20cm SL 前後になる。非常に大きい。黒く細長い。持つとふくらみを感じる。貝殻は厚みがありややもろい。周縁は刻まれない。内面は滑らかで真珠を思わせる乳白色の部分と虹色に光る部分がある。[老成貝]
イガイの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)
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珍魚度・珍しさ
★★★
がんばって探せば手に入る魚貝の物知り度
★★★★
知っていたら達人級食べ物としての重要度
★★
地域的、嗜好品的なもの味の評価度
★★★★
非常に美味
分類
軟体動物門二枚貝綱翼形亜綱イガイ目イガイ超科イガイ科イガイ亜科イガイ属外国名
学名
Mytilus unguiculatus Valenciennes, 1858漢字・学名由来
漢字 貽貝、以加貝 Standard Japanese name / Igai
由来・語源 『目八譜』より。
音は「異貝」、「否貝(いなかい)」の転訛。アサリなど普通の二枚貝とは形、軟体の模様が違っているという意味合い。
漢字は女性器・胎(子宮、胎児をも現す)に似た貝という意味合い。
「否貝(いなかい)」の転訛。『日本語源大辞典』(小学館)
模式産地/函館
Mytilus coruscus Gould,1850→Mytilus unguiculatus Valenciennes, 1858Valenciennes
アシル・バランシエンヌ(Achille Valencienne 1794-1865)はフランスの動物学者。ジョルジュ・キュビエとともに『魚類の自然誌』を刊行。国内で水揚げされる多くの魚を記載。
目八譜
1843(天保14)、武蔵石寿(武蔵孫左衛門)が編んだ貝の図譜のひとつ。図は服部雪斎が描く。武蔵石寿は貝類を形態的に類別。1064種を掲載する。現在使われている標準和名の多くが本書からのもの。貝類学的に非常に重要。地方名・市場名
生息域
海水生。潮下帯から水深20メートルの岩礁域。ムラサキイガイと比べると生息水深が深い。
北海道から九州。生態
性転換する。
産卵期は7月から9月。
足糸(そくし)を分泌して岩などに付着(ついている)している。基本情報
日本各地で水揚げされる大型の二枚貝である。食用貝としての歴史も非常に古い。これが近年、ヨーロッパからの移入種であるムールガイ(ムラサキイガイ)に押されて陰が薄い。ムールガイが毎日のように市場をにぎわせているのに比べて、イガイの入荷量はごく少ない。そのため関東、関西の市場ではイガイのことも「ムールガイ」と表記されている。
クセのある味わいではあるが、大振りで海辺では得がたいたんぱく源であったと思われる。夏に漁の最盛期、旬を迎えるもので郷土料理も少なくない。
珍しさ度 まずはイガイとムラサキイガイの区別がつくようにならないといけない。ムラサキイガイと比べると流通量が少ないので、売っているところも探す必要がある。水産基本情報
市場での評価 関東ではあまり見かけない。入荷してくるとやや高値となる。
漁法 潜水漁、見突漁
主な産地 北海道、三陸、茨城県、千葉県、瀬戸内海周辺など各地選び方
持ち重りがするもの。殻が硬く閉じているもの。硬く閉じるもの。生きのいいもの。味わい
旬は冬から夏
貝殻はやや硬めながら、薄く簡単に割れる。
表面の汚れと、岩などに付着するための足糸を抜いてから料理する。
足糸などは残る場合が多いので、いちどゆでこぼしてから改めて抜き取る。
炊き込みご飯にするときは剥いて、足糸などを除去する。
身は火を通し過ぎると著しく縮む。
濃厚な旨みがあり、いいだしが出る。栄養
ー危険性など
ー食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)
イガイの料理・レシピ・食べ方/蒸す(ワイン蒸し、酒蒸し)、汁(みそ汁、トマトスープ、ブイヤベース)、炊き込みご飯、煮もの(煮つけ、いり煮)、ソテー(バター焼き、アヒージョ)クリックで閉じます
イガイのワイン蒸 剥き身にして足糸と足糸の根元を取り去る。ていねいに汚れを洗い流し、切り身にして水分をきっておく。鍋に少量のオリーブオイル・白ワイン、にんにく、コショウをいれ、切り身を入れて火をつける。玉ねぎなど野菜を加えてもいい。ここではセロリアックの塩ゆでを加えた。火が通ったら、香辛料(ここではカイエンヌペッパー)、アクセントになる青みやハーブなどを散らす。白ワインの微かな酸味と香り、イガイのクセのある味わいが相まって、白ワインなどに合う。
イガイの酒蒸し 大型は身を適当に切り、小型のものは貝殻のついたまま酒蒸しにするといい。できれば足糸を抜く。貝殻などよく流水で洗い、水切りをしておく。鍋に酒と貝を入れて蒸し煮にする。あまり火を通しすぎると硬くなるが、生は危険なので、このあたりの加減が難しい。クリックで閉じます瀬戸貝の酒蒸し
イガイの蒸し煮 流水で貝殻の汚れなどを流す。鍋に入れて少量の水を加えて蒸し煮にする。塩は無用だと思っている。貝殻から身を外し、足糸を抜いてライムをかける。柑橘類と相性がとてもよく、強い甘味と濃厚なうま味が楽しめる。食べていて飽きが来ない。クリックで閉じますイガイの和えもの イガイはきれいに流水などで洗い、少量の水分で蒸し煮にする。これを酢の物に、きゅうりもみなどに加える。甘味と渋味の豊かな軟体の味が、合わせ酢と一緒になって独特の味わいとなる。クリックで閉じますイガイの和え物
好んで食べる地域・名物料理
雑煮 山口県柳井市。雑煮に入れる。瀬戸貝の煮もの 正月のお節料理には必ず「瀬戸貝」の煮ものを添える。酒、しょうゆ味で比較的あっさりと煮上げたらとてもおいしいものだった。正月のご馳走になる意味がわかる。[山口県大畠町(現柳井市)]クリックで閉じます瀬戸貝の煮もの
いがい飯(瀬戸貝飯) 兵庫県日本海側、鳥取県青谷町夏泊などで「いがい」の炊き込みご飯が作られている。同じように山口県でも同じような炊き込みご飯「瀬戸貝飯」がある。イガイだけで作ってもいいがゴボウやニンジンを一緒に炊き込んだ方がうまい。クリックで閉じます加工品・名産品
淡菜 生のむき身を塩ゆでにして干したもの。中国などに輸出されていた。釣り情報
ー歴史・ことわざ・雑学など
東海婦人 その形、「女陰に似たり」(大和本草)
淡菜 干したものを淡菜という。(出雲風土記)
剥き身の行商 〈(夏)いがいは、むき身を細いかずら(葛)でつないで賀露(現鳥取市)から売りにくる。〉『聞き書 鳥取の食事 「城下町鳥取の食の歳時記」』(農文協)参考文献・協力
協力/山下亮介さん(愛媛県松山市) 山下博由さん(貝類研究者)、長野淳さん(三重県熊野市)
『日本近海産貝類図鑑』(奥谷喬司編著 東海大学出版局)、『日本語源大辞典』(小学館)、「聞き書 鳥取の食事』(農文協)、『新版 水産動物学』(谷田専治 恒星社厚生閣)、『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社)地方名・市場名 ?
ボボガイ トウカイフジン[東海婦人] ヨシワラガイ オマンコガイ オメコガイ ニタリ ソックリガイ ニタリゲェー ニタリガイ ニタガイ ヒナノカイ
カラスグチ カラスゲエ カラスノクチ カラスダ クロカイ クロガイ クロッカイ ケガイ ケカチガイ コスクリガイ サカバリ サンバシガイ シイリ シイレ イウリ シュウリ シュリケ ジジガイ シュリ シルカイ セトガイ[瀬戸貝] センガワー ゼンタイ タチガイ タチガイノコ ツバクラガイ ツボ トンビノクチ トンビノクチバシ ニナガイ ネコノミミガイ ハイガイ ハガイ ハサリガイ ハシバシラ ハシバシラガイ ヒヨリガイ ヒルガイ ホウジョウ マタガイ ミミチョン ミョウジョウ ヤリガイ
参考文献より。