臺灣風シジミ炒め煮

臺灣(台湾)風炒め煮は八角と中国醤油でできる

シジミの炒め煮

バブル期は食の面でも忙しかった。ただの夕食なのにすしに和洋中華などなど都内各所をめぐっていた。取り分け回数が多かったのかインド料理と当時急激に増え始めていた韓国料理、台湾料理であった。
台湾料理といえば、渋谷は少々遠かったのに『麗鄕』好きがいたために月に何度も行ったものである。最初に4、5品というときには必ずお願いしていたものに「シジミの炒め煮(不正確かも)」がある。
味を覚えて自宅で再現していた。和の食材を使って近づけていたのだが、台湾旅行でバイ(タイワンバイ)やヘナタリなどいくつかの貝料理を食べて、調理法は至って単純なのだと気がついた。要するに渋谷『麗鄕』風から台湾高雄風に変化させたことになるが、いずれにしろボク流の料理でしかない。
先日、八王子綜合卸売協同組合、マル幸でやたらに魚を買った。いつも必ず軟体類(貝やイカ、タコなど)を1つプラスするのだが、今回は島根県産ヤマトシジミにする。頭に浮かんでいたのはこの「シジミ炒め煮」と我が家の冷蔵庫の『珠江橋牌』の「草菰老抽」というあやしい醤油である。
2年ほど前、新大久保の中華食材の店で比較的基本的な香辛料などを買い出しに行った。醤油は「老抽王」という比較的無個性なものを常備しているので買い。なにを思ったものか、いつもは決して手を出さないヘンテコリン系醤油を1本混ぜてしまったのだ。以後、ずーっと冷蔵庫に眠っていたのを1週間ほど前に発掘した、それが「草菰老抽」だ。
帰宅後、薄い塩水を作り、24時間泥抜きをする。これを小分けにしてすぐ使わない分を冷凍保存する。
さて、臺灣(台湾)の小型の貝の、基本的な料理は炒め煮だと思う。非常に単純で、まずはしょうがとにんにく、八角を油で炒めて貝を投入、紹興酒と台湾の醤油(要するに甘い醤油)で味つけするだけだ。
今回も同じ料理法で、醤油は控えめに加えてみた。甘めが好きなら砂糖を加えてもいい。
ちなみに「草菰老抽」はマッシュルームの風味がついているが、どう考えても普通の「老抽王」の方が使いやすい。前回、カミナリイカのげそとセロリを炒める際に使って、なんとか塩分濃度やマシュルームの香り具合がわかってきた。このマッシュルームの風味も決して嫌なものではないと気づいたのもある。
さて鍋に油、にんにく、しょうがを入れて火をつける。
香りが立ってきたら泥抜きしたヤマトシジミ、次ぎに紹興酒を投入する。
全体に油がまわったら醤油を加えて、貝が開いたら出来上がりだ。
炒め煮の煮汁は台湾で買って来た地元の醤油や李錦記のものよりも、濃厚で、確実にマシュルームの香りのする不思議な味になった。このマシュルームのエキスが混ざり込んだ甘辛い液体をまとったヤマトシジミの軟体が結構いける。
島根県産ヤマトシジミが小振りで、少々食らうのが面倒だが、そのちまちま感も悪くない。
クラシックという名の本物ビールでちまちましている内に逢魔が時は過ぎていく。
ちなみに炒め煮で出た汁で食べるご飯は最高! なので捨てないこと。
いつもクラシックでスタンダードなボクだけど、たまには遊びも必要かも。


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