ニホンウナギ

Scientific Name / Anguilla japonica Temminck and Schlegel, 1847

代表的な呼び名ウナギ

ニホンウナギの形態写真

1m TL 前後になる。体には斑紋がなく非常に程長い。下顎は上顎よりも長い(受け口)。腹鰭はない。鰭に棘がない。背鰭・臀鰭・尾鰭は繋がっていて、尾鰭とははっきり区別がつかない。
ニホンウナギの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)
1m TL 前後になる。体には斑紋がなく非常に程長い。下顎は上顎よりも長い(受け口)。腹鰭はない。鰭に棘がない。背鰭・臀鰭・尾鰭は繋がっていて、尾鰭とははっきり区別がつかない。1m TL 前後になる。体には斑紋がなく非常に程長い。下顎は上顎よりも長い(受け口)。腹鰭はない。鰭に棘がない。背鰭・臀鰭・尾鰭は繋がっていて、尾鰭とははっきり区別がつかない。[72mm TL]1m TL 前後になる。体には斑紋がなく非常に程長い。下顎は上顎よりも長い(受け口)。腹鰭はない。鰭に棘がない。背鰭・臀鰭・尾鰭は繋がっていて、尾鰭とははっきり区別がつかない。「りんず」。利根川で下りウナギの大型のものは鱗が浮き上がってくる。これを「りんず」とか「ぜにがた(銭形)」というが、独特の輝きがある。[千葉県香取市小見川町]
    • 珍魚度・珍しさ

      ★★
      少し努力すれば手に入る
    • 魚貝の物知り度


      知らなきゃ恥
    • 食べ物としての重要度

      ★★★★
      重要
    • 味の評価度

      ★★★★★
      究極の美味

    分類

    硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区カライワシ下区ウナギ目ウナギ科ウナギ属

    外国名

    学名

    Anguilla japonica Temminck and Schlegel, 1847

    漢字・学名由来

    漢字 鰻、棟木、胸黄 Unagi
    由来・語源 標準和名は2010年にニホンウナギに変更。ニホンウナギは標準和名であって、魚類学的に使うものであって、一般には使う必要はまったくない。あえて言えば養殖業者とか、ヨーロッパウナギやオーストラリアウナギなど別種のウナギを扱う流通上では必要だろう。
    ■「棟木」は家の屋根の斜面の中央にある一番長い材木で、ウナギの体が「棟木」のように長いため。
    ■「胸黄」はウナギの胸の辺りが黄色いために「むなき」、「むねぎ」がウナギに。
    ■ 「大長(おおなぎ)」の意味。ドジョウに対してもっと大きく長いの意味からきた言葉。
    〈硬骨魚目無足亜目ウナギ科ウナギ〉『日本産魚類検索』(岡田彌一郎、松原喜代松 三省堂 初版1938)
    うなぎの胸部胸黄 ちょうど胸に当たるところが黄色いので「胸黄(むなき)」で。これが転訛した。
    Temminck
    コンラート・ヤコブ・テミンク Coenraad Jacob Temminck(1778-1858 オランダ) シュレーゲルとともにシーボルトの持ち帰った脊椎動物を整理、記載。『Fauna Japonica』(日本動物誌)を執筆。
    Schlegel
    ヘルマン・シュレーゲル(Hermann Schlegel 1804-1884年)はドイツの動物学者。テミングとともにシーボルトの持ち帰った脊椎動物を整理、記載。『Fauna Japonica』(日本動物誌)を執筆。

    地方名・市場名

    生息域

    海水→淡水→海水。
    【非常に少ない】小笠原諸島、【少ない】北海道太平洋〜三陸、日本海青森県〜福井県。伊豆諸島、三陸地方南部〜紀伊半島、近畿地方〜中国地方、四国、五島列島、九州、屋久島、琉球列島。
    朝鮮半島全域、台湾、中国沿岸の各省、四川省成都・重慶〜陝西省の揚子江流域、海南島。

    生態

    産卵場は太平洋グアム沖、産卵期は4月〜12月。産卵後孵化した葉形仔魚(レプトケファルスもしくはレプトセファルス)は海流にのり、4ヶ月〜5ヶ月かけて日本には10月〜6月に接岸する。
    シラスウナギに変態して河口や沿岸に現れ、この時期ウナギ養殖の稚魚漁が行われる。やがてシラスウナギは体色の黒いクロコに成長し、河川を上る。
    ウナギは河口域、中流域、上流域に生息。湖沼、田、水路などにも姿を見せる。ただし一生、汽水域にとどまり淡水域に入らない個体もある。河川での生活は5年〜10数年で、成熟年齢は4歳。産卵個体を体色から「銀うなぎ」とも、「りんず(綸子)が出たうなぎ」ともいう。秋に川を下り、南に向かう。
    クロコウナギクロコ 河口域にたどり着いたシラスウナギは徐々に色素を増やしてクロっぽい体色になる。この10cmほどの黒くなったばかりのものを「クロコ」という。

    基本情報

    ニホンウナギというのは標準和名であって一般的には誰も使わない言語である。普通はウナギである。北海道南部から琉球列島まで日本全国でみられる。グアム沖の深海で生まれ、日本各地の海辺に到達、河川に上る。近代になり浅海や河川が荒廃する以前には非常に身近な存在であった。様々な民芸品や玩具、絵などにも描かれ、信仰の対象となるなど食文化以外にも重要な存在である。
    ウナギは裂いて焼くという料理法が生まれる前は非常に特殊な食用魚であったが、裂いて開いて料理するようになり重要な食用魚となり、また高級な魚になる。明らかに江戸時代からの高級魚。当時は露天の店と、座敷のある店があったが、座敷のある店でウナギを食べることは一種のステータスでもあった。
    また明治時代になり養殖が確立して急速に食用魚として一般的なものとなる。最近では国内養殖だけではなく、台湾、中国などからの輸入ものもあって、国内どこでも食べられるようになる。
    また近年は養殖のためのシラスウナギの減少で国内でとれる標準和名ウナギ以外にも、オーストラリアウナギや東南アジアのウナギなども輸入されている。
    加えるにウナギの完全養殖が研究段階ではあるが成功しており、養殖鰻の生産に関しても新しい段階を迎えそうだ。
    ウナギの食べ方は限られており、開いて素焼きにしたものが白焼き。甘辛いタレをつけたものが蒲焼きとなる。東西、日本各地で食べ方に変化がある。いちばん重要なのが東西での違い。
    関西では腹開きにし頭をつけたまま1本を焼き上げる。関東では背開きにし頭を落として二等分して焼き、途中に蒸す工程がはいる。最近では関東の蒸しの行程の入るやり方が主流になりつつある。
    珍魚度 天然ものは産地に行って探すか、市場などで探すしかない。養殖ものはいつでも手に入る。生きているものを手に入れるのもそんなに難しくない。

    水産基本情報

    市場での評価 ほとんどが養殖されたもの。市場で見かけるものは活けは淡水魚専門店、蒲焼きなどの加工品は塩干にある。非常に多彩で、数量が多い。輸入ものでは活けが台湾、加工品は中国が多い。
    漁法 釣り、ウナギ筒、ウナギカマ漁など様々な漁法で
    主な養殖地 鹿児島県、愛知県、宮崎県、静岡県、高知県
    輸入ものでは台湾のものは冬季などに人気があり、国産と値段の点であまり大きな違いはない。
    中国産は加工品となることが多い。

    選び方

    原則的に生きているもの。天然はできるだけ大きいもの。脂ののっているもの。

    味わい

    ウナギの旬は養殖ウナギと天然ものでは違いが出る。天然ものは大きい方がおいしい。
    天然ウナギは秋から冬。特に産卵で下りに入ったもの。海のウナギをよしとする。最近では海辺にはたどり着くが川に入らないものもいる。これもよしとされている。
    年間を通して。なかでも冬に養殖池に入れたもので成長の早い「飛び(とび)」をよしとする。早いものでは半年ほどで出荷できるまでに育つ。この「飛び」の出荷される初夏が養殖ものの旬。
    頭部よりも尾に近い方がうまい。鱗は埋没して気にならず、皮は厚みがあって硬い。白身で脂が混在している。身以外に肝なども美味。
    血液にはウナギ血清毒があり、大量に飲むと吐き気、下痢、発疹、呼吸困難などにみまわれる。血液が目に入った場合、激しく痛みを感じたり、異物感が残る。また傷口などに入ると化膿することも。

    栄養

    危険性など

    血液には血清毒があり、口に入れると痺れや湿疹、吐き気、呼吸困難を引き起こす。

    食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)

    ウナギの料理法・レシピ・食べ方/焼く(白焼き、蒲焼き、八幡巻き、塩焼き、肝焼、ひれ焼き、うざく・酢の物、う巻き)、煮る(ゆでる・湯引き、煮つけ・佃煮、すき焼き・じゅんじゅん、柳川鍋、半助豆腐)、揚げる(兜の唐揚げ、骨せんべい)、汁(肝すい)
    ニホンウナギの蒲焼き
    ウナギの蒲焼き ウナギ料理の基本は蒲焼き。塩焼きにしても美味しいが、蒲焼きのうまさには太刀打ちできない。蒸しの工程が入る関東風、蒸さない地焼きがあるがお好みで。家庭ではやはり難しいが開けさえすれば、ガスでも焼くことが出来。みりん、しょうゆを合わせて煮つめたタレを使えば比較的簡単にできる。

    ウナギの塩焼きウナギの塩焼き 開いたウナギに振り塩して、焼き上げたもの。決して難しいものではなく、単に焼いただけだ。焼くと内部から脂がしみ出てきて表面が揚げたようになり、香ばしくておいしい。肝なども一緒に焼くといい。開いたウナギさえあれば簡単にできる。わさびで食べてもおいしいが、柚子こしょうが出合いのものだ。
    う巻き(うなぎ巻き卵)う巻き(うなぎ巻き卵) だし巻き玉子に鰻の蒲焼きを巻き込んだもの。市販の蒲焼きを買ってくれば簡単に作れる。だし巻き卵はだしとみりんと酒、塩で味つけしておく。これを卵と合わせて混ぜウナギの蒲焼きを巻き込みながら焼き上げたもの。
    ウナギの柳川鍋柳川鍋 ウナギの蒲焼きをしょうゆ、みりん、酒、砂糖、水で作った地で煮て、卵でとじたもの。野菜はゴボウのささがき、三つ葉など。市販の蒲焼きで簡単にできる。市販のすき焼きのタレを使うなどしても簡単に作れる。
    ニホンウナギの洗いウナギの洗い ウナギを三枚に下ろして皮を引き、できるだけ薄くそぎ切りにする。これを約80度くらいのゆで一瞬洗う。その後、氷水で洗ったもの。泥臭味やくせはまったくなく、噛めば噛むほどうま味が染み出してくる。脂がたっぷりなのでこくのある、奥行きのある味わいだ。
    ニホンウナギの骨せんべいウナギの骨せんべい 骨の血液などを洗い流し、少し干してからじっくりと揚げたもの。主にうなぎ店で食べるものだが、自宅でも簡単にできる。

    好んで食べる地域・名物料理

    【うなぎ屋料理】
    ・中部(名古屋など)では腹腹開きにして頭部を落とした状態で数尾を金串打ち長焼き。蒸さないでタレの入った壺にどぶんとつけて焼き上げる。名護屋のタレにはたまりしょうゆ、みりん、砂糖が使われている。
    ・岐阜県岐阜市では腹開き、頭を落とし、長いまま焼く。蒸さない。[岐阜県岐阜市]
    ・滋賀県高島市西友のものは腹開き。長焼き(頭つき1尾を切らないで長いまま焼く)。
    ・福岡県北九州市小倉では腹開き。蒸さない。
    かぶと焼き(兜焼き) 関東ではウナギの頭部を兜という。これを生の状態から焼き上げてタレに漬け込んで焼き上げる。
    【県別うなぎ飯】
    う雑炊 雑炊を作り、ウナギの蒲焼きを加えて卵をかけまわしたもの。『うなぎの本』(松居魁 柴田書店 1977)
    【その他ウナギ料理】
    肝わさ ゆでた、もしくは軽く煮た肝と腸などを適宜に切り、わさびしょうゆをかけたもの。[いずもや 日本橋]
    【駅弁】
    うなぎめし 明治40年(1907)年に宮城県遠田郡美里町にある小牛田駅で初めて売り出された。まだウナギの養殖が確立する前ではないかと思うので興味深い。『うなぎの本』(松居魁 柴田書店 1977) 今はない。
    うなぎぼく飯 「ぼく」という大型のウナギの蒲焼きを適宜に切り、青ネギを散らしている。[船宿 静岡県湖西市新居町]
    ひつまぶし釜飯 陶製のお釜にご飯を入れ、錦糸卵、1㎝前後に刻んだ鰻の蒲焼き、しいたけ、にんじんの煮もの、ウズラ卵などをのせたもの。守口漬けが添えられているのがいい。[だるま 愛知県名古屋市]
    うな重
    専門の重箱にご飯を入れ、タレをかけて蒲焼きをのせたもの。地域によって多少の違いあり。関西、関東、など地域によって様々。[東京]
    蒲焼き
    ・関東では背開きにして、2等分、もしくは3等分して竹串打ちして焼く。焼き上がったら蒸す。蒸しの時間は各店で違う。蒸し上がったらたれにくぐらせて、焼く。タレには2〜3回くぐらせる。関東のタレの基本はみりんにしょうゆ半々。[東京]
    ひつまぶし
    名古屋市周辺。ご飯の上に海苔を敷き、刻んだウナギの蒲焼きをのせたもの。まずはそのまま食べて、それが飽いたら茶をかけて食べる(茶漬けにする)。[あつた 蓬莱軒、いば昇]
    三重県 県内にはウナギ店が非常に多い。大阪風に地焼きにしるところ、東京風に蒸しがはいるところなど多彩。特に津市にウナギ店が多く、焼きが強いのが特長。

    まむし
    大阪では「うな丼」を「まむし」という。碗(椀)のふたをとると白いご飯にタレがかかっていて、ウナギの蒲焼きは見えない。ご飯とご飯の間にウナギの蒲焼きが挟んでいたもので、ご飯に蒲焼きをまぶしながら食べるので「まぶし」が「まむし」になった。[大坂市天満橋伊賀喜]

    きんし丼
    滋賀県『逢坂山 かねよ』のものは蒲焼きにだし巻き玉子をのせたもの。[逢坂山 かねよ 滋賀県大津市大谷]
    きんし丼
    京都ではご飯に錦糸卵をのせ、その上に蒲焼きを乗せたたものを「きんし丼」と呼ぶ。錦糸卵とウナギの蒲焼きが意外に相性がいい。京都の特徴はウナギ専門店ではなく普通の食堂でウナギが気軽に食べられること。[マキノ食堂 京都中央市場]
    うな玉丼(うなとじ丼) ウナギの蒲焼きを親子丼の要領で、下地(甘辛いしょうゆ味のたれ)で煮て卵でとじたもの。東京都内をはじめ関東のウナギ屋では定番的な品書きのひとつ。ウナギの量を節約できるので鰻重などよりも安い。
    白焼き
    関東では背開きにして返しながら焼き、蒸す。これをあぶったもの。
    関西では数尾一度に焼き、たれをかけないで焼き上げたもの。
    蒲焼き
    関西では頭部から斜め腹開きにして、長いまま頭つきのまま金串に数本刺す。これを焼き上げる(地焼き)。タレは瓶などからかけ回す。この焼き上げた頭部を落としてうな重、まむしなどにするのだが、この頭が「半助」。
    天然うなぎの蒲焼き
    松野町を流れる広見川の天然ウナギを蒲焼きにしたもの。海に近い場所にいるものと比べて小振りで皮が柔らかい。非常に美味。[農家民宿 わらび 愛媛県北宇和郡松野町]
    うざく
    「うなぎの蒲焼き」と「きゅうりもみ」を合わせたもの。和えたものもある。「ざく」は大阪で「きゅうりもみ」のこと。もともとは大阪などの料理であった可能性大。[川上商店 大阪府大阪市鷲津東2-2-8 木津卸売市場]
    湯引き(刺身) 大分県日田市のウナギ料理のひとつ。刺身ともいう。そぎ切りにして湯にくぐらせたもの。ゆず胡椒もしくはわさびをつけて食べる。意外にもさっぱりしてうまみが強い。
    うな茶 四万十川水系広見川でとったうなぎを蒲焼きにし、これをご飯にのせて地元ならではの番茶をかける。[農家民宿 わらび 愛媛県北宇和郡松野町]
    じゅんじゅん(すき焼き)
    ウナギを開き、そぎ切りにしてすき焼き地で煮たもの。「じゅんじゅん」は滋賀県琵琶湖周辺ですき焼きのこと。小振りの6Pを使ったものが私好み。ちなみに滋賀県ではイサザ、ナマズでも「じゅんじゅん」を作る。
    半助豆腐
    大阪では頭をつけ、長いまま焼き、焼き上がったら頭を落とす。この落とした頭を「半助」という。これを焼き豆腐と煮たもの。煮た鍋。[大阪]
    かぶと揚げ
    福島県会津若松市「えびや」で食べた。骨が気にならないくらいにかりっと揚げたもの。
    う酒(うな酒、うなぎ酒)
    茶碗蒸しに使うような大振りの筒状をした器にウナギの蒲焼きを入れて熱燗をそそぐ。『うなぎの本』(松居魁 柴田書店 1977) ※斎藤茂吉は昭和10年(1935)1月5日に小見川(千葉県香取市小見川町)の林屋という宿で「夜ハ鰻酒ヲシテ飲む」。
    肝焼き 肝を串に刺し焼いたもの。焼いてウナギの蒲焼きのたれをつけて、また焼く。肝には甘味とうま味があり、いい食感も楽しめる。ほんのりとした苦みもいい。関東のウナギ屋では定番的な品書きのひとつだ。
    ひれ焼き(鰭焼き)
    割くときに切り取った鰭の部分を串にさして焼き、タレをつけて焼き上げたもの。関東周辺。
    うなぎ茶漬け 〈ご飯にウナギの蒲焼きをのせて、熱い煎茶をかけて、ふたをして数分むらす。蒸らし終わったらわさびなどを天盛りして食べる。〉『うなぎの本』(松居魁 柴田書店 1977) 市販の蒲焼きを使えば家庭でも簡単に作れる。また東京都や関東周辺のうなぎ屋では定番的な品書き。
    うな茶 愛媛県久万町(上浮穴郡久万高原町久万)では夏にとれるウナギを蒲焼きにして、これを「うな茶」にもする。ご飯を少し茶碗によそい、蒲焼きをのせ、またご飯をかぶせる。最後にまた蒲焼きをのせてお茶をそそぐ。これにふたをしてむらす。『聞き書 愛媛の食事』
    肝すい
    この割いたウナギの肝を吸いの種としたものを肝吸いという。

    関連コラム(郷土料理)

    記事のサムネイル写真ウナギのつく地名
    [小名木川] 旧中川から隅田川を結ぶ人工的に作った運河。もともとは「宇奈岐沢」といった。『うなぎ風物詩 う』(川口昇 東京書房 1978)・・・ 続きを開く
    記事のサムネイル写真川路聖謨が食べたうなぎのみそ漬け
    島根のすさみ』(天保11年 1840)に、川路聖謨(旗本。御目見以下の御家人から大名格の勘定奉行にまでなった)が佐渡奉行につく旅の途中、渋川(群馬県)で〈うな・・・ 続きを開く
    記事のサムネイル写真47都道府県ウナギの旅 01
    徳島県は古くは天然ウナギの供給地だったのではないかと思う。吉野川水系ではウナギをとっている人を見かけたことがあり、今でも河口域でとれた大型を中央市場で見かける・・・ 続きを開く

    加工品・名産品


    ニホンウナギの佃煮うなぎ佃煮 ウナギを甘辛く煮上げたもの。ウナギの産地や都内などで作られている。写真は『うなせん(千葉県香取市)』の見事な折。
    半助(はんすけ)半助(はんすけ) 関西では1尾のウナギを頭つきのまま開き、その長いまま数尾串打ちをして焼く。この焼き上がったものの頭を落として売る。豆腐と煮たものが「半助豆腐」。またこれをこのまま食べても美味しい。
    倶利伽羅串(くりからぐし)倶利伽羅串(くりからぐし) ウナギを裂いて左右を離し、縦3等分したものを串に刺したもの。不動明王の剣にからみつくヘビのようにうねるように刺すのでこの名がある。
    うなぎの八幡巻き八幡巻き 開いたウナギをゴボウに巻きつけて焼いたもの。大阪府、京都府などでは「うなぎ店」の定番的なもの。大阪市木津市場の川上商店では頭つきで、京都市錦市場『大國』では頭除いて巻いている。
    うなぎパイうなぎパイ 昭和36(1961)に生まれた浜松の銘菓。目新しさと「ウナギ=精力剤」で「夜のお菓子」というのが受けて、昭和40年には国内で知られた銘菓となっていたと記憶する。[春華堂 静岡県浜松市]

    釣り情報

    ミミズ、ヒル、小魚などをエサに穴釣り、延縄などで釣る。

    歴史・ことわざ・雑学など

    季語、歳時記 夏。
    土用丑の日
    夏土用(立秋の前の18日間)の丑の日に「う」がつくものを食べる。うどん、うり、うなぎなど。[日本各地]
    宣伝文 風来山人太田蜀山人(太田南畝 寛延2年~文政6 1749~1823)、平賀源内(享保13~安永8年 1728~1780)がさる鰻屋のために宣伝文「本日土用丑の日」を書いた。
    明和誌 明和誌に「近き頃寒中丑の日の紅をはき、土用に入り、丑の日に鰻を食す。寒暑とも家毎になす。安永、天明の頃より始まる」『なごや飲食夜話』(安田文吉 中日新聞社 2011)より二次的に。> 『明和誌』(白峯院著。文政5(1822)年序)
    ウナギ好き著名人
    斎藤茂吉: 子息茂太、宗吉の誕生日にもウナギを食べる。『アララギ』の選歌のときにもウナギ飯。ウナギがないと不機嫌になり作歌、勉強もできなかった。
    シーボルト: 文政9年(1826)、シーボルトが江戸に来たときに、土生玄硯(宝暦12〜嘉永1/1762〜1848)が〈上野山下にあった大和屋という古い鰻屋があって、その店の蒲焼きは型も中程で味も江戸随一と言われている。かれは、それをシーボルトの手土産に……〉。以来、フィリップ・フランツ・フォン・シーボルト(Philipp Franz Balthasar von Siebold 1796〜1866)はウナギ好きになった。注/二次的な資料[ふぉん・しいほるとの娘 吉村昭 新潮文庫]

    言語など
    〈久しく湿浸した薯蕷(やまのいも)が変じて鰻鱺とに化する場合がある、という。非情のものが友情のものとなるのであるが、これもまた必ずしも尽くのものがそうであるわけではない〉『和漢三才図会』(寺島良安 東洋文庫 平凡社 正徳2年 1712)
    鰻つなぎ 串を打った鰻の蒲焼きが小紋(着物・布の柄)となっている。寛政期には今と変わらない蒲焼きが作られていたことの証明になる。『小紋雅話』(山東京伝作・画 蔦屋重三郎 1790)
    宇治丸 宇治川はウナギの産地として有名。ここで作られた鮓、もしくは古風な丸焼き。
    和歌 奈良時代になった万葉集に大伴家持がよんだ「痩せたる人を嗤咲ふ歌(和歌)」に、
    石麿にわれ物申す 夏痩に良しというものぞ 鰻とりめせ
    痩す痩すも生けらばあらむを はたやはた 鰻を取ると川に流るな
    まむし 「出雲屋」のまむし:この記述はウナギを割いて現在のような蒲焼きの形にしたのは出雲、すなわち島根県だという説もある。宍道湖周辺でウナギが大量にとれた。これを大阪に出荷して広めたのがウナギ屋のはじめとの説もある。それで織田作之助の時代、すなわち昭和初期から戦後にかけては大阪でウナギ飯(まむし)とくると「出雲屋」とされ、またこの出雲屋大阪中に何軒もあったわけだ。『夫婦善哉』(織田作之助 ちくま日本文学全集)道頓堀相生橋東詰
    江戸前ウナギ 〈初夏から秋口にかけては大川(隅田川・ぼうずコンニャク注)の流れが東京湾に注ぐ品川あたりの産をよしとした。また時期によっては中川尻とか、江戸川口がうまいとされていた。〉とある。これに対して上流でとれるウナギはあまりうまくないとも。それと面白いのは銚子、利根川のウナギが秋から春にかけてうまいと記されていること。『明治商売往来』(仲田定之助 ちくま学芸文庫 明治時代の貴重な資料である)
    江戸前、旅うなぎ 〈江戸にては浅草川深川辺の産を江戸前とよびて賞す、他所より出すを旅うなぎと云う〉『物類称呼』(越谷吾山著 安永4/1775 解説/杉本つとむ 八坂書房 1976)
    四谷怪談 鶴屋南北の四谷怪談にウナギを長い銛のようなヤスで掻いてウナギをとるというのが出てくる。四谷怪談は文政8年(1825)。『芝居の食卓』渡辺保 朝日文庫
    鰻重・うな丼 「江戸中期の文化年間(1804〜17年)に、芝居の小屋が立て込んできたときに日本橋堺町(注:天保の改革で芝居小屋が浅草に移る前、日本橋は芝居小屋の建ち並ぶところであった)に、ウナギが大好きな大久保今助という金主(芝居興行の準備のための金貸)が住んでいた。当時ウナギの蒲焼きとご飯が別々に器に盛られていたのを、これでは蒲焼きが冷えてしまう。なんとか冷えないように工夫できないかと葺屋町のウナギ屋『大野屋』に丼の上に蒲焼きをのせてみてくれと頼む。これがうな丼誕生紀とする。
    島根のすさみ 天保11年(1840)、川路聖謨が佐渡奉行につく旅の途中、渋川で〈うなぎのみそ漬也。珍敷き事〉
    俚諺など
    串打ち三年 串打ち三年、割き五年、焼き一生。ウナギ職人として大成するのはこれほど難しいということ。
    ウナギ料理・うなぎ屋の現状
    静岡県 非常にウナギ屋の多い県。東は三島市、沼津市、浜松市などが有名。浜松市で入った店は地焼きだった。
    福井県 北潟湖、南の三方湖周辺に多い。湖でとれる天然ウナギもある。現在入った店を見る限り地焼きであるようだ。
    滋賀県 淡水魚を扱う店が多く、ほとんどの店でウナギが売られている。
    うなぎの筒切りの串焼き蒲焼き語源
    説1古くウナギは長い筒切りにして串に刺して塩焼きにした。この形がガマの穂ににていたので「ガマの穂焼き」が変化した。写真は筒切りにして真ん中に串打ちしたもの。植物のガマの穂に似ている。
    説2焼いたときの「かんばしい香り」から「かんばしい焼き」から変化。
    説3ウナギを焼いた時の色合いが「樺色(桜の樹皮)」だから。
    魔除け魔除け
    ウナギはぬるぬるしてつかもうとしてもつかめない。難に捕まらない(難を逃れる)として鬼門に向けてこの彫刻がある。[雷電神社群馬県板倉町]
    ウナギの絵馬うなぎの絵馬 京都市三嶋神社の神の使いは「牟奈岐(ウナギ)」で安産祈願、家内安全のためにウナギの絵馬を奉納する。[三嶋神社 京都府京都市東山区東大路通東]

    参考文献・協力

    協力/海源(築地場内)
    『日本産魚類検索 全種の同定 第二版』(中坊徹次編 東海大学出版会)、『湖魚と近江のくらし』(滋賀の食事文化研究会 サンライズ出版)、『うなぎの本』(松居魁 柴田書店 1977) 『萩原文庫4 萩原の四季と味』(はぎわら文庫編集委員会 岐阜県益田郡萩原町 1981)

    地方名・市場名

    カミシモ[上下]
    場所三重県伊勢市・松阪市、熊本県人吉市 サイズ / 時期頭部と尾 備考頭部と尾をつけた長いまま焼く地域は、焼き上げたあとに頭と尾を切り落とす。この地域では「上下」といいそれも販売している。 
    ハンスケ[半助]
    場所大阪府大阪市 サイズ / 時期頭部 備考大阪では頭をつけたまま蒸しの工程抜きで焼き上げる。仕上げに頭部を落とすが、この頭部だけを販売している。家庭などでそのまま温めて食べたり、「半助豆腐」にする。 
    オナギ
    場所徳島県美馬郡貞光町(現つるぎ町) 参考『貞光町史』 
    カブト[兜]
    場所東京都、千葉県、埼玉県 サイズ / 時期頭部 備考関東では生の状体で頭と尾の先を切り落とす。この頭の部分をいう。生の兜は串などに刺し、焼いて食べる。 
    ニホンウナギ
    場所標準和名 
    ウナギ
    場所関東、関西、福岡県久留米市など日本各地で一般的に 参考日比野友亮 
    ボッカ
    場所千葉県 備考千葉県で養殖ウナギで大きく育ちすぎたもの。 
    ボク
    場所静岡県浜名湖周辺 備考成長が早く大きくなりすぎて出荷できないサイズになったもの。棒杭、大木などを「ぼく」ということからついた。 
    シラスウナギ サイズ / 時期レプトケファルス 
    クロメ[黒目] サイズ / 時期ウナギの生態に変体したばかり 
    オオウナギ[大ウナギ] サイズ / 時期大きくなったもの 
    備考レプトケファルスを「シラスウナギ」、ウナギの生態に変体したばかりを「黒目」、大きくなったものを「大ウナギ」。 
    マウナギ ウジマル[宇治丸] アオウナギ
  • 主食材として「ニホンウナギ」を使用したレシピ一覧

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