体長1.8m前後になる。頭部は小さく細長い。体の断面は円形に近い。背鰭は2。
アブラボウズの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)


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魚貝の物知り度
★★★★
知っていたら達人級食べ物としての重要度
★★
地域的、嗜好品的なもの味の評価度
★★★★
非常に美味
分類
顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目カジカ亜目ギンダラ科アブラボウズ属外国名
学名
Erilepis zonifer (Lockington, 1880)漢字・学名由来
漢字 油坊主 Aburabouzu
由来 神奈川県三崎での呼び名。身に非常にたくさんの脂(油)を含んでいるため。
戦前までは〈アブラバウズ科アブラバウズ属アブラバウズ(田中茂穂はアブラボオズ)〉だった。なぜギンダラ科になったのかというと、属学名が、Anoplopomatidae 、すなわちギンダラ属 Anoplopoma fimbria (ギンダラ)からつけられているため。地方名・市場名 ?
生息域
海水魚。水深680m前後の岩礁域。
北海道〜熊野灘の太平洋沿岸、津軽海峡、[富山湾魚津 2008-2018 年に富山湾で新たに記録した魚類 木村知晴・西馬和沙・不破光大・稲村 修(魚津水族館)]、兵庫県香住・日本海には希。
オホーツク海東部、カムチャツカ半島東岸、アリューシャン列島、アラスカ湾〜モントレー湾、天皇海山。生態
ー基本情報
紀伊半島沖から北太平洋、アラスカ、カナダまでと広い生息域をもつ。古くから脂の多い魚として知られていたもの。現在の国内海域での水揚げ量は少ないが、北洋漁業が始まるとある程度まとまった量が市場に出回った。古くは同科のギンダラよりも知名度は高かった時代もある。
食用不可の魚だった時代があったが、まったくの濡れ衣、脂が強い魚ではあるが、脂自体が有毒ではなく、よほど食べ過ぎない限りは大丈夫なのだ。古くは非常に安い魚だったが、徐々に脂嗜好がすすむに従い値を上げてきている。
また肝臓は食用不可である。非常においしい魚だが、脂に弱い人はあまり食べすぎてはいけないということだ。水産基本情報
市場での評価 入荷は少ない。近年、味のよさが知られて価格は上昇傾向にある。ときに非常に高い。
漁法 釣り
主な産地/千葉県、北海道、福島県、神奈川県
アメリカ選び方
ー味わい
旬/秋から春
鱗は薄く取りにくい。骨は軟らかく包丁が入りやすく、分解しやすい。
白身で柔らかくクセがない。脂が全体に混在して白濁する。とくに肝臓、頭部、腹部はしつこく感じるほど。
アブラボウズの脂は不飽和オレイン酸の一種グリセリド。良質の植物油に近い。グリセリドに弱い体質であるか、もしくは特に大量に食べない限り問題はない。
よくアブラソコムツやバラムツなどワックスを含む魚と混同されるが、アブラボウズは食べ過ぎない限り、食用として問題はない。
料理の方向性体全体に脂が多量に混在する。頭部、内臓などはときに煮ると脂が浮き上がってくるほどだ。大形魚は原則的に三枚に下ろした左右の身のみ食べるべきかも。身は脂が多いせいもあって軟らかく、やや煮崩れしやすい。焼いても締まらない。栄養
ー危険性など
ー食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)
アブラボウズの料理・レシピ・食べ方/ソテー(ステーキ、ムニエル)、煮る(煮つけ)、焼く(塩焼き、みそ漬け、祐庵焼き)、生食(刺身、ぬた)、揚げる(フライ)クリックで閉じます
アブラボウズのステーキ(背) 切身に塩コショウする。ナツメグなども合う。ブロックにすると魚と言うよりも肉という感じがする。これを中火で全面焼き目をつける。ソテーすると表面が香ばしく、コーティングしたようになり、中はどろっと柔らかい。実にジューシーで筋が溶けてミルフィーユ状になる。うっとりするほどうまい。
アブラボウズのステーキ(原) 背と腹では脂の量、食感が違う。腹部は脂が多く。ソテーすると大量の脂を吹きだし、脂で身を揚げながらソテーする感じになる。腹身を適当に切る。塩コショウしてソテーする。強火で身から出る脂をかけながら仕上げる。身を皿に取り、脂を捨ててみりん・醤油・にんにくでデグラッセ。柑橘類を絞り込んでソースにする。クリックで閉じますアブラボウズのムニエル 塩コショウして、小麦粉を合わせてサラダ油もしくはオリーブオイルでソテーしたもの。バターを使うとより濃厚な味になるが、好き嫌いが出そう。ソースは身を取り出したフライパンにシェリー酒を入れて、塩コショウで味つけ、最後にレモンを搾り入れたもの。クリックで閉じますアブラボウズのフライ アブラボウズの切り身に塩コショウ、パン粉をつけて揚げたもの。上品な味わいだが、脂の重さは後から来る。今回は腹身を使った。切り身にして塩コショウする。小麦粉をつけ、溶き卵をからめる。パン粉をつけて高温で揚げる。揚げての中心部分は生で、余熱で火が通るという状態が好ましい。クリックで閉じますアブラボウズのちり鍋 今回は昆布だしに塩、酒で味つけして煮ながら食べるという「ちり」。しょうゆ仕立てでも、みそ仕立てでもいい。身からたっぷりと脂が染み出してきて汁の表面を覆う。だしも濃厚な味になる。クリックで閉じますアブラボウズの煮つけ 本種の基本的な食べ方だ。水洗いして皮付きのまま切身にする。頭部などは脂が強すぎることがあるので注意。湯引きして、残った鱗、皮目の滑りを取り。やや濃いめの甘辛味で煮たもの。軟らかくてとてもこくのある味。絶品である。クリックで閉じますアブラボウズの塩焼き(背) 大型魚なので背と腹の脂の量、身質は大いに誓っている。ここでは背の部分を切り身にして塩をすり込むようにまぶす。1時間ほど寝かせてじっくりと焼き上げる。身は適度にしまり、脂の甘さも感じるが、しっかり魚のうま味もある。クリックで閉じますアブラボウズの幽庵焼き(祐庵焼き) しょうゆ、酒、みりん同量を合わせた地に漬け込んで焼き上げたもの。日本料理の基本で、柚子などの香りをつけてもいい。柚子の香りづけをしたものを柚子庵焼きということもある。切り身にして脂が多い魚なので振り塩をする。半日寝かせて出て来た水分を拭き取り、地につけ込む。これをじっくり焼き上げる。クリックで閉じますアブラボウズの幽庵焼き
アブラボウズのみそ漬け みそ、みりん、砂糖、酒を合わせた地に2日つけ込んで焼き上げたもの。漬ける時間はお好みだが、面白いのはみそ味が脂の強さを緩和すること。上品な味になる。クリックで閉じますアブラボウズのみそ漬け
アブラボウズの刺身(腹) 大型魚なので背と腹の脂の量、食感が大いに違っている。腹の方に脂が多く、独特の食感がある。魚らしいうま味よりも脂の口溶け感を楽しむといった感がある。一切れでたくさんという人と、いくらでも食べられる人に分かれる。クリックで閉じますアブラボウズの刺身(背) 大型魚なので背と腹の身の味わいは大いに違っている。背は血合いがあり、脂がのっているとはいっても腹身と比べると少なく、食べやすいと思う。単純に背を刺身にすると大きすぎるので、皮近くを冊状にして1切れで16g前後にしてみた。クリックで閉じます好んで食べる地域・名物料理
加工品・名産品
釣り情報
ー歴史・ことわざ・雑学など
田中茂穂のアブラボウズ 明らかに間違いであるが、今でもこのような誤解されている。〈脂肪に富んでいる為に、稍美味であるが、是を食すると、肛門から其の脂肪が不知不識の間に流れ出すこと、恰も蓖麻子油を飲んだ時のやうである〉『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年) 注/よほどたくさん食べないとこのようなことにはならない。参考文献・協力
『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年)、『日本産魚類検索 全種の同定 第三版』(中坊徹次編 東海大学出版会)、『原色魚類大図鑑』(安倍宗明 北隆館)