ドジョウ

Scientific Name / Misgurnus anguillicaudatus (Cantor,1842)

ドジョウの形態写真

20センチ前後になる。体高が低く細長く背は暗色で腹部はやや明るい色合いをしている。尾鰭は円形、口ひげは5対。[栃木県那珂川町]
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20センチ前後になる。体高が低く細長く背は暗色で腹部はやや明るい色合いをしている。尾鰭は円形、口ひげは5対。[栃木県那珂川町]20センチ前後になる。体高が低く細長く背は暗色で腹部はやや明るい色合いをしている。尾鰭は円形、口ひげは5対。[滋賀県高島市朽木]20センチ前後になる。体高が低く細長く背は暗色で腹部はやや明るい色合いをしている。尾鰭は円形、口ひげは5対。[アルビノ 東京都浅川]20センチ前後になる。体高が低く細長く背は暗色で腹部はやや明るい色合いをしている。尾鰭は円形、口ひげは5対。[埼玉県寄居町]
    • 珍魚度・珍しさ

      ★★
      少し努力すれば手に入る
    • 魚貝の物知り度


      知らなきゃ恥
    • 食べ物としての重要度

      ★★
      地域的、嗜好品的なもの
    • 味の評価度

      ★★★★
      非常に美味

    分類

    顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区ニシン・骨鰾下区骨鰾系コイ目ドジョウ科ドジョウ属

    外国名

    Loach
    言語英名 
    Oriental weatherfish

    学名

    Misgurnus anguillicaudatus (Cantor,1842)

    漢字・学名由来

    漢字 泥鰌 鯲 Dojou
    由来・語源 一般名から。古く、泥から生ずるものと考えられていたためか。
    『魚鑑』(武井周作 天保辛卯 1831)には鯲、泥鰌(でいしう)。
    土の中で生きているので「土生」
    中国語の「泥鰌」、「泥鰍」に由来する。
    和漢三才図絵「常に元気に動く魚であるから“動酋”という」。
    大言海「泥津魚の義なり、泥の中にてチョロチョリするより起きたる呼び名」。

    地方名・市場名

    生息域

    淡水魚。平野部の浅い池沼、田や用水路、流れのあまりない河川。
    北海道〜琉球列島。
    サハリン、アムール川から北ベトナム、朝鮮半島、台湾、海南島、ブルマのイラワジ川。

    生態

    河川の本流などには少なく、いてもよどみの沼っぽい場所。主に田や水路などに多い。
    食性は動植物プランクトン、イトミミズなど。
    田や泥っぽい場所で生息するので鰓(えら)、皮膚(ひふ)呼吸のほか、腸でも呼吸する。
    産卵期は4月から8月。
    雌(めす)の方が雄(おす)よりも多い。雌の比率が高い。
    雌(めす)の方が雄(おす)よりもやや大きい。

    基本情報

    古くはどこにでもいた淡水魚であって、味の良さから各地で食用となっていた。
    柳川鍋、丸鍋など知名度の高い伝統料理があり、東京などでは老舗のドジョウ屋が何軒かある。
    金沢ではもっぱら蒲焼きになり、新潟の夏には柳川鍋がなくてはならない。
    それが淡水域の乱開発と、農薬のために激減。
    養殖が行われるようになるくらい高級なものとなった。
    それでも需要を満たせない状況なので最近では流通の主流は中国、台湾などからの輸入物になっている。

    水産基本情報

    市場での評価 中国、台湾などからの輸入物が多い。青森県など東北、また北海道などの国産ものは高値となっている。
    漁法 養殖が主流。筌(せん)という竹などで作ったカゴ状の道具で待ち受けてとる。手網ですくう。冬季には田で掘り取る。

    選び方

    原則的に生きているもの。割いたものなどは血液の赤いもの。全体が黒いもので、退色していないもの。

    味わい

    旬は産卵期前の春から初夏。
    鱗は気にならず、基本的にはそのままぬめりを取り、裂くか丸のままで使う。骨が柔らかく身にうま味があってとても味がいい。
    ぬめり取り1 ボウルなどに入れて、酒を少量入れ酔わせておとなしくさせる。この酒には臭味消しや軟らかくさせる効果があるのかも。
    ぬめり取り2 1だけでもいいが、ぐったりしたら塩を加えもみ洗いして、水で塩とぬめりと洗い流す。

    栄養

    危険性など

    食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)

    ドジョウの料理・レシピ・食べ方/煮る(鍋、煮つけ)、汁(みそ仕立て。しょうゆ仕立て)、揚げる(唐揚げ)、焼く(蒲焼き)
    どじょう鍋
    ドジョウのさき鍋 名古屋市で裂いたものを購入して作ったもの。大きな魚屋さんやデパートなどではときどき売られているので、挑戦して欲しい。地はみりん、酒、砂糖少量、水の単純なもの。たっぷりのねぎで食べると非常にうまい。夏の味だ。


    どじょうのみそ汁どじょうのみそ汁 ぬめりとりをしたドジョウを水から煮て、みそを溶き軟らかくなるまで煮る。仕上げにねぎを加えて出来上がり。ドジョウは頭部を箸でつまんで身をしごくように食べる。少量の土壌だとだしが出ないのでカツオ節だしを使ってもいい。また頭部もそれほど硬くないので、そのまま食べてもうまい。
    どじょう汁どじょう汁しょうゆ仕立て ぬめり取りをしたドジョウを水からアクを取りながら煮て、酒を加えてまた煮る。ここにしょうゆと塩で味つけしたもの。卵と相性がいいので、溶き卵を入れるとなお美味。青みはここではニラを使ったがお好みで。
    ドジョウの唐揚げドジョウの唐揚げ 小振りのドジョウに片栗粉を生きたまままぶし、揚げたもの。少々残酷ではあるが、実に香ばしく、ドジョウのうま味もしっかり味わえてうまい。好き嫌いの出ない料理法だ。
    ドジョウの煮つけドジョウの丸煮 ぬめりを取ったドジョウをみりんとしょうゆでこってりと煮たもの。しょうゆ辛い味にすると江戸風になる。ドジョウは上品な白身で、皮目にも独特の風味がある。食べ慣れると実にうまいものである。酒の肴にも向くが、ご飯にも合う。

    好んで食べる地域・名物料理

    柳川鍋・骨抜き鰌鍋の起源 〈文政初年(1818〜1831年の初めの頃)比(ころ)、江戸南伝馬町三丁目の裡店な(うらだな)で万屋某と云う者、鰌を裂きて骨首および臓腑を去り、鍋煮にして売る。その後天保初め(1831〜1845年の初め)比、横山同朋町(現中央区東日本橋)にて、これも裡店住の四畳ばかりの所を客席として売り始め、屋号を柳川と云う〉
    舞子丼 柳川をのせたものや、蒲焼き風にしたものなどをご飯にのせた丼物。東京都内各所で食べられる。
    どじょう汁 夏に作る汁。酒でおとなしくさせたドジョウをなすと炒めて、だしを加えてごぼう、豆腐などを加えて汁にする。[山形県鶴岡市]
    どじょうのころいり(どじょうのいりころ) ドジョウとねぎ、ごぼうを油で炒めたもの。[いこい食堂 香川県さぬき市]
    鰌汁(泥鰌汁) みそ仕立ての汁で「長崎くんち」の食膳に必ず出されるもの。「そぎたる牛蒡と泥鰌を丸煮にしたるを麦味噌でだすなり」『長崎学・續食の文化史』(越中哲也 長崎純心大学博物館)
    蒲焼き 数尾を筏状に串刺しにして焼いてタレをつけた。[愛知県豊田市足助]

    新潟市では土用丑の日に柳川を食べる 新潟市の市場には土用丑の日に地元産のドジョウを裂いたものが並ぶ。土用丑の日に柳川を食べる風習があるためだ。旧蒲原郡西部が広い湿地帯(潟)であった時たくさんドジョウがとれたためだ。新潟市など潟に開けた町ではドジョウはもっともなじみ深い食べ物だったのだ。今やドジョウをとっている問屋は減っているが、地元でのドジョウの漁は続いている。

    どじょうの丸鍋ドジョウの丸鍋 江戸(東京)の郷土料理ともいえそうなもの。さき鍋(開いたものを鍋にしたもの)よりも食べやすい。「どじょう」というだけで敬遠する人もいるが、一度食べてみるとその味の虜になる人は多い。近年、老舗は健在だが、小さな個人経営の店が少なくなっていて残念だ。
    どじょうのさき鍋どじょうのさき鍋 さいたドジョウを生の状態から煮ながら食べるもの。初夏の卵が魅力的。丸鍋よりもドジョウ本来のうまさが楽しめる。東京だけではなく名古屋でも食べられている。
    ドジョウの柳川鍋柳川鍋 天保(1830〜1843)初め横山同朋町(東京都中央区東日本橋)に「柳川」というドジョウ鍋を売る店ができる。その後、ドジョウ鍋自体を「柳川鍋」というようになる。福岡県柳川市にも「柳川鍋」を名物として出す店があるが、「柳川鍋」と柳川市とは関係がない。
    どじょう汁どじょう汁 岡山県新見市にある料理店『伯備』の卵を落としたどじょう汁。新見市だけではなく卵を加える地域が多いのかも知れない。[伯備 岡山県新見市]
    どじょううどんどじょううどん 生きているドジョウに酒を飲ませて、水から煮て時季の野菜などを加えて、みそ仕立てにしたもの。[香川県綾川町、さぬき市、高松市南部]
    ドジョウの蒲焼き蒲焼き 石川県、富山県では焦げるまで強く焼き上げるが、関東ではウナギの蒲焼きのようにふっくらと仕上げる。この関東流の蒲焼きでご飯というのみうまい。[東京都]
    どじょうのいりころどじょうのいりころ ドジョウとごぼう、ねぎを油で炒め塩と酒で味つけしたもの。味などは不明なので想像で作ってみた。ドジョウというと汁か煮ものとなるところ、炒めるということ自体が珍しいのではないか。[香川県さぬき市]

    加工品・名産品


    ドジョウの蒲焼 石川県金沢市や富山県の旧加賀藩領(南砺市、砺波市)で作り売られている名物「ドジョウの蒲焼き」。昔は廉価な総菜であったが、今や高級。細串に数匹ずつ刺し焦げ目をつけて焼き上げたもの。[高畠川魚店・]
    どじょうの唐揚げどじょうの唐揚げ 群馬県南部や埼玉県北部の利根川、渡良瀬川流域などで売られているもの。[蓮見商店 群馬県邑楽郡板倉町]

    釣り情報

    歴史・ことわざ・雑学など

    ドジョウの蒲焼きの起源 二十六聖人記念館の結城了悟神父の話に「イギリス人が英文で金沢を紹介している本の中に、明治3年長崎浦上のキリシタンの人達が、何の罪もなく、ただ信仰が違うという理由で金沢の町はずれにながされてきた、というくだりがある。この浦上の信徒たちが金沢の人々にドジョウ料理を教え、今ではドジョウの蒲焼きは金沢の市場の名物になっている」。
    泥鰌汁 川魚はいつでもとれるので、泥鰌汁蜷汁はたびたび作った。『能義奥の民俗』(畑伝之助 島根県文化財愛護協会 1967)

    参考文献・協力

    『魚類学 下』(落合明、田中克 恒星社厚生閣)、『日本の淡水魚』(川那部浩哉、水野信彦 編・監修 山と渓谷社)、『新釈魚名考』(榮川省造 青銅企画出版)、『たべもの起源事典』(岡田哲 東京堂出版)、『魚と貝の事典』(望月賢二 柏書房)、広辞苑、『長崎学・續食の文化史』(越中哲也 長崎純心大学博物館)、『つるおかおうち御膳』(鶴岡市食教育・地産地消推進協議会 鶴岡市)

    地方名・市場名

    ドジョウ
    場所東京都など 
    ドンキュー
    場所静岡県瀬戸川 参考『静岡県の淡水魚-静岡県の自然環境シリーズ-』(静岡県生活環境部自然保護課 第一法規出版 1982) 
    アブラドジョウ
    場所静岡県都田川 参考『静岡県の淡水魚-静岡県の自然環境シリーズ-』(静岡県生活環境部自然保護課 第一法規出版 1982) 
    マイコ[舞子]
    場所関東の料理店 備考関東の料理店で「マイコ(舞子)」、築地などで「オドリコ(踊り子)」と呼ぶ人がいる。これは水中の酸素が不足してくると腸で空気呼吸するために水面に定期的に躍り上がる、その様子から。 
    オドリコ[踊り子]
    場所築地など 備考関東の料理店で「マイコ(舞子)」、築地などで「オドリコ(踊り子)」と呼ぶ人がいる。これは水中の酸素が不足してくると腸で空気呼吸するために水面に定期的に躍り上がる、その様子から。 
    ヌマドジョウ[沼ドジョウ]
    場所静岡県大井川、徳島県美馬郡つるぎ町貞光町・半田町 備考シマドジョウをカワドジョウ(川ドジョウ)というのに対してヌマドジョウ(沼ドジョウ)。 
  • 主食材として「ドジョウ」を使用したレシピ一覧

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