ニセタカサゴ

ニセタカサゴの形態写真一覧 (スワイプで別写真表示)
30cm SL 前後になる。体側に2本、もしくは1本(背鰭に近いところのは不明瞭であることも多い)の褐色の縦縞がある。背鰭下部に鱗がある。側線は中央部分を走る褐色の縦縞に沿ってある。尾鰭先端に黒い斑紋がある。[成魚]
30cm SL 前後になる。体側に2本、もしくは1本(背鰭に近いところのは不明瞭であることも多い)の褐色の縦縞がある。背鰭下部に鱗がある。側線は中央部分を走る褐色の縦縞に沿ってある。尾鰭先端に黒い斑紋がある。[若魚]
30cm SL 前後になる。体側に2本、もしくは1本(背鰭に近いところのは不明瞭であることも多い)の褐色の縦縞がある。背鰭下部に鱗がある。側線は中央部分を走る褐色の縦縞に沿ってある。尾鰭先端に黒い斑紋がある。[15.5cm SL ・重さ61g]
30cm SL 前後になる。体側に2本、もしくは1本(背鰭に近いところのは不明瞭であることも多い)の褐色の縦縞がある。背鰭下部に鱗がある。側線は中央部分を走る褐色の縦縞に沿ってある。尾鰭先端に黒い斑紋がある。[15cm SL ・重さ49g]
体側に2本、もしくは1本(背鰭に近いところのは不明瞭であることも多い)の褐色の縦縞がある。
前上顎骨の後方突起は2個。

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珍魚度・珍しさ★★★
がんばって探せば手に入る
魚貝の物知り度 ★★★★★
知っていたら学者級
食べ物としての重要度 ★★
地域的、嗜好品的なもの
味の評価度 ★★★
美味
分類
顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目スズキ亜目タカサゴ科クマササハナムロ属
外国名
Goldeb-banded fusilier
学名
Pterocaesio marri Schultz,1953
漢字・学名由来

漢字 偽高砂 Standard Japanese name / Nisetakasago
由来・語源 タカサゴに似て別種の意味になる。タカサゴは神奈川県江ノ島での呼び名。華やかな姿から南海のことを思ったのかも。
ただし、古くニセタカサゴという標準和名はなく【ニセンタカサゴ(2線タカサゴ)】であったことがある。まさかと思うが現標準和名のニセタカサゴは【ニセンタカサゴ】の校正ミスである可能性が高い。しかもこの【ニセンタカサゴ】は現タカサゴ(沖縄でグルクンと呼ばれている)に対してつけられた標準和名である可能性が高い。

タカサゴ/Pterocaesio digramma (Bleeker 1864) ニセタカサゴ/Pterocaesio marri Schultz 1953の混乱
タカサゴの意味 タカサゴは相模湾の呼び名だとされているので、高砂国すなわち臺灣を指す言葉ではない。“たか”は漁村用語で岩礁のこと、“さご”は「細魚」、「小魚」のこと。「岩礁帯にすむ小魚」の意味という説もある。『新釈魚名考』(榮川省造 青銅企画出版)
現タカサゴは相模湾にはいなかった。もしくは少なかったのではないか 標準和名タカサゴの「たかさご」という言語は東京、小田原での呼び名と田中茂穂はしているが、現タカサゴは相模湾に当時いたとは思えない。いたとしても少なかったのではないか。田中茂穂のタカサゴの図はニセタカサゴだ
1935年のタカサゴの図は明らかに現ニセタカサゴ 1935年のタカサゴ(Caesio chrysozonus CUVIER.)の図は現ニセタカサゴである。〈タカサゴ Caesio chrysozonus CUVIER. ……八丈島及び小笠原島付近以南・琉球・フィリピン・東印度諸島及び印度洋に廣く分布する。熱帯魚で東京市場へは夏季八丈方面から大量に入荷する。稍、美味。惣菜用の外種として蒲鉾原料とする〉『日本魚類圖説』(岡田彌一郎、内田惠太郎、松原喜代松 三省堂 初版1935)
ニセタカサゴがニセンタカサゴ(2線タカサゴ)の校正ミス この場合の線は黄色い縦筋のことであるが、現ニセタカサゴは背鰭下の1本が不明瞭で、1本だけに見える。むしろ現タカサゴの方が明瞭に2本であるので、1938年のニセンタカサゴは現在沖縄などに多いタカサゴを差す可能性が非常に高い。実際、『日本魚類圖説』(岡田彌一郎、内田惠太郎、松原喜代松 三省堂 初版1935)のタカサゴの図は明らかに本種であり、本来のタカサゴは本種であった可能性が高い。
現ニセタカサゴこそタカサゴという標準和名がつけられるべきだった 相模湾に今現在普通に見られるのはニセタカサゴの若い個体である。タカサゴという標準和名は、間違いなく今現在相模湾に普通に見られる現ニセタカサゴ/Pterocaesio marri Schultz 1953 に対してつけた和名である。たぶん田中茂穂以前の魚類学者が相模湾にいるタカサゴ類を今現在、沖縄県以南に見られるミナミタカサゴと誤同定して以来の混乱である。
この混乱がタカサゴ科の分類に影響を与え続けていると考えている。
1938年時はニセタカサゴに関しては正しい種小名 〈タカサゴ屬 タカサゴ(Caesio chrysozonus Cuvier et Valenciennes/種小名は現ミナミタカサゴ)・ニセンタカサゴ(Caesio diagramma Bleeker, 1864/現タカサゴの学名)〉『日本産魚類検索』(岡田彌一郎、松原喜代松 三省堂 初版1938)
1955年にニセタカサゴ登場 〈タカサゴ科タカサゴ属 タカサゴ Caesio chrysozonus Cuvier et Valenciennes(種小名は現ミナミタカサゴ) ニセタカサゴ(Caesio diagramma BKEEKER)〉『魚類の形態と検索』(松原喜代松 岩崎書店 1955)
この時点の標準和名ニセタカサゴが現タカサゴの学名の種小名と一致する。沖縄県に多い、現タカサゴがニセタカサゴと考えられていた可能性が高い。この時点でニセンタカサゴがニセタカサゴになるが、誤植、校正ミスである可能性が高い。
標準和名タカサゴなのにタカサゴ属からクマササハナムロ属への変更
また古く タカサゴをCaesio chrysozonus Cuvier et Valenciennes としてしまったために、 「Caesio Lacepède, 1801」がタカサゴ属になる。のちにタカサゴ、ニセタカサゴなどは「Pterocaesio Bleeker, 1875(クマササハナムロ属)」であることがわかる。それ以後、タカサゴ、ニセタカサゴはタカサゴ属ではなくクマササハナムロ属となる。

地方名・市場名

概要

生息域

海水魚。浅い岩礁域・サンゴ礁域。
八丈島、小笠原諸、房総半島南岸沖、相模湾全域[神奈川県二宮沖・熱海市網代など]〜九州南岸、[島根県益田市]、長崎県、鹿児島県南さつま市笠沙、屋久島の太平洋沿岸、宮崎県南郷、琉球列島。
台湾南部、インド-西太平洋、サモア諸島、マルケサス諸島。

生態

基本情報

本種は相模湾以南、九州などに多く、タカサゴより北に生息域をもつ。一部生息域はタカサゴと重なる部分もあるが琉球列島でも沖縄県海域には少ないようである。
関東では知名度の高いグルクン(タカサゴ)と混同して扱われている。当然、流通上もグルクンである。ただ、沖縄県のグルクンは本種ではなく、現、タカサゴ/Pterocaesio digramma (Bleeker, 1864) であることから混乱が起きている。
相模湾でも珍しくはなく若い個体などは普通に水揚げされている。この未成魚は相模湾だけではなく紀伊半島でも未利用魚である。また長崎県、紀伊半島などでは成魚が多く、たまに食用として流通してくる。
東京都でも魚河岸が日本橋にあったとき八丈島からまとまっての入荷があり、惣菜魚として人気があったとされている。
利用法としては沖縄のグルクンであるタカサゴと同じであるが、本州などではタカサゴと比べて鮮度がよいことなどから、生食にもなるなど利用法はもっと多様である。
珍魚度 珍しい魚ではない。九州南部や四国、紀伊半島などでは若魚がたっぷり揚がる。長崎県産などは流通するので探せば手に入る。

水産基本情報

市場での評価 入荷量は多くはない。やや高い。
漁法 定置網
産地 長崎県、鹿児島県
ニセタカサゴ 体側背の部分、胸鰭の上にある黄色い縦帯と側線は重なる。
タカサゴ 体側背の部分の胸鰭の真上、2本目の黄色い縦帯と側線は重ならない。黄色い帯は側線の下を走る。

選び方・食べ方・その他

選び方

触って張りのあるもの。赤やコバルトイエローの鮮やかなもの。

味わい

旬は夏。鮮度落ちが早い魚だと思っている。
鱗は細かくやや硬いが取りやすい。皮は厚みがあって強い。骨はあまり硬くない。
白身で血合いの色は濃い。繊維質に欠けるので少しぼろっとした食感になる。

栄養

危険性など

食べ方・料理法・作り方

ニセタカサゴの料理・レシピ・食べ方/生食(焼き切り)、揚げる(唐揚げ)、ソテー(バター焼き)、焼く(塩焼き)、煮る(煮つけ)
ニセタカサゴの焼き切り(焼霜造り) 秋に相模湾で見つけた20cm前後の若魚は触った限りでも身に張りがあり、脂ののりを感じた。本種の場合大型だから脂がのるとは限らないようだ。三枚に下ろして腹骨、血合い骨を取り、皮目をあぶる。これを食べやすい大きさに切る。皮目の焼いた香り、皮下の脂、身の甘さなどが相まって非常に美味。

ニセタカサゴの唐揚げ タカサゴ科の定番料理である。ここでは背開きにして片栗粉をまぶして二度揚げにしてみた。骨があまり硬くないので丸ごと食べられて、香ばしい。身は適度に繊維質で甘味がある。
ニセタカサゴのバター焼き 皮は意外にしっかり厚みがあるので、小麦粉をまぶさないでソテーしてみた。水洗いして、塩コショウして多めの油でソテーする。仕上がりにマーガリン(バター)で風味づけする。油分で熱を通すことで硬く締まりすぎず、皮目が香ばしい。なかなかの味わいである。


ニセタカサゴの開き干し 秋にまとまって揚がる若魚を開き干しにしたもの。この相模湾の若い個体は成魚よりも身質がよく感じるが、鮮度の問題かも知れない。
水洗いして開く。水分をよくきり、塩水に15分ほどつけてふたたび水分をよくきる。これを10時間ほど扇風機で風を送り干し上げた。
身が締まっていて身自体に味がある。皮目の香ばしさと味わい深さ、非常に美味である。

ニセタカサゴの塩焼き 大型になっても脂が均質に回ることがなく、小型は一段と脂分に欠ける。当然焼くと硬く締まりがちになる。ただし淡泊でクセのない味わいで皮目には独特の風味があるとも言えそう。
ニセタカサゴの煮つけ 淡泊な味わいで熱を通すと硬く締まりがちなので、液体、油分を使った料理に向いている。水洗いして鍋にあった大きさに切り、湯通しする。これを酒・しょうゆであっさりと煮る。みりん、砂糖で甘味をつけてもいい。イヤミのない味わい。ご飯にも合う。

好んで食べる地域・名物料理

加工品・名産品

釣り情報

歴史・ことわざなど

地方名・市場名

アカムロ
備考ハナムロとしての記述から。 参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 場所三重県二木島、和歌山県田辺・周参見・見老津・和深・串本 
シマゴツテ
参考文献 場所三重県鳥羽 
ヒメシマムロ
備考ハナムロとしての記述から。 参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 場所和歌山県和深 
チャムロ
備考ハナムロとしての記述から。 参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 場所和歌山県木ノ本 
ハナムロ
備考ハナムロとしての記述から。 参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 場所和歌山県田辺 
アカメンタイ メンタイ
備考ハナムロとしての記述から。 参考文献 場所和歌山県白崎・串本・太地 
ユミズ
備考ハナムロとしての記述から。 参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 場所有明海 
タカサゴ
参考文献 場所東京、小田原 
カブクヮーグルクン
場所沖縄本島 
カブクヮヤーグルクン
場所沖縄県八重山 
カブクヮヤー
場所沖縄県南城市知念漁協 
ムゾーリ
参考『美ら海市場図鑑 知念市場の魚たち』(三浦信男 ぬにふぁ星 2012) 場所沖縄県南城市知念知念漁協 
ヘラーグルクン
場所沖縄県宮古島 
タナムロ
参考文献 場所長崎県 
アカヘエジ
参考文献 場所高知県佐喜ノ浜 
イソムロ
参考聞取 場所高知県宿毛市田ノ浦すくも湾漁協