マイナー魚の基礎知識  2地域性の高いマイナー魚

ソウシカエルアンコウ属(Fowlerichthys)について

Species Fowlerichthys avalonis (Jordan & Starks, 1907)
Species Fowlerichthys ocellatus (Bloch & Schneider, 1801)
Species Fowlerichthys radiosus (Garman, 1896)
Species Fowlerichthys scriptissimus (Jordan, 1902)/ソウシカエルアンコウ
Species Fowlerichthys senegalensis (Cadenat, 1959)



マイナー魚は区分して考えないと何が何だかわからない。わけもわからずマイナー魚という言葉が一人歩きしている。これだけは絶対に避けなければならない。
一定の地域だけで食べられていて、狭い地域、限定された地域で流通し、値がつくという魚がいる。これが意外に多いのだが、これを「高地域性マイナー魚」としたい。
高地域性マイナー魚には珍しい魚はいない。むしろ平凡な魚だが、一定の地域だけで食べられていて、少し離れたところでは名前すら知られていない。
例えば、サッパ、ヒラ、テンジクダイ、ヒイラギ、タカベ、スズメダイ、アブラボウズ、クロシビカマス、ババガレイなどがその典型である。
また、「高地域性マイナー魚」とまではいかないが、似たような性質を持つものに、メダイ、コノシロなどがある。

いくつか例を挙げていくが、これらの魚は情報の時代となっても「高地域性マイナー魚」のままである。水産の世界がいかに古い体質を残して、変化を好まないかといういい例だと思っている。
「高地域性マイナー魚」は地域を外れると確実に低価格という意味の未利用魚になってしまう。情報というものがいかに重要かがわかるはず。
写真は福岡市福岡市中央卸売市場鮮魚市場に並ぶ「あぶってかも(スズメダイ)」。
●マイナー魚の基礎知識  1 魚はすべてマイナー https://www.zukan-bouz.com/article/1865

サッパ ニシン目ニシン科


北海道から九州までの浅い内湾に生息している。手の平に乗るほどの小魚で銀色で平たい。
標準和名、サッパは非常に知名度が低いが、岡山県の「飯借(ままかり)」は有名である。
この魚は瀬戸内海などに広く生息域をもつのに、食用としているのは、岡山県、広島県の一部、香川県と極めて狭い地域だけである。
岡山県などは内湾域の小型定置が多く、サッパやヒラ、コノシロ、ベイカ(小型のイカ)などがとれ、この小魚類をていねいに食べている。非常に小さい割りに鱗が強く、食べにくい魚である。
当然、本種はこの地域以外で揚がっても、やっかいなだけの魚でしかない。
1尾、1尾ていねいにさばいて酢漬けや焼き漬けにすると、意外においしいものだが、利用する地域は一向に広がらない。

ヒラ ニシン目ヒラ科


太平洋側では北海道南部、日本海側では新潟県以南に生息している。南半球に生息域が広がるコスモポリタンな魚である。初めて見た人はその大きさに驚くだろう尾鰭まで含めると80cm以上になる。見た目はニシンそっくりである。
産卵期には内湾に回遊してくるが、普段はやや外洋域にいる。瀬戸内海周辺で産卵するものは春から初夏にかけて瀬戸内海の中央部分にやってくる。この産卵場所にあたるのが岡山県であり、広島県である。また九州では有明海で産卵する。
岡山県では成魚が好まれる。有明海では小型が喜ばれるのではないかと思っている。
面白いことに瀬戸内海では岡山県以外ではめったに食べることはない。徳島県で「岡山(おかやま)」というのはとれると岡山県に送られるからだ。
味はニシンに似てうま味が非常に強い。ただ体中小骨だらけなのだ。これを岡山県では皮の方から骨切りして焼き物や煮つけにする。薄く切って刺身にする。
これが非常においしい。

テンジクダイ スズキ目テンジクダイ科


千葉県・新潟県以南の内湾に多い。体長10cmほどの小魚で左右に平たく黒い横縞がある。
全国的にみると非常にマイナーな魚だ。ただし、この魚を利用してそれなりの価格で取引している地域はそんなに狭くない。
「高地域性マイナー魚」の中では食用としている地域は広い方である。広い地域で愛されている魚であるのは地方名が非常に多いことからもわかる。
この魚をやや高額で取引しているのは瀬戸内海周辺と有明海周辺である。非常に小さな魚なので選別に時間がかかる。やっかいな存在であるのにていねいに扱って競りにかける。この地域の魚屋、スーパーなどでも普通に見られる。
一般的な料理法は唐揚げである。古くは煮つけにもされていたということだが、唐揚げにするとびっくりするほどおいしい。
料理方が少なく、漁業的にも手間がかかるのに、未だに瀬戸内海では重要な魚でありつづけている。
水揚げ量の多い地域と少ない地域が歴然と分かれている、のもこの魚の特徴だ。瀬戸内海で重要な魚であり続けるのは水揚げ量が多いからだ。例えば相模湾や、駿河湾、四国高知県、九州でも南部などではむしろ珍しいくらいである。
それにしてもテンジクダイの唐揚げはおいしい。瀬戸内海地方の町に行くと、真っ先に探すのは本種の唐揚げである。

ヒイラギ スズキ目ヒイラギ科


青森県以南の汽水域や内湾に生息している。相模湾でも駿河湾でも希にまとまって揚がるとちゃんと食用となっているが、
本種は明らかに雑魚のたぐいと思われている。標準和名のヒイラギの知名度は非常に低く、地方名が多いのは、おいしさが漁師さんの間などでは間違いなく知られていたという証拠なのかも知れない。
本種を対象とする漁があり、高値で取引しているのは島根県と鳥取県にまたがる汽水域の中海地方である。この地域ではエノキの葉に似た姿をしているので、「えのは」という。
強いぬめりがあり、強い棘があるが、トゲをキッチンバサミで切り、ぬめりを塩をまぶしてとるだけである。
味は抜群にいい。基本的に煮つけ、塩焼きだが、実は刺身もおいしい。

タカベ スズキ目タカベ科


茨城県以南、日本海西部の岩場周辺に生息している。取り分け、相模湾と伊豆諸島周辺に多く水揚げも決して少なくない。
この魚、東京を中心とした関東だけの高級魚である。
不漁が続いており、豊洲市場など都内の市場などでは「きんき(キチジ)」、「のどぐろ(アカムツ)」、シマアジ以上の値をつける。特に伊豆諸島産の大形はとても手が出ないほど高額となっている。
ところが関東以外の紀伊半島や四国などで水揚げを見ていると、まとまってとれないこともあり、ほぼ廃棄(飼料などになる)されているのである。近年、徳島県で水揚げをみていたら「これ東京では食べるんだってね」と、ボクに手渡しでくれた。
夏が近づくと東京では、タカベ、タカベと騒がしくなる。多少高くても本種の塩焼きを出す料理店を探し、売っている店を探すのが東京の風物詩でもある。
食べ方は塩焼き一辺倒で、塩焼き以外にはならない。たぶん塩焼きの魚ではもっとも高価だろう。それが西日本に行くと生息域にもかかわらず、ほぼただとは驚くしかない。
食べない地域で少しだけしかとれなくても状態がよければ出荷してはいかがだろう。

スズメダイ スズキ目スズメダイ科


本州以南の浅い岩礁域に生息している。相模湾で見ている限り、実にありふれた小魚でしかない。
この魚をわざわざ狙って漁獲し、競りにかけて流通させているのは福岡県だけである。5月中旬くらいから入荷が始まるが、ときにびっくりするような値段がつく。
現在では鮮魚で流通していて刺身にもするが、本来は塩漬けにして主に山間部に運ばれていた。脂がとても強く焼くと、「鴨のような味がする」ことから「あぶってかも」という呼び名が生まれた。取り分け「あぶってかも」の子持ちは非常に高価であるし、非常にうまい。
ちなみに福岡県には周辺の県から集まってくる。だからといって九州中にスズメダイの食文化が広まってはいない。しかもこの福岡県と九州全域からくるスズメダイが特に味がいいわけではない。相模湾で揚がったものでも、四国で揚がったものも5月くらいから7月いっぱいまでは脂がのっていておいしい。
とれたら流通までとは言わないが廃棄しないで欲しいものだ。

クロシビカマス スズキ目クロタチカマス科


神奈川県・山陰以南の100m以深に生息している。夜は浅場にくるが昼は確実に深海魚である。
食用として水揚げされ、競りにかけられて流通するのは神奈川県相模湾周辺と沖縄県の南大東島だけだろう。ともに釣り漁が行われ、人気が高い。
神奈川県相模湾周辺では全身真っ黒なので「炭焼き(すみやき)」、南大東島では歯が鋭く釣り糸(縄)をいともたやすく切るので「縄切り(なわきり)」という。
面白いのは神奈川県でも相模湾周辺では食べられているのに、北部ではそれほど人気があるとは思えないことだ。
真っ黒で、鋭くて長い歯を持っていて、うっかり触っただけでケガをする。しかも皮に近いあたりに太くて硬い骨がある。
知らない人が料理しようとしたら途方にくれるはずである。
皮の方から包丁を入れて、骨切りをしないと食べにくいのである。ただちゃんと仕込みさえすれば、きれいな白身で上質の脂がたっぷりのっていながら後味がいい。
相模湾周辺の人たちが本種に夢中になるのは当たり前である。
誰だって、一度食べたら病みつきになること間違いなし。お試しを

アブラボウズ スズキ目ギンダラ科


日本海でも見つかっているが、熊野灘以北の太平洋側に生息している。体長2m前後になる黒褐色の大型魚である。
北の海域に多い魚であり、アラスカ湾や北海道などでは比較的浅場にもいるが、相模湾などでは明らかに深海魚である。
本種を好んで食べるのが神奈川県、特に小田原である。静岡県沼津でも食べられているが、小田原と比べると熱狂する度合いが低い。
近縁種にギンダラがいる。ギンダラは全国的な高級魚であるのに、本種は未だに地域限定のマイナーな魚である。
非常に脂が多いので「脂坊主」といい、煮つけにしても塩焼きにしても最上級の味である。刺身は脂が強いのでそんなに食べられない。白身の大トロと言うとわかりやすいかも。小田原では年末年始に食べる年取の魚でもある。
このおいしさが近年、知られ始めている。小田原以外でも高値となっている。

ババガレイ カレイ目カレイ科


北海道から愛知県までの太平洋、日本海に生息する。希に体長80cmくらいになる大形のカレイである。
日本海よりも太平洋沿岸に多く、特に北海道から茨城県でまとまった水揚げがある。
寒い時季から春まで東京などでは好んで食べられている。これは東北太平洋側の産地が近かったからだ。東京では「なめた」というが、カレイ類の中では高級なものという認識がある。
また東北太平洋側では年越しに食べる魚として重要である。暮れにババガレイがないと年を越せない、ということで年末になると非常に高くなる。
山形では「なっと(納豆)」、山陰などでは「いんどがれい」などといい、立派なのがとれても地元での評価が低い。
ちなみに本種の煮つけは非常においしい。三陸などで正月に煮つけを食べるのは、それほどのご馳走であるということだ。


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