ワニエソ

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体長60cmを超える。細長く棍棒を思わせ断面が楕円形。背中が褐色で腹側が銀白色。歯が非常に鋭い。尾鰭下葉(下)縁が黒い。胸鰭は腹鰭先端に届く。背鰭と尾鰭の間に脂鰭がある。[新潟県佐渡産 44cm SL・907g]
体長60cmを超える。細長く棍棒を思わせ断面が楕円形。背中が褐色で腹側が銀白色。歯が非常に鋭い。尾鰭下葉(下)縁が黒い。胸鰭は腹鰭先端に届く。背鰭と尾鰭の間に脂鰭がある。[新潟県佐渡産 44cm SL・907g]
体長60cmを超える。細長く棍棒を思わせ断面が楕円形。背中が褐色で腹側が銀白色。歯が非常に鋭い。尾鰭下葉(下)縁が黒い。胸鰭は腹鰭先端に届く。背鰭と尾鰭の間に脂鰭がある。[新潟県佐渡産 44cm SL・907g]
体長60cmを超える。細長く棍棒を思わせ断面が楕円形。背中が褐色で腹側が銀白色。歯が非常に鋭い。尾鰭下葉(下)縁が黒い。胸鰭は腹鰭先端に届く。背鰭と尾鰭の間に脂鰭がある。[相模湾小田原産 20cm SL・81g]
体長60cmを超える。細長く棍棒を思わせ断面が楕円形。背中が褐色で腹側が銀白色。歯が非常に鋭い。尾鰭下葉(下)縁が黒い。胸鰭は腹鰭先端に届く。背鰭と尾鰭の間に脂鰭がある。[画像は若狭湾]
口は開けると非常に大きく犬歯が多数並び危険である。
口は開けると非常に大きく犬歯が多数並び危険である。
尾鰭下葉(下)縁が黒い。
胸鰭は腹鰭先端に届く。
珍魚度・珍しさ★★★
がんばって探せば手に入る
魚貝の物知り度 ★★★★★
知っていたら学者級
食べ物としての重要度 ★★
地域的、嗜好品的なもの
味の評価度 ★★★★
非常に美味
分類
顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区正真骨下区円鱗上目ヒメ目エソ亜目エソ科マエソ属
外国名
Wanieso lizardfish
学名
Saurida wanieso Shindo and Yamada, 1972
漢字・学名由来

漢字 鰐鱛、鰐狗母魚、鰐蛇頭魚、鰐九母魚、鰐恵曾 Wanieso
由来・語源
〈項肩亞目エソ科マエソ属ワニエソ(新称) Saurida tumbil (BLOCH) (学名はSaurida tumbil (Bloch, 1795) /Greater lizardfish のことで誤同定)〉。『日本産魚類検索』(岡田彌一郎、松原喜代松 三省堂 初版1936)に新称とある。
鰐(ワニ)を思わせるエソの意味。「エソ」に「マ」、「トカゲ」、「ワニ」などをつけたのは分類をすすめるうちにマエソ属が数種にわけられることがわかり、区別するためにつけられたものと思われる。

エソについて
物類称呼 恵曾。〈えそは蛇の化したるもの也と 又九州にて がまがえるの化したる物也とも〉『物類称呼』(越谷吾山著 安永4/1775 解説/杉本つとむ 八坂書房 1976)
漢字 狗母魚、狗尾魚、九母魚
由来・語源 エソ類の総称。「エソ」は田中茂穂をして一般的な名称としている。
意味は大和朝廷のころ、同朝廷に和しない種族を「ヒナ」と呼び、また「エミシ、エミジ、エソ、エゾ」と呼んでいた。「エミシ」、「エミジ」とは「見るに堪えない、見ると嫌悪感のするもの」という意味。「エミジ」と「エソ」は同じ意味なので、「醜悪な感じのする魚」の意味。漢字「狗」も同様に「つまらない、取るに足りない」の意味がある。(『新釈魚名考』、大言海、大漢和などを参考にする)は「見るに堪えない、見ると嫌悪感のするもの」という意味。「エミジ」と「エソ」は同じ意味なので、「醜悪な感じのする魚」の意味。漢字「狗」も同様に「つまらない、取るに足りない」の意味がある。(『新釈魚名考』、大言海、大漢和などを参考にする)

地方名・市場名
エソ
参考荷 場所新潟県佐渡 
ワニコ
参考文献 場所秋田県男鹿 
イス イソ イソギス エソギス エンギス オオヨソ オバナ オホエソ キシ クサエソ シチベイ シロエソ タイコノバイ タイコノバチ[太鼓の撥] タイコノブチ タイコノボ[太鼓の棒] タイコノボオ[太鼓の棒] チンバエソ ドラブチソウ ナバナ ハナトゴ ヘエ ホラエソ モドロ ヨソ ヨソウオ
備考マエソなどと共通。 参考文献 場所日本各地。 

概要

生息域

海水魚。浅い海域からやや深場の砂泥底。
相模湾〜九州の太平洋沿岸、[新潟県佐渡]、若狭湾〜九州の日本海・東シナ海沿岸、瀬戸内海。東シナ海大陸棚、朝鮮半島西岸・南岸、済州島、スマトラ島南岸。

生態

基本情報

温かい海域に普通に見られるもので、底曳き網などでまとまって揚がる。日本各地の定置網などで1mを肥えそうな非常に大きな個体が見つかるが、本種である可能性が高い。50cm前後くらいまではマエソとほとんど同じで区別されずに流通している可能性もある。
主に練り製品の原料になるが、希に鮮魚としても流通する。食べ方さえ知っていれば非常においしい魚だ。奈良県など一部では好んで鮮魚を食べている。
珍魚度 珍しい魚ではないが、ほとんど流通しない。懸命に探さないと見つからない。

水産基本情報

市場での評価 大型個体以外はマエソと区別されていない可能性大。主に練り製品の材料。鮮魚としては安い。
漁法 底曳き網、定置網
産地 新潟県など

選び方・食べ方・その他

選び方

触ってしっかり張りのあるもの。退色して白っぽいものは古い。

味わい

旬は春から初夏。
小さなものは加工品にしかならないが大型は非常に美味。
鱗は薄く取りやすい。皮は強い。骨は細くあまり硬くない。旨みの強い白身。小骨が多いのだけが残念。大型は骨切りをした方が食べやすいがしなくても思ったほどわずらわしくない。
皮に独特の風味があって美味。卵巣もとてもおいしい。

栄養

危険性など

食べ方・料理法・作り方

ワニエソの料理・レシピ・食べ方/生食(刺身、落とし))、揚げる(天ぷら、薩摩揚げ、唐揚げ)、焼く(塩焼き、若狭焼き、皮ちくわ、真子焼き)、汁(みそ汁、潮汁、だんご汁)、煮る(煮つけ)
ワニエソの刺身 尾鰭に近い部分は小骨がなく、しかも頭部に近い部分と比べると味がある。練り製品を作る職人さんもこの部分だけは刺身で食べている。今回のものは大型なので尾柄部から10cm以上小骨がなかった。水洗いして三枚に下ろし、尾鰭に近い部分を切り取って皮を引く。これを刺身状に切る。
思った以上に脂がのっていて、口溶け感がある。身にうま味があり、食感も強くて非常にうまい。

ワニエソの落とし(ちり) ハモ料理の「落とし」を同じように骨の強い本種でやってみた。水洗いして三枚に下ろす。腹骨を取り。身側から皮の方に包丁を入れていく。皮目に薄らと切れ目がつくくらいがいいが、ハモよりも皮は弱い。これを塩水をことこと煮立たせた中に落としていく。身が開いたら氷水に落とす。水分をきり、梅肉醤油、わさび醤油などで食べる。
ワニエソの天ぷら 水洗いして三枚に下ろす。腹骨を取り、身側から皮に向けて骨切りをする。小麦粉をまぶして、衣をつけて高温で揚げる。さくっとした香ばしさの中に白身のうまさが口の中に広がる。非常に味わい深い。
ワニエソの天ぷら(薩摩揚げ) 小振りのものは三枚に下ろして、スプーンなどで身をかき出す。すり鉢に、少量の昆布だし、塩、しょうがの絞り汁などを加えながら擂る。身が重く感じたら昆布だしもしくは水を足すといい。平たい団子状にまとめてあげる。エソの身にはうま味があって、繊維が細やかである。ほどよい足があり非常においしい。
ワニエソの唐揚げ 水洗いして三枚に下ろす。身の方から包丁を入れて骨切りをする。これにていねいに片栗粉をまぶしてじっくりと二度揚げにする。多少粗く骨切りしても二度揚げすることで、骨は気にならなくなる。さくさくと香ばしくてとてもおいしい。
ワニエソの皮ちくわ 四国徳島や愛媛県の名物に皮ちくわがある。これは自宅でも簡単にできる。三枚に下ろして身をスプーンなどでかき出す。皮についた骨はていねいにかき落としておく。身はすり鉢ですり、塩を加えてする。塩を加えるとすりこぎが重くなるので昆布だしか水を少量加える。これをまとめて串に棒状につけていく。皮を巻いて焼き上げる。
ワニエソの若狭焼き 水洗いして三枚に下ろす。血合い骨にそって切れ目を入れて振り塩をする。1時間程度寝かせてじっくり焼き上げる。初夏の個体は脂があるため身から脂が染み出してきて、表面が揚げたようになる。仕上げに酒を塗りながら焼き上げる。エソ類の小骨は比較的太く身と一体化しにくく取りやすい。思ったほど煩わしくない。エソは非常に身に味があり、しかも豊潤で柔らかい。
ワニエソの腹身の塩焼き 水洗いして内臓を包んだ部分を三角形に切り取る。この部分には小骨がない。振り塩をして1時間以上寝かせてじっくりと焼き上げる。淡泊なはずの身のうち側から脂が染み出してきて泡状に沸き立つ。表面は非常に香ばしく、身は味わい深い。
ワニエソの真子塩焼き 真子の味は魚の中でもトップクラスである。水洗いしてていねいに真子を取り出す。ざっと洗って水分をきり、振り塩をしてビニールなどに入れて半日くらい寝かせる。出て来た水分を拭き取り、じっくりと焼き上げる。ほくほくとしてほんのり甘く、ほんの少し渋味を伴ったうま味がある。ご飯に合う。
ワニエソと野菜のおかずだき 体幹部分を骨切りして、野菜と一緒に甘辛く総菜風に似たもの。水洗いして三枚に下ろし腹骨を取る。身から皮に向かって骨切りをする。これを適当にきり、湯通しして身を開かせて冷水に取る。水分をよくきり野菜と一緒に酒・砂糖・醤油・水でこってり甘辛く煮る。
ワニエソの兜煮 かま(胸鰭周辺)と頭部には小骨がない。水洗いして頭部を梨子割りにする。湯通しして冷水に落として残った鱗やぬめりを流す。これを酒・醤油・水であっさりと煮つける。砂糖、みりんなどで甘辛く煮てもいい。身離れがよく、身に味がある。
ワニエソの真子煮 産卵期は夏だと思われる。5月後半から7月初旬の個体は真子を抱えている。水洗い時にとりだし、ていねいに洗う。水分をきり、適当に切っておく。鍋に醤油・酒・みりん・水を煮立たせて、短時間煮る。ワニエソの真子の味わいは無類だ。
ワニエソの肝と胃袋の煮つけ 肝と胃袋は水洗い時に取り分けて置く。胃袋は裂いてていねいに洗う。鍋に醤油・砂糖・酒・水を煮立たせて水分をよくきった胃袋と肝をさっと煮る。煮すぎると胃袋が硬くなる。肝の濃厚なうま味と胃袋の食感が楽しめる。

好んで食べる地域・名物料理

エソ類(マエソ、トカゲエソ、ワニエソ)を好んで食べていた地域は、奈良県以外には確認していない。

えそ焼き(マエソと共通) 塩焼きにしたり、素焼きにしたりした。ともにしょうがしょうゆなどで食べる。日常的にも食べるもので、エソは数等分切り売られていたという。ただし最近では(2016年12月現在)スーパーにもエソはなく、食べる人もほとんどいないという。[奈良県橿原市など。2016年12月07日9時45分、11時20分(大和郡山、橿原宮)]
えそのつけ焼き(えその塩焼き)マエソと共通 奈良県奈良盆地、大和高原、奈良平野では秋祭りには必ずエソを食べる。このため秋祭りを一名「えそ祭」ともいう。エソの切り身に砂糖としょうゆをつけて焼く。つけ焼き。奈良の食事』(農文協)、『大和の食文化』(富岡典子 奈良新聞社)

加工品・名産品

マエソ、トカゲエソ、ワニエソは高級練り製品の原料になる。しばしばマエソと一緒に、また単体で原料となる。

えその皮ちくわ 竹にワニエソとマエソの皮を巻きあげて焼いたもの。現在は練り製品を下ろすときに機械を使うので、なかなか皮の利用が難しい。それをわざわざ再現してくれたもの。薄く切り、ポン酢などで食べるのだがほどよい弾力と豊かなうま味で最上級の味である。[薬師神かまぼこ 愛媛県宇和島市]
エソの開き干し 鹿児島県西岸ではマエソとワニエソともに盛んに開き干しにする。残っていた尾鰭から同定する。意外に小骨が気にならず、皮目の風味が生きていて美味。鹿児島県日置市『江口蓬莱館』。

釣り情報

歴史・ことわざなど