80cm SL前後になる。身体はやや細長く左右に側へんする。全体に金属を思わせる黒紫色。腹鰭は退化的で1棘。口が大きく丈夫で非常に歯が針状で鋭い。[39cm・415g]
クロシビカマスの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)
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珍魚度・珍しさ
★★
少し努力すれば手に入る魚貝の物知り度
★★★★
知っていたら達人級食べ物としての重要度
★★
地域的、嗜好品的なもの味の評価度
★★★★
非常に美味
分類
顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目サバ亜目クロタチカマス科クロシビカマス属外国名
学名
Promethichthys prometheus (Cuvier, 1831)漢字・学名由来
漢字 黒鮪魣 Standard Japanese name / Kuroshibikamasu
由来・語源 マグロのように体色が黒く、魣(カマス)のように口に鋭い歯を持っている魚という意味。
クロシビカマスという不思議な名前をつけたのはだれか?
『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929)にはクロシビカマス(黒鮪魣)。
田中茂穂の標準和名は古くは神奈川県小田原などでの呼び名、スミヤキだ。『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年)
『日本産魚類検索』(岡田彌一郎、松原喜代松 三省堂 初版1936、第二版1943)ではクロシビカマスとなっている。
クロシビカマスはあまりにも唐突な標準和名で、魚類学的な命名法としても理解できない部分がある。ついでに言えばクロタチカマスも同じ。田中茂穂は本種はタチウオに似ているし、カマスにも似ているなどと書いている。Cuvier
バロン・ジョルジュ・レオポルド・クレティアン・フレデリック・ダゴベール・キュヴィエ(Baron Georges Léopold Chrétien Frédéric Dagobert Cuvier 1769-1832)。フランスの分類学者。キュビエとされることが多い。スエーデンのリンネ、フランスのビュフォンの分類体系に解剖学や古生物学などを加味して現在の形の礎を作った巨人のひとり。地方名・市場名
生息域
海水魚。大陸棚外縁〜斜面域、海洋島周辺、海膨の低層。水深100-750m。
福島県南部沖、相模湾〜九州南岸の大平洋沖、山陰・隠岐、長崎県、東シナ海、天皇海山。
インド-太平洋・大西洋の暖海域。生態
産卵期は春から夏。
昼は水深500メートル前後の深海に、夜は水深150メートル付近に浮上する。
磯釣りなどをしていて釣れることもある。基本情報
世界中の暖海域の深場に生息する。
日本各地で水揚げがあるのの好んで食用とする地域はさほど多くない。脂が強く、皮の方から長く硬い骨が身に伸びていて、食べにくいことから、食べる地域と食べない地域がくっきり分かれる。当然、流通にはあまりのらない。
神奈川県相模湾沿いの地域、特に小田原ではスーパーなどにも並ぶ、人気の食用魚。この地域が最もよく食べているのではないか、と思っている。
関東の消費地ではスーパーに並ぶことはほぼなく、魚屋さんでも特殊なものとなっている。
珍魚度 珍しい魚ではなく、流通することもある。ただし地域性があり、消費地に出回ることがないので手に入れるには努力を要す。水産基本情報
市場での評価 各地で食用とされている。神奈川県相模湾周辺では珍重する。値段も高い。流通の場、市場では馴染みがないために安い。ときに非常に安い。
漁法 釣り、底曳き網、巻き網、定置網
産地(漁獲量の多い順) 長崎県、神奈川県、和歌山県選び方
黒いもの。触って硬いもの。味わい
栄養
ー危険性など
ー食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)
クロシビカマスの料理・レシピ・食べ方/生食(なめろう、たたき)、煮る(煮つけ、まーす煮)、汁(潮汁、みそ汁)、揚げる(揚げボール、唐揚げ)、焼く(塩焼き、干もの)クリックで閉じますスミヤキのなめろう
クロシビカマスのなめろう 水洗いして身をかきだして、みそ、ねぎなどの香辛野菜(みょうが、青じそ、玉ねぎ)を合わせてよく切れる包丁でとんとんとたたく。少し粘りけを持つくらい叩いても、あらくたたいてもおいしい。意外にご飯にも合うし、ソテーして食べてもいい。
クロシビカマスのたたき 神奈川県小田原市などが発祥の「たたき」は、身を細かく切り落として香辛野菜(ねぎ、みょうが、青じそなど)と和えただけのもの。クロシビカマスの脂が強くうま味の豊かなところに爽やかな香辛野菜が加わって見事な一品になる。クリックで閉じますスミヤキのたたき
クロシビカマスの煮つけ 水洗いして、肝や胃袋は取り分けておく。湯通しをして冷水に落として表面の滑りを取る。体表に細かく包丁を入れて骨切りをしてもいいが、味は落ちる。水分をよく切り、酒、砂糖、しょうゆ、水の地で煮る。酒、みりん、しょうゆ、水でもいい。こってりと煮るとご飯に合う。酒、塩などであっさり煮てもうまい。皮目から伸びる骨は長いので、意外に気にならない。クリックで閉じます
クロシビカマスの肝いり 水洗いして三枚に下ろし、スプーンなどで身をかきだす。細かく包丁などでたたき、肝とあわせてたたく。これにみそ、酒、みりんを加えて鍋でから煎りする。肝が味わいにこくを与えて実に美味。酒の肴にいい。クリックで閉じますクロシビカマスの肝いり
クロシビカマスの落とし(ちり) 水洗いして皮の方から骨切りをする。これを三枚に下ろす。これを塩味のゆに落として氷水にとる。水分をよく切り、梅肉酢で食べる。クロシビカマスの味はやや重いので、夏などにはこんな涼やかな味もよしだと思う。クリックで閉じますクロシビカマスの落とし
クロシビカマスの塩煮(まーす煮) 鋭い歯に気をつけて、水洗い。鍋に入る大きさに切り、肝、胃袋などと一緒に湯にくぐらせる。冷水に落として滑りや血液を洗い流す。これを少量の塩水で短時間煮上げる。身をせせり取り、煮汁にからめながら食べるととても味わい深い。柑橘類と好相性だ。クリックで閉じますクロシビカマスのだんご汁 三枚に下ろして身をスプーンなどでかき出してたたく。ここに片栗粉、酒、塩などを加えだんごに。これを昆布だしに落としていくとうまいだしが出る。後は酒、塩で味つけして青みなどを加えるといい。みそ仕立てにしてもおいしいし、ご飯にも合う。クリックで閉じますクロシビカマスの洋風揚げボール 三枚に下ろして腹骨を取る。身をかき出して、細かくたたく。腹骨と皮と骨は別に細かくたたく。乾燥パセリ(バジリコなど香りのあるもの)、塩コショウ、白ワイン少量、小麦粉少量を合わせてかき混ぜる。これを揚げる。身は粗めにたたくといい。表面はかりっと香ばしく、身は軟らかく仕上がる。クリックで閉じますスミヤキの洋風揚げボール
クロシビカマスの干もの 単に塩焼きにしてもとてもうまいが、小振りのもの、脂の少ないものは干ものにすると美味。開いて立て塩に漬け込んで干し上げる。干し加減は好みで。皮目にある骨が意外に気にならず、いい味である。クリックで閉じますスミヤキの干もの
クロシビカマスのリエット 三枚に下ろして身をかき出す。バターでベルエシャロットと炒めて練り上げていく。仕上げに生クリーム(牛乳でもいい)を足しながら滑らかにする。少し冷めたら香りづけにディルかパセリを混ぜ込む。パンにのせてもいいし、そのまま食べてもいい。クリックで閉じますクロシビカマスのリエット
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ロシビカマスの塩焼きはうまい! 煮つけもうまいけど、塩焼きも同じくらいうまいので、切り身を手に入れたときなどどっちにすべきか、とても迷う。 そして塩焼きは、切・・・ 続きを開く好んで食べる地域・名物料理
加工品・名産品
釣り情報
胴つき仕掛け、イカ短冊や、カツオの腹身、サバの切り身などで狙う、底物釣りの代表的な外道。仕掛けを噛み切るので嫌われている。また夜釣りの磯、防波堤(波止)からの遠投浮子コマセ釣りなどにもくることがある。歴史・ことわざ・雑学など
ー参考文献・協力
協力/岩崎薫さん、鈴木敏夫さん、田中水産(鹿児島県鹿児島市)、二宮定置(神奈川県二宮町)
『東シナ海・黄海の魚類誌 水産総合研究センター叢書』(山田梅芳、時村宗春、堀川博史、中坊徹次著 東海大学出版会)、『日本産魚類検索 全種の同定 第二版』(中坊徹次編 東海大学出版会)、『相模湾・海の不思議』(木幡孜 夢工房)、『魚と貝の事典』(望月賢二 柏書房)、『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年)