SL 10cmを超える。膨らみが非常に強い。やや角張った放射肋が42本前後あり、貝殻を黒褐色の毛が覆っている。
アカガイの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)




-
珍魚度・珍しさ
★
いつでも手に入る魚貝の物知り度
★★★
知っていたら通人級食べ物としての重要度
★★★
一般的(流通量は普通)味の評価度
★★★★★
究極の美味
分類
軟体動物門二枚貝綱翼形亜綱フネガイ目フネガイ超科フネガイ科リュウキュウサルボウ属(アカガイ属)外国名
学名
Anadara broughtonii (Schrenck, 1867)漢字・学名由来
漢字 赤貝、蚶 Standard Japanese name / Akagai
由来・語源 古名は「蚶(きさ)」。『和名類聚抄』より。血液中の色素に人間と同じヘモグロビンを持っており、身の色合いが赤いため。
蚶 〈和名は木佐(きさ)、俗に赤貝という〉『和漢三才図会』(寺島良安 東洋文庫 平凡社 正徳2年 1712)
アカゝイ 永禄二年(1559)四月十九日今井宗久の茶会に後段の膳にでる。〈ミル アカゝイ 肴二種〉。『日本料理文化史 懐石を中心に』(熊倉功夫 講談社学術文庫 2020)和名類聚抄
和名類聚抄(和名抄とも。承平年間 931-938年)源順(みなもとのしたごう)が編纂した和漢の辞書。
Schrenck
レオポルト・フォン・シュレンク(Leopold von Schrenck 1826-1894年) ドイツ生まれ。ロシアの動物学・地理学。地方名・市場名
生息域
海水生。水深5-50mの砂泥地。
北海道南部から九州。沿海州〜東シナ海。内湾の砂泥地。生態
内湾の浅い泥底などに棲息する。
孵化し幼生期を過ごしたら稚貝になり泥底の海藻などに足糸で付着する。
この足糸は足の一部に成貝になっても残っている。
刺身にするときはこれをとる。
それが大きくなると泥の中にもぐり込む。
血液中に哺乳類と同じヘモグロビンを持っているために赤い。基本情報
アカガイは北海道南部から九州までの浅場に生息している。
内湾に多く、大きな湾を持つ地域では至って普通の食用貝だった。刺身のほか、単にゆでて、また甘辛く煮つけて、日々のおかずになっていたことも。
それが内湾の汚染や開発によって激減。いつの間にか庶民にはとても手が届かないものとなっている。江戸前寿司にはなくてはならない種で、高級な店がこぞって使う。そのためにますます値を上げているともいえそう。
あまりの人気から、今では中国や韓国から大量に輸入。流通の世界では国産よりも輸入物の方が幅を利かせている。
珍魚度 二枚貝中もっとも一般的な食用貝。高いが探さなくても手に入る。水産基本情報
選び方
活けは貝殻をもって重いもの。打ち合わせてみて鈍い音のするもの。
剥いたものは触って反応する(動く)もの。赤身が強いもの。味わい
旬は秋〜春。産卵期の晩春になると味が落ち始める。
貝殻は厚みがあるが軽く割りやすい。軟体は大きく、熱を通しても強く縮まない。
旬の個体は非常に甘味が強い。栄養
タンパク質、脂質は少なく、ビタミン類、
無機質の鉄、カルシウムなどが豊富。危険性など
ー食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)
アカガイの料理法・レシピ・食べ方/生食(刺身、和え物)、煮る(佃煮)、揚げる(フライ)クリックで閉じます
アカガイの刺身 口に入れたときに独特の香りがある。噛むと強くなるが、これはアカガイ特有のもので、非常に好ましい香りである。この香りがあるので、人気があると言ってもいいだろう。足には強い甘味と渋味があり、味わい濃厚である。しかも後味がいい。
剥き身にする。足の部分と貝柱、ひもの部分に分ける。足は開いて内臓を切り取る。これをボウルなどに入れて塩を加え、軽く洗い。塩を洗い流す。水分をきり、切れ目を入れてまな板にたたきつけて身を開かせて盛る。
アカガイヒモの刺身 外套膜縁に当たる部分。市場ではこの部分だけを売っていることがある。外套膜のなかでも厚みがあり独特の食感を楽しめる。足の部分と変わりなく、甘味とうま味、アカガイ特有の渋みがある。足よりもうまいいう人も多い。クリックで閉じますアカガイと菜の花の辛子醤油和え 3月の声を聞くと、春らしい取り合わせで食べたくなる。ここでは出盛りの菜の花と合わせた。醤油とみりんの加減醤油に隠し味程度の辛子を加え、ゆでた菜の花とアカガイを合わせる。苦みとアカガイの甘味の競演である。クリックで閉じますアカガイの足の和え物 関東ではアカガイのぬたは定番料理ともいえそうなもので、酒の肴としても小粋である。基本的にむき身にして足の部分は開いて、さっと軽く洗う。これを寒い時期はねぎ(白ねぎ、わけぎ)、あさつきと、春は山菜などと酢みそで和える。クリックで閉じます好んで食べる地域・名物料理
東京湾周辺、三河湾周辺加工品・名産品
閖上 宮城県名取市閖上港に上がるアカガイのこと。都内では一番高値で取引されている。大玉が揚がることでも有名。釣り情報
ー歴史・ことわざ・雑学など
『和漢三才図会』 老いた伏翼(コウモリ)が化して蚶(アカガイ)となる。それで伏老という。近頃では海に近い田にこれを種(ま)く。これを蚶田という。
『和漢三才図会』 〈肉は大へん甘い。それで字は「甘」につくる。〉
江戸前 なぜに江戸前寿司の代表的なネタとなった理由はその昔、江戸前東京湾でたくさんとれたからだ。昔は千葉県浦安市、千葉市周辺が名産地だった。今でも船橋、木更津などでとれている。でもまあときたま上がると言うだけで、漁の対象ではない。
赤貝缶詰 缶詰の「赤貝」は赤貝ではない。サルボウが原料。
閖上 高級寿司屋で「アカガイは閖上産だけを使う」などと言われる、これは宮城県名取市産。〈ここ数年です。閖上の赤貝が日本一だといわれるようになったのは〉(閖上赤貝組合会長 小斉力男 48歳)。1992年『サライ』4月2日号。
検見川 「検見川(ケミガワ)」とはアカガイのこと。これは千葉県検見川がアカガイの集積地だったため。明治から昭和のはじめまでは千葉県検見川、東京都羽田、神奈川県子安の順でランクが決まっていた。
かます 東京湾のアカガイが健在だった頃はどうであったのか。それを船橋市の貝問屋『源七』の吉種登さんと八王子市横川町『鮨忠』さんに聞いてみる。船橋では昭和30年(1955)くらいまではアカガイをかますに入れて出荷していた。かますは筵(むしろ わらで編んだ敷物。様々な素材にする)を二つ折りにして袋状にしたもの。口だけを片方の縁を伸ばして明けておく。ここにものを入れて縁を折り畳んで梱包材とした。ここに入れられたアカガイは約30キロほど。船橋では、かます毎に選別した貝類を築地へと出荷していたのだ。
価格上昇 昭和30年代以前で船橋産のアカガイの値段が一かますいくらもしなかったという。昭和30年を過ぎるとアカガイはブリキ製の一斗缶に代わる。これ1つが12〜13キロ見当。これ一缶が500円ということもあった。当時の並ずしの値段が一人前150円だから約10分の1として12キロで5000円としても東京湾のアカガイの値段がキロ当たり現在の貨幣価値に換算しても500円しなかったことになる。すなわちアカガイは高度成長期までは安くておいしい江戸前の水産物だったのだ。参考文献・協力
『日本近海産貝類図鑑』(奥谷喬司編著 東海大学出版局)、『日本貝類方言集 民俗・分類・由来』(川名興編 未来社)、『すし技術教科書(江戸前ずし偏)』(旭屋出版)、和漢三才図絵。地方名・市場名 ?