殻長7cm前後になる。黄土色の地に濃い褐色の不規則な斑紋があるが変異が多い。縫帯と軸唇の間に孔(臍孔)がある。[石川県産]
バイの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)
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珍魚度・珍しさ
★★
少し努力すれば手に入る魚貝の物知り度
★★★
知っていたら通人級食べ物としての重要度
★★★
一般的(流通量は普通)味の評価度
★★★
美味
分類
軟体動物門腹足綱前鰓亜綱新腹足目アクキガイ超科バイ科バイ属外国名
学名
Babylonia japonica (Reeve,1842)漢字・学名由来
漢字 貝、蛽 Standard Japanese name / Bai
由来・語源 『日本及び周辺地域産軟体動物総目録』(肥後俊一、後藤芳央 エル貝類出版局)には、『目八譜』よりとされているが、むしろ一般名である。巻き貝の典型的なもの。「巻き貝」自体をさす言葉でもある。
多くの人が「ばいがい」というが、これを漢字にすると「貝貝」となるくらい巻き貝の代表的なものだ。目八譜
1843(天保14)、武蔵石寿(武蔵孫左衛門)が編んだ貝の図譜のひとつ。図は服部雪斎が描く。武蔵石寿は貝類を形態的に類別。1064種を掲載する。現在使われている標準和名の多くが本書からのもの。貝類学的に非常に重要。地方名・市場名
生息域
海水生。水深2メートル〜20メートルの泥地。
北海道南部から九州、朝鮮半島。生態
雌雄異体で交尾を行う。
産卵期は6月から8月。
浅い泥の上などで腐肉、死んだ魚などを食べている。基本情報
日本各地の浅い海にいるもっとも一般的な食用貝である。
土地土地での呼び名も多く、国内でもっとも馴染みのあるものであった。
食用としてだけではなく、貝殻を細工物に使われた。代表的なものはとがっている部分を切り、鉛を流し込んで独楽とした。これがベイゴマの語源である。
この食用巻き貝の代表だったバイが激減したことがある。
1960年代から船底や漁網に付着生物が着くのをふさぐために使われはじめたトリブチルスズ(TBT)、トリフェニルスズ(TPT)が海に拡散して、本種やイボニシなどをインポセックス(雌の雄化)に。漁獲量が激減して流通上とても少なくなる。
本種に取って代わったのが北海道などで揚がるエゾバイやや、インド、東南アジアなどからの輸入もの。加工品(煮貝)として出回るほとんど総てはインド産セイロンバイ、アラビア海のソマリアバイなどからの輸入ものだ。
2020年現在、徐々に日本海などからの入荷量が増えてきている。
珍しさ度 一般的な食用貝ではあるが、最近ではやや特殊なものとなっている。少し探すしかない。水産基本情報
市場での評価 入荷量は少ない。値段は高値安定。
漁法 カゴ漁
産地 日本海側からの入荷が多い。選び方
原則的に生きているもの。貝殻につやのあるもの。味わい
旬は春〜初夏。
貝殻は薄く歩留まりがいい。筋肉は熱の通し方が浅いと硬い。わたに苦みやえぐみがない。栄養
ー危険性など
極めて希だが、過去に中毒例がある。自治体などの情報に従うといい。
1965年、静岡県沼津産のバイを食べて視力減退、瞳孔拡大、言語障害、口渇などの症状がでた。原因物質はネオスルガトキシン、プロスルガトキシン。
1957年には新潟県寺泊で、1980年には福井県でフグ毒として有名なテトロドトキシンによる中毒があった。食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)
好んで食べる地域・名物料理
ー加工品・名産品
ー釣り情報
巻き貝を釣るなんていうとビックリされるだろうか? これが釣れるのだ。アオイソメなどをエサにした投げ釣りでぽつりぽつりと上がってくる。釣れる条件としては夜、もしくは潮が濁っていること。歴史・ことわざ・雑学など
貝笛 笛にもなり「貝笛」と呼ぶ。
トリブチルスズ化合物 船の付着物(フジツボなど)を防止するために船底に塗るトリブチルスズ化合物(TBT)のために雌が雄化する(インポセックス)により激減した。
缶詰 缶詰の材料にもなった。
年取に食べる 〈商家では、除夜や歳始にはいつもこれを必ず酒の肴として用いる。貨殖が千倍、万倍になるという祝いの意味をとって用いるのである。〉『和漢三才図会』(寺島良安 東洋文庫 平凡社 正徳2年 1712)
独楽 〈紀州熊野の産は大きくて厚い。大きなもので長さ三寸ぐらい。小児はこの殻の頭の尖りを打ち去って平均にし、細い苧縄を纏いつけ、独楽廻しのようにして舞わせて遊ぶ。〉『和漢三才図会』(寺島良安 東洋文庫 平凡社 正徳2年 1712)
クリックで閉じますべいごま
べいごま(貝独楽) 代表的な玩具で、漢字では「貝独楽」。もともとは巻き貝を独楽の形にしたもの。寛永5年くらいから見られる。鉄製になったのは大正時代から。この起源は本種など巻き貝の殻の尖った方を残し、後の体層を削る(金槌なので砕く)。この尖った方にヒモをかけて独楽のように回す。
遊び方は台の上にござ、厚い布などを中心をくぼませて張る。そこで2人が同時にベイゴマを回し、相手の独楽をはじき出した方が勝ち。
博打性の高い遊びだったようだ。
〈小児はこの殻の頭の尖りを打ち去って平均にし、細い苧縄を纏いつけ、独楽廻しのようにして舞わせて遊ぶ〉。『和漢三才図会』(寺島良安 東洋文庫 平凡社 正徳2年 1712)
川名興は実際に鋸南町(千葉県)の老漁師に貝のベイゴマを作ってもらっている。ただしこちらは体層部分(口の部分)を砕き作る。『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社)参考文献・協力
『日本近海産貝類図鑑』(奥谷喬司編著 東海大学出版局)、広辞苑、『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社)、『新版 水産動物学』(谷田専治 恒星社厚生閣)