17cm SL 前後になる。頭は小さく、吻端に1本のヒゲがある。眼の真上と少し後ろに2対の棘がある。体はやや側へんし、骨板に覆われて角張る。体の背近くと腹部に1本ずつの棘の縦列がある。
アツモリウオの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)
-
魚貝の物知り度
★★★★★
知っていたら学者級食べ物としての重要度
★
食用として認知されていない味の評価度
★
食べられなくはない
分類
顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目カジカ亜目トクビレ科ツノシャチウオ属外国名
学名
Agonomalus proboscidalis (Valenciennes, 1858)漢字・学名由来
漢字/敦盛魚 Atsumoriuo
由来・語源/クマガイウオ (Agonomalus jordani Jordan & Starks, 1904 )と似ているが、見た目に華やかさがあるために、クマガイウオ、すなわち熊谷直実(クマガイウオ)に対して『一谷嫩軍記』などの主役であるアツモリウオ 、平敦盛を当てたのではないかと思う。
本種などの和名のついた明治・大正・昭和初期には幸若舞、能、文楽、歌舞伎などが非常に盛んであった。平家物語「一ノ谷の合戦」(一ノ谷の戦いは1184年)を題材にした、『一谷嫩軍記』の主役、「熊谷直実といえば平敦盛」は良識といったものだった。
あくまでも推測だが、標準和名の命名はクマガイウオの方が早かった。田中茂穂はクマガイウオ(クマガエウオ)のことを〈北海道有珠郡伊達村ではクマガイ又はオニギボ[鬼義母]と云う〉としている。魚名に必ず漢字を当てていた田中茂穂は、この伊達村での呼び名「クマガイ」に「熊谷(くまがい)」をあてた。「熊谷」といえば歌舞伎、能などでも重要な登場人物、ワキ(脇役に近い)の熊谷次郎直実(くまがいじろうなおざね)なので、見た目が華やかな本種にシテ(主役)の「敦盛」、すなわち平敦盛を当てたのだと思う。常識的な話だが、源平合戦では、熊谷直実は源氏方で平敦盛は平家方。平敦盛は一の谷の戦い(兵庫県須磨)で熊谷直実に討ち取られた悲劇の主人公である。
ツノシャチウオ属 Agonomalus は古くはクマガイウオ属(トクビレ科クマガイウヲ属)だった。
アカシゲトク 〈北海道茅部郡一帯でアカシゲトクと云う〉として、田中茂穂は標準和名をクマガエウオ科クマガエウオ属アカシゲトクとしていたことがある。『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年)Valenciennes
アシル・バランシエンヌ(Achille Valencienne 1794-1865)はフランスの動物学者。ジョルジュ・キュビエとともに『魚類の自然誌』を刊行。国内で水揚げされる多くの魚を記載。地方名・市場名 ?
生息域
海水魚。水深10-120mの砂泥地・岩礁域。
北海道全沿岸、青森県津軽海峡・太平洋沿岸〜宮城県の太平洋沿岸(少ない)、新潟県〜島根県隠岐の日本海沿岸(少ない)、東シナ海。
朝鮮半島東岸中部〜間宮海峡の日本海沿岸、サハリン西岸・アニワ湾・テルベニア湾、千島列島南部。生態
ー基本情報
主に北海道で揚がる魚であるが全長20cm以下で重さ50g前後にしかならない。ほぼ可食部のない魚なので食用魚とは見なされていない。水産基本情報
市場での評価/流通しない。
漁法/定置網
産地/北海道選び方
退色して赤みの弱いもの。身に張りのないもの。味わい
旬は不明。
鱗は骨質で取れない。皮は厚みがある。骨はあまり硬くない。
白身で少し脂がある。栄養
ー危険性など
ー食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)
好んで食べる地域・名物料理
ー加工品・名産品
ー釣り情報
ー歴史・ことわざ・雑学など
ー参考文献・協力
協力/田母神真広さん(郡山水産/福島県郡山市)
『日本産魚類検索 全種の同定 第三版』(中坊徹次編 東海大学出版会 2013年02月26日)、『北海道の全魚種図鑑』(尼岡邦夫、仲谷一宏、矢部衛 北海道新聞社)、『日本産魚類検索』(岡田彌一郎、松原喜代松 三省堂 初版1938)、『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年)