チダイの塩焼きは冷めた方が好き

尾頭つきの塩焼きはサイズが重要だ

チダイ

八王子総合卸売協同組合、マル幸にで新潟県佐渡産のチダイがきていた。チダイという標準和名は関東ではほとんど使われていない。江戸時代、明治時代には「小滝鯛」、日本橋の魚河岸では、現在若い個体にだけに使われている「春日子鯛(かすごだい)」が、成魚のことでもあったようだ。そして今、関東では「花鯛(ハナダイ)」呼ばれることが多い。
明治初年時でも比較的一般的ではなかった呼び名、「血鯛(チダイ)」を標準和名として採用した理由は不明だが、魚類学をやっていないとわかりにくいが、属の段階になるとわかりやすかったりする。
古くから塩焼き用の魚とされていた。明治時代から1970年以前(関東大震災、第二次世界大戦とともに文化の大破壊が行われた年)の書籍を読んでいると、近海で揚がる魚はそれぞれ用途が決まっていたことがわかる。1980年前後、世田谷区桜新町の魚屋で買ったとき「焼くだけにしようか?」と言われたことがある。
そのチダイの定番とされる塩焼きを作る。
特別な器具がないので今回の体長25cm・415gは丸のまま焼けるギリギリのラインである。

焼き上がりもうまいけど、冷めた方が味があると思う

チダイの塩焼き

買って来た当日に水洗いをして水分をよくきり、振り塩をしてビニール袋などに入れて寝かせる。
これを翌日、ふたたび水分を拭き取って焼き上げる。
自宅で丸のままの魚を焼くのは大変である。じっくり時間をかけてなんとか均質に焼き上げる。
ホタルジャコ科のアカムツなど脂の強いものはどちらかというと焼きたてがうまいが、あくまでボクの考えではタイ科の魚は冷えた方がうまい。
焼き上がりを少しつまんで、そのまま寝かせて気が向くままに食い散らかす。この野放図な食べ方がいいのである。
チダイのうま味は皮にある。だから箸で食っていては真味はわかりはしない。手でむしり取っては食らう。これで宮城県大崎市の「あたごのまつ」を常温でやっていると深夜の淋しさが忘れられる。
頭の中は江戸時代の越後国の塩沢にあって、疲れると塩焼きをつまみ、ちびりちびり酒を飲むというのがいい。

塩焼きでだし茶漬け

チダイのだし茶漬け

鯛の丸焼きは一度で食べきってはいけない。
翌朝ご飯は、鯛茶にする。
茶漬けにはお茶かけと、だしかけがあるが、ここではカツオ節出しに酒塩の八方だしをかけた。
深夜に文字を追いかけているので、朝の腹が重い。
そこにさらさらと流し込む、チダイの塩焼きとだしと飯が一日の精気を養うのである。

焼き直してなおうまいのがチダイの塩焼きの真骨頂

チダイの塩焼きの焼き直し

翌深夜は焼き直して、「あたごのまつ」を振りかけ山椒をふる。またまた「あたごのまつ」をやる。
丸のままの魚を買うと言うことがいかに安いものか、わかってもらえるだろうか。
ちなみに頭と中骨は他日別料理にして楽しむつもりだ。


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