学名
Corbicula japonica Prime, 1864漢字・学名由来
漢字 大和蜆、大和四時貝 Yamatosijimi
由来・語源 本来は単に「蜆(しじみ)」だが、分類が進むと複数種がいることがわかってくる。本種は汽水域にいるタイプで、淡水域のマシジミと区別するために、岩川友太郎が小種名「japonica」を訳してつけたのだと思われる。
余談になるが、昆虫の蝶にもヤマトシジミ(チョウ目シジミチョウ科)がいる。シジミチョウ自体、シジミ(貝)に似て小さな蝶という意味。
シジミの語源■ 「シジミ」の呼び名は貝殻の表面に横じわが多数あって「縮貝(ちぢみがい)」からきている。小野蘭山も「シゞミ」とともに「チゞミ」、「チゞガイ」としている。
■ 煮ると身が縮むから。
■ 繁群れているから。地方名・市場名
生息域
汽水域。
北海道から四国九州までの汽水域。
サハリン、朝鮮半島。生態
塩分を含む汽水域の砂泥に棲息。
雌雄異体、性転換する。卵生。産卵期は晩春(春)から秋口まで。
孵化するとトロコフォア、ベリジャー幼生期を経て稚貝になる。
成長は島根県宍道湖の例によると、1年で5mm、2年で10mm、3年で15mm、4年で18mmになる。
寿命は10年以上。基本情報
北海道から九州までの汽水域にいる。流通上で単にシジミと言えばヤマトシジミのことだ。流通するシジミのほとんどが本種で、1万トン以上の生産量がある。代表的な産地は島根県、茨城県、三重県、北海道、青森県など。ただし汽水域という汚染や環境破壊が起こりやすい水域にいるために、激減して今日にいたる。
古くからの産地である利根川河口域は壊滅的な状況となり、愛知、三重県などの産地も衰退している。目先のお金に惑わされ、未来を考えない政治家と行政のための汽水域破壊はそろそろやめるべきだ。
日本人の生活に欠かせない二枚貝なので、国産だけではまかなえず、中国やロシア、韓国などから輸入もので補っている。
珍しさ度 比較的たやすくスーパーなどで手に入る。水産基本情報
市場での評価 年間をとおして入荷してくる。シジミ類中ヤマトシジミは国産の大部分をしめる。値段は比較的安値で安定している。
漁法 掻剥漁(貝掻網)
主な産地 島根県、青森県、茨城県、北海道、東京都、三重県
国内産地 北海道網走湖他、青森県十三湖・小川原湖、茨城県涸沼、千葉県利根川河口、愛知県、三重県木曽川河口、大阪府淀川河口、島根県宍道湖・神西湖。
ローカルな産地 兵庫県日本海側円山川、鳥取県東郷池・湖山池、徳島県吉野川など無数にある。
輸入 中国、韓国、ロシアなどからの輸入物が多くなっている。ここにはタイリクシジミ、バチガタシジミ、マシジミに近いもの、タイワンシジミなども含まれる。タイワンシジミは各地に進入して問題化している。
選び方
原則的には生きているもの。貝の表面につやのあるもの。
冷凍ものも非常に優れている。味わい
栄養
古くから肝臓にいいとされている。これは肝臓の働きをよくし、胆汁などの精製を助けるオルニチン、メチオニン、タウリンが豊富であるため。必須アミノ酸がバランスよく含まれている。ビタミンB12、B2が豊富である。危険性など
ー食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)
ヤマトシジミ(シジミ)の料理・レシピ・食べ方/汁(みそ汁、潮汁)、蒸し煮(ワイン蒸し、酒蒸し、紹興酒蒸し)クリックで閉じますシジミのみそ汁
ヤマトシジミのみそ汁 シジミ類のもっとも基本的な料理。だしは不要。湯に入れると身がふっくらと仕上がるが汁のうま味は薄い。水から煮ると少し身が縮むが汁の味は濃厚にあがる。みそはお好みのもので。地のみそを使うことをオススメする。料理法など好みのやり方で、家庭ごとに違う方がいい。
ヤマトシジミの汁 ザルに入れて洗う。水分をよく切り、水・酒・シジミを鍋に入れて火をつける。貝殻が開いたら加減をみて塩を加える。ねぎなどの薬味はお好みで。徳島県徳島市応神町、吉野川産のヤマトシジミを使ったが、ドロ臭味は皆無、身がふっくらとしてやたらにうまい。クリックで閉じますヤマトシジミの鍋(シジミ鍋) 青森県小川原湖の超大型を使った。ザルに入れて流水でていねいに洗う。これを昆布だし・酒・塩のつゆの中で煮ながら食べる。シジミやハマグリにない渋味や苦みが軟体の甘さと相まって味に深みを出す。フタが開いたのから食べると止められなくなる。クリックで閉じますヤマトシジミの酒蒸 大振りのものが手に入ったときに造る。泥抜きしてザルなどに入れてざくざくと流水で洗う。これを鍋に入れて酒と塩、もしくは醤油を加えて蒸し煮にする。アサリと違って塩分を加える必要がある。蓋をして貝殻が開いたら出来上がり。身は柔らかく独特の風味と微かな苦みがある。非常に味わい深い。クリックで閉じますヤマトシジミの台湾風醤油蒸 李錦記で出している香味醤油(甘味のある醤油)でさっと煮上げたもの。醤油と紹興酒、にんんく、八角を合わせて一煮立ちしたところにていねいに洗ったシジミを入れて貝殻が開いたら出来上がり。これをひとつずつしゃぶりとるように食べる。食べ始めたら止められなくなる。クリックで閉じますヤマトシジミのワイン蒸し フライパンなどにつぶしたニンニク、オリーブオイルを入れて香りが出て来たらシジミを入れる。オリーブオイルをからめて、白ワインを加えて塩味をつける。仕上げにコショウを振る。徳島県徳島市応神町産のヤマトシジミを使用した。臭味は皆無で最上級の味になった。クリックで閉じますシジミのワイン蒸し
好んで食べる地域・名物料理
ー加工品・名産品
釣り情報
ー歴史・ことわざ・雑学など
ひな祭(ひなの節句) 京都では雛の節句にしじみをたく。しょうがでたくことが多いという。これは全国的なものだと思っている。[聞取は20180619 京都東山区五条大橋詰・金屋町]
シジミ3種 国内でとれる食用のシジミは沖縄地方を除くとマシジミ、セタシジミ、ヤマトシジミの3種。流通するほとんどがヤマトシジミで、少ないながらセタシジミが流通する。マシジミはほとんど取り引きの対象にはなっていない。
寒と土用 「寒しじみ」という言葉と「土用しじみ」という言葉がある。「寒」にうまいのはマシジミ、「土用(夏)」にうまいのはヤマトシジミとされてるがはっきりしない。
深川しじみ売り 江戸時代より、深川方面(江戸時代深川には広大な汽水域があった)より「しじみ売り」が来ていたという。これに関しての文献を少しずつあげていくことにする。
しじみ売り 『石版東京図絵』(永井龍男 中公文庫)。明治後期から大正にかけてのしじみ売りが出てくる。
しじみとは シジミチョウとは「シジミのように小さな蝶という意味合い」。
俗語 「しじめっかい」:はやし詞に「内の中の蛤貝、外にでると蜆ッ貝」。すなわち内弁慶のこと。『明治東京風俗語事典』(正岡容 有光堂 1957)
俗語 「内の蛤、外の蜆ッ貝」:内弁慶のことで家内では活発で乱暴だが外に出ると臆病で静かであること。参考文献・協力
『日本産淡水貝類図鑑 1 琵琶湖・淀川産の淡水貝類』(紀平肇、松田征也、内山りゅう 株式会社ピーシーズ)