雄は50cm TL 前後に、雌は35cm TL 前後にしかならない。雄(おす)は第二背ビレ、尻ビレが非常に大きく、第2背鰭の軟条は12-14。体が8列の骨板(骨質板 ウロコが変質して硬い板のようになったもの)で被われていて、尾の方は棘のようになっている。
トクビレの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)


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珍魚度・珍しさ
★★
少し努力すれば手に入る魚貝の物知り度
★★★
知っていたら通人級食べ物としての重要度
★★
地域的、嗜好品的なもの味の評価度
★★★★★
究極の美味
分類
顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目カジカ亜目トクビレ科トクビレ属外国名
学名
Podothecus sachi (Jordan and Snyder, 1901)漢字・学名由来
漢字 特鰭 Tokubire
由来・語源
〈はつかくうを 北海道〉、〈とくひれ 北海道〉『帝国博物館天産部魚類標本目録.帝国博物館』(石川千代松・松浦歓一郎 1897)。「とくびれ」は富山県の呼び名だと思うが北海道としている。
「特鰭」は『日本魚類圖説』(岡田彌一郎、内田惠太郎、松原喜代松 三省堂 初版1935)にあり、富山県での呼び名。松原喜代松など京都大学に近い富山県の呼び名を採用したのではないか。特に大きな鰭を持つの意。大きく広がる第二背ビレ、尻ビレに由来する。
ワカマツ 田中茂穂は標準和名をワカマツとしていた。
タイプ標本(ホロタイプ) 青森県陸奥湾。来日したジョーダン、ジョン・オターバイン・シュナイダーが青森県にて採取。記載する。種小名「sachi(さち)」は青森県での呼び名だ。Jordan
David Starr Jordan〈デイビッド・スター・ジョーダン(ジョルダン) 1851-1931 アメリカ〉。魚類学者。日本の魚類学の創始者とされる田中茂穂とスナイダーとの共著『日本魚類目録』を出版。
Snyder
ジョン・オターバイン・スナイダー(1867-1943 アメリカ) 魚類学者。スタンフォード大学の魚類学教授。『日本魚類目録(A catalogue of the fishes of Japan)』を田中茂穂、David Starr Jordanとともに作る。地方名・市場名
生息域
海水魚。水深200mよりも浅場に多い。水深20-269mの砂泥地、岩礁域。
北海道全沿岸、武蔵堆、青森県〜富山県の日本海沿岸、兵庫県津居山、島根県隠岐、青森県〜福島県の太平洋沿岸、駿河湾。
朝鮮半島東岸中部〜サハリン西岸の日本海沿岸、オホーツク海南部、千島列島。生態
交尾して産卵期は10月から11月。卵は100日前後で孵化。
海底のゴカイやユムシを食べている。基本情報
西部北太平洋の寒冷な海域に生息する。本州北部でも揚がるが主に北海道でとれる魚。青森県、岩手県などからも入荷を見る。
底曳き網、刺網などで揚がるもので、もともとは狭い地域だけで利用されてきたようだ。北海道羅臼では昔は食べなかったという(2023年聞取)。最初に大型になる雄が北海道の炉端焼きなどで人気となり、これが関東にも入ってきて、築地市場でも馴染みの魚となる。もともとは「八角(雄)」の入荷が主だったが、近年では雌も関東の市場にはしばしば入荷してくる。消費地で人気が出て産地に食文化が行き渡るという希有な例でもある。
脂ののりがいいことや、マスコミのために1990年代くらいから知られるようになった。今や関東では高値がつく。大型の雄が高いが、雌の流通も少なくはなく決して安くはない。
珍魚度 珍しい魚ではないが一般的な食用魚ではない。関東の市場でプロたちの間では見慣れた存在だが、いざスーパーなどで探しても手に入らない。水産基本情報
市場での評価 関東の市場では量的には少ないが、定番的な魚となっている。値段は小さくても高値安定。大型のものは高級魚。雄の方が大きくなり高い。それに対して雌(めす)は小形であり、脂も少ないがために人気がない。値段の安い小振りなものには雄雌が混ざって箱詰めされている。関東ではあまり雄雌にこだわりがないので、混ざって入荷してきても特にオスを選んだりすることはない。
漁法 底曳き網、刺し網
主な産地 北海道、岩手県選び方
雄は鮮度がいいと黒い。目が澄んでいるもの。鰓が鮮紅色のもの。味わい
旬は秋だと思うが、比較的年間を通して味がいい。
鱗は硬く繋がっていて剥くといい。骨は柔らかい。鱗は硬くて食べられないのだが、焼くと甲殻類のような香りが立つ。
白身で白濁して脂が混ざり込んでいる。濃厚な旨みと、脂の甘みがある。栄養
ー危険性など
ー食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)
トクビレの料理法・調理法・食べ方/焼く(塩焼き、みそ焼き)、汁(潮汁、みそ汁)、生食(刺身)、揚げる(皮揚げ)、煮る(煮つけ)クリックで閉じます
八角の軍艦焼き(トクビレのみそ焼き) 水洗いして肝を分けておく。背開きにして、みそを乗せて焼く。合わせみそは、みそ、みりん、酒、肝を合わせたもの。じっくり焦がさないように焼き上げる。身を肝の入ったみそにからめながら食べる。
トクビレの塩焼き 水洗いして、背開きにして振り塩をする。1時間以上置いてじっくりと焼き上げる。写真は雌なので真子、肝も一緒に焼いた。脂がのっていて焼いても硬くならず、鱗から甲殻類に近い風味が感じられてとてもいい。クリックで閉じますトクビレのちり鍋 水洗いして適当に切り、湯通しして冷水に落として、取れやすい鱗やぬめりを流す。これを昆布だしに酒・塩味で煮ながら食べる。野菜などはお好みで。煮上がりを食べると身が締まり、身離れもよく実にうまい。クリックで閉じますトクビレの潮汁 水洗いして湯通しする。冷水に落として剥がれた鱗やぬめりを流す。これを昆布だし(水でも)で煮て酒と塩で味つけしたもの。実にうま味豊かなだしが出る。この汁の味だけで十二分においしいと思う。また身も実にうまい。クリックで閉じますトクビレの刺身肝醤油かけ 薄造りにして美味。また肝を混ぜたしょうゆで食べても、肝で和えてわさびじょうゆで食べてもいい。刺身は全体に細かい粒子の脂が白身の中に白濁して混在している。体温でトロっととろけるクリックで閉じます好んで食べる地域・名物料理
北海道。
軍艦焼き 開いて、肝、みそ、酒などを合わせたものを塗り焼いたもの。加工品・名産品
釣り情報
ー歴史・ことわざ・雑学など
ー参考文献・協力
『日本産魚類検索 全種の同定 第二版』(中坊徹次編 東海大学出版会)、『新北のさかなたち』(水島敏博、鳥澤雅他 北海道新聞社)、『原色魚類大図鑑』(安倍宗明 北隆館)、『魚と貝の事典』(望月賢二 柏書房)地方名・市場名 ?