50cm SL 以上になる。丸い鱗がざらざらして全体に茶色、断面は四角形に近く細長い。口が大きく非常に歯が鋭い。頭部は一見蛇を思わせる。胸鰭は腹鰭先端に届く。背鰭と尾鰭の間に脂鰭がある。背鰭と尾鰭の間に脂鰭がある。尾鰭下縁は白い。
マエソの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)







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珍魚度・珍しさ
★★★
がんばって探せば手に入る魚貝の物知り度
★★★★
知っていたら達人級食べ物としての重要度
★★★★
重要味の評価度
★★★
美味
分類
顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区正真骨下区円鱗上目ヒメ目エソ亜目エソ科マエソ属外国名
学名
Saurida macrolepis Tanaka, 1917漢字・学名由来
漢字 真狗母魚、蛇頭魚、真九母魚、真恵曾 Meso
由来・語源 本種に「真」がついたのはエソの中でももっとも水揚げ量が多いためだ。マエソ属3種の中でもっとも浅い海域にいて古くから漁業対象だったためでもある。
別種に「トカゲ」、「ワニ」などをつけたのは分類をすすめるうちにマエソ属が数種にわけられることがわかり、区別するためにつけられたもの。
エソについて物類称呼 恵曾。〈えそは蛇の化したるもの也と 又九州にて がまがえるの化したる物也とも〉『物類称呼』(越谷吾山著 安永4/1775 解説/杉本つとむ 八坂書房 1976)
漢字 狗母魚、狗尾魚、九母魚
由来・語源 エソ類の総称。「エソ」は田中茂穂をして一般的な名称としている。
意味は大和朝廷のころ、同朝廷に和しない種族を「ヒナ」と呼び、また「エミシ、エミジ、エソ、エゾ」と呼んでいた。「エミシ」、「エミジ」とは「見るに堪えない、見ると嫌悪感のするもの」という意味。
「エミジ」と「エソ」は同じ意味なので、「醜悪な感じのする魚」の意味。漢字「狗」も同様に「つまらない、取るに足りない」の意味がある。
(『新釈魚名考』、大言海、大漢和などを参考にする)
以上はむりやり意味づけしたものだ、エソはあくまでも一次的魚名だと考えている。Tanaka
田中茂穂(Shigeho Tanaka 明治11-昭和49 1878-1974 高知県)。東京帝国大学にて魚類の分類を始める。日本近代魚類学の父。170種前後の新種を記載。献名された種も少なくない。地方名・市場名
生息域
海水魚。水深100メートルより浅い砂地に生息。
千葉県〜九州南岸の太平洋沿岸、若狭湾〜九州南岸の日本海、東シナ海、瀬戸内海。東シナ海大陸棚。
インド〜西太平洋。生態
基本情報
温かい海域の浅場で普通である。蒲鉾原料として重要な本種、ワニエソ、トカゲエソの中ではもっとも浅い海域で揚がる。
主に関西、西日本でかまぼこや竹輪、天ぷら(さつま揚げ)に使われる。底曳き網などで揚がるが、高級すり身原料として重要なものだが鮮魚としてはほとんどお目にかかれない。和歌山県の南蛮焼きなど名物も多々ある。干物になることも多く、知る人ぞ知る美味な魚である。
奈良県のように鮮魚としても好んで焼き物などで食べていた地域もある。
珍魚度 まったく珍しい魚ではないが、ほとんど流通しない。意外にがんばって探さないと見つからない。水産基本情報
市場での評価 鮮魚としては安く、ほとんど入荷を見ない。一般に練り製品などの加工用。
漁法 底引き網
産地 長崎県、愛媛県、鹿児島県選び方
ー味わい
旬は春から初夏。
鱗は薄くて取りやすい。皮はやや厚めで強い。骨は細く長く無数にある皮は独特の風味がありうま味も強い。
透明感のある白身でやや水分が多いが熱を通しても強く締まることはない。いいだしが出る。
卵巣は美味。栄養
ー危険性など
ー食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)
マエソの料理・レシピ・食べ方/焼く(塩焼き、つけ焼き)、練り物(竹輪、薩摩揚げ、だんご)、汁(みそ汁、潮汁、だんご汁)、煮る(煮つけ)、揚げる(唐揚げ)クリックで閉じますマエソの蒲鉾
マエソの蒲鉾 水洗いして内臓を取り、皮は取り分けておく。三枚に下ろして身をかき出しすり鉢ですり、酒、水溶き片栗粉、塩、砂糖を加えてよく寐る。竹などにつけて焼き上げる。皮を巻き焼き上げてもいい。
好んで食べる地域・名物料理
だんご、ハンバーグ エソ類はミンチにしてだんごにしたり、ハンバーグにしていた。60歳代から80歳代の漁師さん。[三重県鳥羽市小浜]クリックで閉じますえそのつけ焼き
えそのつけ焼き(えその塩焼き)ワニエソと共通 奈良県奈良盆地、大和高原、奈良平野では秋祭りには必ずエソを食べる。このため秋祭りを一名「えそ祭」ともいう。エソの切り身に砂糖としょうゆをつけて焼く。じっくりと焦げないように焼き上げると皮が香ばしくうま味が有り、身はしっとりと豊潤に出来上がって美味。『奈良の食事』(農文協)、『大和の食文化』(富岡典子 奈良新聞社)
加工品・名産品
すり身 高級練り製品の原料になる。しばしばマエソと一緒に、またワニエソだけで作られる。クリックで閉じますマエソのすり身作り風景
「すり身作り」。愛媛県宇和島市は練り製品で有名。特に高級蒲鉾などはマエソ、グチなどで作る。マエソの頭部と内臓を取り、骨を除去してすり身に、これを「焼きちくわ」、「蒲鉾」にする。[薬師神かまぼこ 愛媛県宇和島市]
エソを原料とした蒲鉾類。国内などで広く流通するものとは違い、底曳き網などで揚がった地魚をすり身にして作る。特にマエソ、ワニエソ、トカゲエソなどで作ったものは最上級品である。[薬師神かまぼこ 愛媛県宇和島市]クリックで閉じますエソを原料とした蒲鉾類
えその皮ちくわ 竹にワニエソとマエソの皮を巻きあげて焼いたもの。現在は練り製品を下ろすときに機械を使うので、なかなか皮の利用が難しい。それをわざわざ再現してくれたもの。薄く切り、ポン酢などで食べるのだがほどよい弾力と豊かなうま味で最上級の味である。[薬師神かまぼこ 愛媛県宇和島市]クリックで閉じますえそ皮ちくわ 練り製品などを作るときに出たマエソ類の皮を竹に巻きつけて焼いたもの。冷やして薄く切り、そのうま味と食感を楽しむもの。今や非常に貴重なものだ。[木村蒲鉾店 愛媛県松山市、八水蒲鉾 愛媛県八幡浜市]クリックで閉じますえそ皮ちくわ
えそのすり身 西日本各地の鮮魚店などで作られているもの。マエソなどをすり身にして、そのまま売られていることが多い。非常に上質で、天ぷら(薩摩揚げ)にしたり、だんごにする。[五後藤魚店/愛媛県川之江]クリックで閉じます釣り情報
ー歴史・ことわざ・雑学など
『てんやわんや』の皮竹輪(皮ちくわ) 『てんやわんや』は獅子文六(岩田豊雄)が妻の郷里である愛媛県宇和郡岩松町(現宇和島市津島町)での体験をもとに書いた小説。主人公犬丸順吉が相生町の名士のひとり田辺民平に馳走してもらうのが皮竹輪。「エソの皮や筋で造ったこの皮竹輪は、蒲鉾食いの大通人をして満足させる、日本無比の超特作的逸品である」。参考文献・協力
協力/伊東正英さん、金栄丸(和歌山県和歌山市雑賀崎)
『日本産魚類検索 全種の同定 第二版』(中坊徹次編 東海大学出版会)、『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年)、『新釈魚名考』(榮川省造 青銅企画出版)、『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂)、『聞書き 奈良の食事』(農文協)、『大和の食文化』(富岡典子 奈良新聞社)地方名・市場名 ?