体長60cmを超える。細長く棍棒を思わせ断面が楕円形。背中が褐色で腹側が銀白色。歯が非常に鋭い。尾鰭下葉(下)縁が黒い。胸鰭は腹鰭先端に届く。背鰭と尾鰭の間に脂鰭がある。[新潟県佐渡産 44cm SL・907g]
ワニエソの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)
-
珍魚度・珍しさ
★★★
がんばって探せば手に入る魚貝の物知り度
★★★★★
知っていたら学者級食べ物としての重要度
★★
地域的、嗜好品的なもの味の評価度
★★★★
非常に美味
分類
顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区正真骨下区円鱗上目ヒメ目エソ亜目エソ科マエソ属外国名
学名
Saurida wanieso Shindo and Yamada, 1972漢字・学名由来
漢字 鰐鱛、鰐狗母魚、鰐蛇頭魚、鰐九母魚、鰐恵曾 Wanieso
由来・語源
〈項肩亞目エソ科マエソ属ワニエソ(新称) Saurida tumbil (BLOCH) (学名はSaurida tumbil (Bloch, 1795) /Greater lizardfish のことで誤同定)〉。『日本産魚類検索』(岡田彌一郎、松原喜代松 三省堂 初版1936)に新称とある。
鰐(ワニ)を思わせるエソの意味。「エソ」に「マ」、「トカゲ」、「ワニ」などをつけたのは分類をすすめるうちにマエソ属が数種にわけられることがわかり、区別するためにつけられたものと思われる。
エソについて物類称呼 恵曾。〈えそは蛇の化したるもの也と 又九州にて がまがえるの化したる物也とも〉『物類称呼』(越谷吾山著 安永4/1775 解説/杉本つとむ 八坂書房 1976)
漢字 狗母魚、狗尾魚、九母魚
由来・語源 エソ類の総称。「エソ」は田中茂穂をして一般的な名称としている。
意味は大和朝廷のころ、同朝廷に和しない種族を「ヒナ」と呼び、また「エミシ、エミジ、エソ、エゾ」と呼んでいた。「エミシ」、「エミジ」とは「見るに堪えない、見ると嫌悪感のするもの」という意味。「エミジ」と「エソ」は同じ意味なので、「醜悪な感じのする魚」の意味。漢字「狗」も同様に「つまらない、取るに足りない」の意味がある。(『新釈魚名考』、大言海、大漢和などを参考にする)は「見るに堪えない、見ると嫌悪感のするもの」という意味。「エミジ」と「エソ」は同じ意味なので、「醜悪な感じのする魚」の意味。漢字「狗」も同様に「つまらない、取るに足りない」の意味がある。(『新釈魚名考』、大言海、大漢和などを参考にする)地方名・市場名 ?
生息域
海水魚。浅い海域からやや深場の砂泥底。
相模湾〜九州の太平洋沿岸、[新潟県佐渡]、若狭湾〜九州の日本海・東シナ海沿岸、瀬戸内海。東シナ海大陸棚、朝鮮半島西岸・南岸、済州島、スマトラ島南岸。生態
ー基本情報
温かい海域に普通に見られるもので、底曳き網などでまとまって揚がる。日本各地の定置網などで1mを肥えそうな非常に大きな個体が見つかるが、本種である可能性が高い。50cm前後くらいまではマエソとほとんど同じで区別されずに流通している可能性もある。
主に練り製品の原料になるが、希に鮮魚としても流通する。食べ方さえ知っていれば非常においしい魚だ。奈良県など一部では好んで鮮魚を食べている。
珍魚度 珍しい魚ではないが、ほとんど流通しない。懸命に探さないと見つからない。水産基本情報
市場での評価 大型個体以外はマエソと区別されていない可能性大。主に練り製品の材料。鮮魚としては安い。
漁法 底曳き網、定置網
産地 新潟県など選び方
触ってしっかり張りのあるもの。退色して白っぽいものは古い。味わい
旬は春から初夏。
小さなものは加工品にしかならないが大型は非常に美味。
鱗は薄く取りやすい。皮は強い。骨は細くあまり硬くない。旨みの強い白身。小骨が多いのだけが残念。大型は骨切りをした方が食べやすいがしなくても思ったほどわずらわしくない。
皮に独特の風味があって美味。卵巣もとてもおいしい。栄養
ー危険性など
ー食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)
ワニエソの料理・レシピ・食べ方/生食(刺身、落とし))、揚げる(天ぷら、薩摩揚げ、唐揚げ)、焼く(塩焼き、若狭焼き、皮ちくわ、真子焼き)、汁(みそ汁、潮汁、だんご汁)、煮る(煮つけ)クリックで閉じますワニエソの刺身
ワニエソの刺身 尾鰭に近い部分は小骨がなく、しかも頭部に近い部分と比べると味がある。練り製品を作る職人さんもこの部分だけは刺身で食べている。今回のものは大型なので尾柄部から10cm以上小骨がなかった。水洗いして三枚に下ろし、尾鰭に近い部分を切り取って皮を引く。これを刺身状に切る。
思った以上に脂がのっていて、口溶け感がある。身にうま味があり、食感も強くて非常にうまい。
ワニエソの落とし(ちり) ハモ料理の「落とし」を同じように骨の強い本種でやってみた。水洗いして三枚に下ろす。腹骨を取り。身側から皮の方に包丁を入れていく。皮目に薄らと切れ目がつくくらいがいいが、ハモよりも皮は弱い。これを塩水をことこと煮立たせた中に落としていく。身が開いたら氷水に落とす。水分をきり、梅肉醤油、わさび醤油などで食べる。クリックで閉じますワニエソの落とし
ワニエソの天ぷら 水洗いして三枚に下ろす。腹骨を取り、身側から皮に向けて骨切りをする。小麦粉をまぶして、衣をつけて高温で揚げる。さくっとした香ばしさの中に白身のうまさが口の中に広がる。非常に味わい深い。クリックで閉じますワニエソの天ぷら
ワニエソの天ぷら(薩摩揚げ) 小振りのものは三枚に下ろして、スプーンなどで身をかき出す。すり鉢に、少量の昆布だし、塩、しょうがの絞り汁などを加えながら擂る。身が重く感じたら昆布だしもしくは水を足すといい。平たい団子状にまとめてあげる。エソの身にはうま味があって、繊維が細やかである。ほどよい足があり非常においしい。クリックで閉じますワニエソの薩摩揚げ
ワニエソの唐揚げ 水洗いして三枚に下ろす。身の方から包丁を入れて骨切りをする。これにていねいに片栗粉をまぶしてじっくりと二度揚げにする。多少粗く骨切りしても二度揚げすることで、骨は気にならなくなる。さくさくと香ばしくてとてもおいしい。クリックで閉じますワニエソの皮ちくわ 四国徳島や愛媛県の名物に皮ちくわがある。これは自宅でも簡単にできる。三枚に下ろして身をスプーンなどでかき出す。皮についた骨はていねいにかき落としておく。身はすり鉢ですり、塩を加えてする。塩を加えるとすりこぎが重くなるので昆布だしか水を少量加える。これをまとめて串に棒状につけていく。皮を巻いて焼き上げる。クリックで閉じますワニエソの皮ちくわ
ワニエソの若狭焼き 水洗いして三枚に下ろす。血合い骨にそって切れ目を入れて振り塩をする。1時間程度寝かせてじっくり焼き上げる。初夏の個体は脂があるため身から脂が染み出してきて、表面が揚げたようになる。仕上げに酒を塗りながら焼き上げる。エソ類の小骨は比較的太く身と一体化しにくく取りやすい。思ったほど煩わしくない。エソは非常に身に味があり、しかも豊潤で柔らかい。クリックで閉じますワニエソの若狭焼き
ワニエソの腹身の塩焼き 水洗いして内臓を包んだ部分を三角形に切り取る。この部分には小骨がない。振り塩をして1時間以上寝かせてじっくりと焼き上げる。淡泊なはずの身のうち側から脂が染み出してきて泡状に沸き立つ。表面は非常に香ばしく、身は味わい深い。クリックで閉じますワニエソの腹身の塩焼き
ワニエソの真子塩焼き 真子の味は魚の中でもトップクラスである。水洗いしてていねいに真子を取り出す。ざっと洗って水分をきり、振り塩をしてビニールなどに入れて半日くらい寝かせる。出て来た水分を拭き取り、じっくりと焼き上げる。ほくほくとしてほんのり甘く、ほんの少し渋味を伴ったうま味がある。ご飯に合う。クリックで閉じますワニエソと野菜のおかずだき 体幹部分を骨切りして、野菜と一緒に甘辛く総菜風に似たもの。水洗いして三枚に下ろし腹骨を取る。身から皮に向かって骨切りをする。これを適当にきり、湯通しして身を開かせて冷水に取る。水分をよくきり野菜と一緒に酒・砂糖・醤油・水でこってり甘辛く煮る。クリックで閉じますワニエソの兜煮 かま(胸鰭周辺)と頭部には小骨がない。水洗いして頭部を梨子割りにする。湯通しして冷水に落として残った鱗やぬめりを流す。これを酒・醤油・水であっさりと煮つける。砂糖、みりんなどで甘辛く煮てもいい。身離れがよく、身に味がある。クリックで閉じます好んで食べる地域・名物料理
加工品・名産品
釣り情報
ー歴史・ことわざ・雑学など
ー参考文献・協力
協力/伊東正英さん(鹿児島県南さつま市笠沙)
『日本産魚類検索 全種の同定 第二版』(中坊徹次編 東海大学出版会)、『日本産魚類検索』(岡田彌一郎、松原喜代松 三省堂 初版1936、第二版1943)、『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年)、『新釈魚名考』(榮川省造 青銅企画出版)、『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂)、『聞書き 奈良の食事』(農文協)、『大和の食文化』(富岡典子 奈良新聞社)