初夏のアオダイはかけがえのない味

アオダイの刺身は新江戸前の味


息苦しいくらいに暑く、窓をしめ、カーテンを引いているので、エアコンで室内温度的には快適であるが、定期的に鬱鬱とした気分に襲われる。
日日(にちにち)、魚まみれだけど、こんなときこそ旬のよろこびを堪能したいものだと思っているとき、目の前にあるのが白いご飯と、旬真っ只中のアオダイの刺身なのである。
これも幸せと言えば幸せやも……。
アオダイの刺身はあまりにもストレートにうますぎるので文字に出来ない、そこがもどかしい。
東京都では昔から、もちろんプロの間では、だが人気のある魚だ。
実際、一度食べてみたらまた使いたくなるし、食べたくなる魚だと思う。

前よりも後ろが断然うまいなんて


その上、今回、驚くべきことに気がついた。
頭部に近い部分以上に尾の際の方が、うまいのだ。
脂がたっぷり乗っていて、口溶け感がありながら強い食感が心地よい。
水産生物をこつこつと調べている、ということは美味の発見の連続でもある。

赤こそがおいしい色だったが、今や青こそが美味の証となる


八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産に行ったら、伊豆諸島の西側にある銭州から来たアオダイが並んでいる。昨年はアオダイの仲間(アオダイ属)のウメイロラッシュにわいたが、今年はアオダイが主流なのやも知れぬ。
それにしても釣り名人、クマゴロウはうまい魚ばかり釣ってくる。
江戸時代の江戸前は江戸時代半ばまではせいぜい現在の隅田川河口域の江東区猟師町(深川や佐賀町)から品川あたりまでだったが、じょじょに広がって行く。明治時代になると上総も、川崎も横浜も江戸前になる。ついでに言えば昭和になると千葉県下総や神奈川県三浦半島東京湾側も江戸前に組み込まれる。江戸前=東京湾となったのだ。
今現在はどうか、羽田・品川、江東区から南下して、伊豆諸島、小笠原も江戸前といっていいだろう。アオダイはそんな新江戸前の魚のひとつである。
アオダイは伊豆諸島・小笠原諸島に多いので早くから東京でよく食べられ、昔から高級白身として人気があった。
余談になるがアオダイは鹿児島県や沖縄県でも揚がる。東京都は鹿児島県や沖縄県のような海があるのだ。
ハズレがない魚で腐っても鯛というが、腐った鯛は食べられないが、アオダイは食べられそうだからすごい。
ちなみに昔は鯛(マダイ)のタイ科が魚の上位にあったが、今やアオダイの仲間であるフエダイ科が上位を占めつつある。
さて、1㎏弱を連れ帰り、急いで下ろす。
保ちのいい魚なので本当は急ぐ必要はないのだが、朝ご飯をアオダイの刺身定食と生きたかったためだ。
三枚に下ろして、腹骨・血合い骨を取り、皮を引いて刺身にする。
盛り付けはシンプルに。


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