体長40cmを超える。背鰭から吻にかけてなだらかな曲線を描く。鰓蓋下の部分には鱗がない。唇は薄く、歯が突出しない。背は黒いか青みがかった黒、腹は白いものの斑紋はない。鰓蓋の後縁は黒くないか、うっすらと黒い。尾柄部はクロメジナと比べると幅がある。
メジナの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)
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珍魚度・珍しさ
★★
少し努力すれば手に入る魚貝の物知り度
★★★
知っていたら通人級食べ物としての重要度
★★
地域的、嗜好品的なもの味の評価度
★★★★
非常に美味
分類
顎口上綱硬骨魚類条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目スズキ亜目メジナ科メジナ属外国名
学名
Girella punctata Gray, 1835漢字・学名由来
漢字 目近魚、眼仁奈、目品 Mejina、Mezina。
由来・語源 東京・神奈川での呼び名を標準和名とした。メヂナとも。由来などはよくわからない。
〈GIRELLA punctata メジナダイ 相模三崎〉。『帝国博物館天産部魚類標本目録.帝国博物館』(石川千代松・松浦歓一郎 1897/明治30年)
〈メヂナ(ブレ)〉。『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929)。
東京周辺での呼び名だとしているのは田中茂穂。『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年)
目近魚 目が吻(口)に近いことから。地方名・市場名
生息域
海水魚。浅い岩礁域。
少ないが北海道日本海側〜東北、新潟県〜九州南岸の日本海・東シナ海沿岸、[宮城県気仙沼]、茨城県〜九州南岸の太平洋沿岸、[鹿児島県種子島]、瀬戸内海。希に琉球列島。
朝鮮半島南岸、済州島、台湾、福建省、希に香港。生態
産卵期は2月から8月。
雑食性。寒期は海藻などを食べる。
稚魚、仔魚、成魚は周年磯回りで見られる。基本情報
日本各地の磯などに普通。磯魚の代表的なものだ。
主に日本海が産地で、冬に海が荒れると大量に定置網などに入る。江戸時代前期の毛吹草には若狭の産物とある。若狭だけではなく日本海から関東にも大量に入荷してくることがある。またサケノツカエダイ(サケの遣い鯛)、ツカヤ、チカイなどはサケ漁が始まる時期に前後して日本海各地でとれ始めるからだ。太平洋側などでは年間をとおして揚がるが、主に冬から春の魚で、流通の場で見かける機会も増える。近年では養殖もなされている。鮮度がよければ味のいい魚で、各地で刺身や煮つけなどで食べられている。
食用魚としては地味な存在だが、釣魚として非常に人気が高い。釣り竿、浮子などに本種の地方名である「グレ」の名を冠したものすらある。
珍魚度 普通の食用魚だが、消費地の小売店などではあまり一般的ではない。多少探さないと手に入らない。水産基本情報
市場での評価 冬期など日本海側からときにまとまって入荷してくる。値段は安い。活魚もあるがそれほど高くはならない。
漁法 定置網、釣り
主な産地 石川県、島根県など日本海選び方
見た目では鮮度がわかりづらい。黒くて色あせしていないもの。鰓が鮮紅色のもの。味わい
旬は相模湾などでは秋〜春。生殖巣が膨らんでも味が落ちないので、産卵前の春に脂がのる。
鱗はやや硬く取りにくい。皮は厚くしっかりしている。引きやすい。骨はあまり硬くない。
透明感のある白身で血合いが赤く美しい。熱を通してもあまり硬く締まらない。
白子、卵巣は非常に美味。栄養
ー危険性など
ー食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)
メジナの料理・レシピ・食べ方/生食(焼き霜造り、刺身、カルパッチョ、セビチェ)、煮つけ(しょうゆ煮、塩煮、鍋)、焼く(塩焼き)、汁(塩味、しょうゆ味、みそ汁)、ソテー(ゴマ油、オリーブオイル、バター)、唐揚げクリックで閉じます
メジナの刺身 春、生殖巣が膨らんで、脂の豊かな固体の刺身。水洗いして三枚に下ろすために包丁を入れると重く感じるくらいに脂が強い。やや大型なので背と腹に分けて刺身にして食べ比べたが味わいはあまり違わない。血合いがきれいで口に含むと脂が溶ける感じがいい。実にうまい。
メジナの焼き切り(焼霜造り) 小振りのものでも皮目を生かすと生で美味しく食べられる。三枚に下ろして、皮目をあぶって、冷水に落とすか、急速冷凍庫に入れて粗熱を取る。皮目が落ち着いたら刺身に切る。皮目の香りと皮下のうま味と甘味、非常に味わい深い。クリックで閉じます
メジナのセビチェ ラテンアメリカの料理でメジナの身を細かく切り、ライム(レモンでもなんでもいい)と塩で締める。ここに辛い唐辛子と紫玉ねぎを合わせて少し寝かる。ここにトマトやセロリなどを加えてもいい。爽やかな味である。テキーラなどスピリッツに合う。クリックで閉じます
メジナの塩焼き 旬の大振りを切り身にして振り塩をして1時間以上寝かす。これをじっくり焼き上げる。上質の白身で焼いてあまり硬くならず、端を入れると肉汁が出てくる。とても味がいい。ただし固体によっては磯臭さが出るものがある。クリックで閉じますメジナの真子の塩焼き 真子・白子ともに味がいい。真子は煮てもいいが、振り塩をして少し寝かせて、じっくりと焼き上げる。少し干すと長持ちする。独特の風味があって、香りが高い。ご飯に合う。クリックで閉じますメジナの煮つけ 小振りのものは丸のまま、大きなものは切り身にして普通にしょうゆ味で煮つけるととてもおいしい。水洗いして、湯通しして冷水に落として残った鱗やぬめりを流す。これを酒・しょうゆ・水で煮る。砂糖、みりんで甘味を加えてもいい。煮てもあまり硬くならずとてもおいしい。ご飯にも合う。また煮汁で食べる素麺もうまい。クリックで閉じます
メジナのまーす煮 沖縄の郷土料理「まーす煮」は少量の塩水で魚を煮上げるというもの。クセのある磯魚などにも向いている。脇焼きの豆腐が主役以上に味わい深いことが多々ある。これにコーレーグス(島唐辛子の泡盛漬け)をかけて食べる。クリックで閉じますメジナの白子の湯豆腐風 鮮度のいい白子が手に入ったら、昆布だしに酒・塩でことこと温めながら食べる。メジナの白子はまったくクセがなく柔らかい。口に入れるとふんわりととける。フグやマダラに負けない味だと思う。クリックで閉じます
メジナの魚汁(みそ汁) 沖縄では魚でみそ汁、そしてそれが主菜ということが普通である。メジナもいいだしが出る上に、煮ても硬くならないので汁にすると実にうまい。しょうゆ仕立て、塩仕立てもいい。クリックで閉じますメジナの芝煮 比較的薄味でにたものを昆布だしに塩、酒だけで味つけした汁。本来はエビや小魚の料理だが、鮮度のいい上質の白身を薄味で煮たものにこの料理名を使ってもいいのではないかと思う。クリックで閉じます好んで食べる地域・名物料理
炒り焼き 長崎県。メジナのすき焼きといったもの。メジナを野菜などと一緒にすき焼き風の鍋にする。
グレの焼き切れ(やきぎれ) 三枚に下ろして皮付きの皮目をあぶって刺身状に切ったもの。わさびじょうゆで食べる。[高知県室戸市三津/イセエビ漁師夫婦 20171113-14]
クロイオとアオサのみそ汁 春先のクロイオ(メジナ)でみそ汁を作る。春先にとれるアオサ(ヒトエグサ)を合わせる。[福畑敏光さん 長崎県平戸市度島]
寒クシロ 伊豆半島、伊豆諸島では「寒クシロ」を刺身で、九州南方面ではみそ煮にする。味噌椀にワケギ、白焼きにして煮つけても美味。聞取
三月クシロ 伊豆では「三月クシロ」という言葉があるくらい、この時期のメジナを珍重する。聞取クリックで閉じます
ぐれの焼き切り(たたき)/徳島県海部郡海陽町宍喰 三枚に下ろして皮目をあぶり、刺身状に切り、手に塩をまぶして叩く。次ぎに柚子酢をてにつけてたたき、玉ねぎのスライスをのせる。ハス(イシダイ)、コウロ(イシガキダイ)、グレ(メジナ)、ヒラソウダ、カツオなど。
グレの焼切り(グレのたたき)/日本各地 水洗いして三枚に下ろす。腹骨をすき、大型のものは血合い骨の部分を切る。小型は血合い骨を抜く。皮目をあぶって、熱いうちにまな板などの上で刺身状に切る。これをわさびしょうゆでも、しょうがでも、にんにくで食べてもうまい。クリックで閉じますぐれの焼切り
メジナの湯引き 三枚に下ろして腹骨・血合い骨を取る。皮付きのまま刺身状に切る。鍋に湯を沸かし、塩を加えて湯通しする。数秒で上げて氷水に落とし粗熱を取る。水分をていねいに拭き取って皿に盛る。梅肉醤油、酢みそ、酢醤油、柑橘しょうゆなどで食べる。[長崎県雲仙市小浜富津]クリックで閉じますグレの水たき グレを適宜に切り、野菜や豆腐と水(昆布だしかも)で煮ながら食べる鍋もの。寒い時季のグレ(メジナ)は煮てふっくらとして豊潤、甘味があり、しかもいいだしが出る。[高知県室戸市三津/イセエビ漁師夫婦 20171113-14]クリックで閉じますグレの水たき
クロダコの刺身(グレの刺身、クロの刺身) 刺身をからし酢みそで食べる。日南市でもわさびしょうゆで食べる地域とこのように酢みそで食べる地域に分かれるようだ。この酢みその味がいい。[鵜戸民宿ドライブイン 宮崎県日南市]クリックで閉じますクリックで閉じます
黒鯛(グレ)の塩漬け・塩焼き 1 昔、大阪府泉佐野市では魚屋が樽で塩漬けしたグレ(メジナ)を12月25日より正月用に販売していたという。正月に黒い魚を食べると「黒字で縁起がいい」という意味もあるとのこと。グレの塩漬けは泉佐野以外にも泉南で広く作られていた可能性がある。ちなみに『南大阪の伝統食』には泉佐野のグレ、貝塚市のアマダイ(アカアマダイ)、堺市のマダイと地域毎に塩漬けされる魚が違うとしている。写真は大阪市中央卸売市場『井内水産』が復活させて作り販売しているものです。
井内正幸さん(井内水産/大阪市中央卸売市場) 『南大阪の伝統食』(小林宏編著 大阪公立大学協同出版会)
■詳しくはコラムへ
黒鯛の塩漬けを弁当の菜に 〈仕事始めにこの残りをお弁当に持って行ったものである〉。クリックで閉じますグレの塩漬け
塩が慣れ、焼いて数日経ったグレの塩漬けには独特の風味がある。磯魚の臭みはすっかりなくなり、塩引き鮭とは別種のおいしさがある。これを弁当の菜にするのは、昔はかなり贅沢なものだったのではないか。
『南大阪の伝統食』(小林宏編著 大阪公立大学協同出版会)
関連コラム(郷土料理)
箱根颪の中で考えた。メジナは鍋でしょ!
金曜日の朝、探したのはサンノジ(ニザダイ)とメジナだった。 箱根颪が体にじわじわと染みてくる。今夜こそは鍋だとだ決めたのは、メジナを連れて帰るつもりだったからだ・・・ 続きを開く大阪泉南のグレ(黒鯛)塩漬け
昔、正月に黒い魚を食べると「(家計が)黒字で縁起がいい」ので、泉南の魚屋、スーパーでは黒鯛(メジナで大阪ではグレ)を師走になると樽で塩漬けにした。 大阪府泉佐野・・・ 続きを開く湯引き・長崎県雲仙市富津の湯引き
長崎県雲仙市小浜富津で作られているもの。 魚を皮付きのまま湯通しするのを「湯引き」といい。 三枚に下ろして腹骨と血合い骨を取った状態で湯をかける「湯がけ」がある・・・ 続きを開く加工品・名産品
釣り情報
■ 手頃な防波堤(波止)から簡単に釣れる。ただ大物は離れ磯や、沖堤防まで出かけないと釣れない。餌は冬はハバノリや海草類、周年を通してオキアミ。浮き釣りが定番。
■ 静岡県ではミカンをエサに釣る。これを「ミカンクシロ」とも言う。歴史・ことわざ・雑学など
毛吹草 〈若狭 北陸道 大嶋(おほしまに)ツカヤ 魚也フナニ似〉「毛吹草卷第四」『毛吹草』(正保2/1645 松江重頼 新村出校閲、竹内若校訂 岩波文庫)
海が荒れるととれる魚 松江の魚市場にクロヤ(クロアイ)が大量入荷すると海が荒れているようだと言う。実際に荒天時に入荷が多い。[島根県松江市]
釣り魚 全国的に磯釣りの代表的な対象魚。
正月の膳 黒鯛の塩焼き/大阪府泉佐野市では正月の膳に一匹ずつ黒鯛(メジナ)の塩焼きをつける。残りを仕事始めの弁当にも使う。
グレの塩漬け 「古くから魚屋が樽で塩漬けしたグレを12月25日より販売、今でも売る。ただし、泉州でも正月の祝い鯛は様々で、例えば貝塚市では甘鯛、堺市では焼き真鯛を用いる。」[大阪府泉佐野市]
神事 長崎県対馬厳原町豆酸の多久頭魂神社の赤米神事で「クロイオ(メジナ)」を神事に使う。参考文献・協力
協力/井内正幸さん(井内水産 大阪市中央卸売市場) 並木屋さん(神奈川県)、長尾桂一郎さん(徳島県海部郡海陽町宍喰)、鵜戸民宿ドライブイン(宮崎県日南市)
『日本産魚類検索 全種の同定 第二版』(中坊徹次編 東海大学出版会)、『新釈魚名考』(榮川省造 青銅企画出版)、『さかな異名抄』(内田恵太郎 朝日文庫)、『島根のさかな』(島根県水産試験場 山陰中央新報社)、『魚と貝の事典』望月賢二 柏書房)、『食の万葉集』(廣野卓 中央公論社)、『新釣百科』(1966 佐藤垢石・松崎明治 大泉書店)、『魚河岸の魚』(高久久 日刊食料新聞社)、『南大阪の伝統食』(小林宏編著 大阪公立大学協同出版会) 台湾魚類資料庫地方名・市場名 ?