50cm SL を超える。前半身で体高が高く、後半が細い。全体に赤く、目が金色。この金色は瞳の奥のタペータム(タペタム)という反射層があり、光を集めているため。背鰭軟条は通常14(13-15)、鼻孔は2つ。前鼻孔は小さく、後鼻孔はスリット状で縦に細長い。市場では大型ほど赤く、小型は赤が弱い。
キンメダイの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)
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珍魚度・珍しさ
★
いつでも手に入る魚貝の物知り度
★★
これは常識食べ物としての重要度
★★★★
重要味の評価度
★★★★
非常に美味
分類
顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区正真骨下区棘鰭上目キンメダイ系キンメダイ目キンメダイ科キンメダイ属外国名
学名
Beryx splendens Lowe,1834漢字・学名由来
漢字 金目鯛、金眼鯛 Standard Japanese name / Kinmedai
由来・語源 神奈川県三崎、東京市場(当時は日本橋魚河岸)での呼び名。目が金色であるため。
目が金色なのは目の奥にタペータムという反射板があるためだ。
〈金眼鯛族キンメダヒ科キンメダヒ属 〔相模灣、駿河灣、Madeira〕 キンメダヒ〉。『日本産魚類検索』(岡田彌一郎、松原喜代松 三省堂 初版1938)
種小名/splendens 輝く。『日本産魚類全種の学名 語源と解説』(中坊徹次・平嶋義宏 東海大学出版部 2015)Lowe
Richard Thomas Lowe(1802-1874)。イギリスの植物学、魚類学、軟体類学。地方名・市場名
生息域
海水魚。未成魚は水深100-250m、成魚は沖合の200-800mの岩礁域。
北海道釧路〜土佐湾の太平洋沿岸、新潟県佐渡、富山湾、沖縄、東シナ海大陸棚周辺、九州〜パラオ海嶺。
大西洋、インド-南米北部より北の東太平洋を除く太平洋。生態
暗い深海にいながら目の奥にタペータム(輝板)という反射層があるため、少ない光を集めて獲物を見つけている。
伊豆周辺での産卵期は夏。基本情報
古くは関東の近海、相模湾、駿河湾、千葉県、伊豆半島、伊豆諸島、静岡県に多く、関東を代表する魚というイメージであった。ここに長崎県、鹿児島県、高知県の産地が増えたこと。南半球からなどの輸入ものが増えて全国的な存在となる。
例えば1970〜1980年代、キンメダイの刺身は非常に珍しく、主に煮つけ用の魚であった。江戸川区の食堂で普通に「キンメダイの煮つけ」が並んでいて、少々高かったが、好んで食べていたと記憶する。もっと昔は比較的安い魚だったのかも知れない。
この魚が全国的に流通し始めるのは、高知県や鹿児島県、長崎県など産地が増えたこと、沖縄海域や天皇海山など遠洋漁業でとるようになってから。また南半球はどからの輸入物も増えて価格が平均して下がったのも本種を全国区に押し上げた要因だろう。
珍魚度 いつでも手に入る。丸のままの状態でもよく見かける。水産基本情報
選び方
鮮魚は触って硬いもの。赤が強いもの。目が澄んでいるもの。
冷凍ものは身が白いもの。透明感のあるものは脂が少ない。味わい
周年味がいい。
腹鰭、尻鰭に棘があるが鋭くはない。身体に突起や棘がなく下ろしやすい。
鱗は櫛鱗(しつりん)でザラザラしてしっかり硬くやや取りにくい。皮はしっかりしている。
やや赤みがかった白身で脂が均質に混ざり込んでいる。熱を通しても硬く締まらない。
料理の方向性いちばんうまいのは液体をかいした料理の煮もの、汁もの。いいだしが出て、しかも身がしっとりと煮上がる。焼いてもうまい。刺身は脂がのっていてトロッとしているが、やや曲がない。これを皮霜造りにすることで補える。栄養
ー危険性など
ー食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)
キンメダイの料理法・調理法・食べ方/煮る(煮つけ、魚すき)、生食(刺身、カルパッチョ、セビチェ)、鍋(しゃぶしゃぶ、ちり)、ソテー(ムニエル)、汁(みそ汁、潮汁)、焼く(塩焼き、みそ漬け、粕漬け)クリックで閉じますキンメダイの煮つけ
キンメダイの煮つけ 大型魚はあらを使ってもいいし、切り身を煮つけてもいい。小型は丸のまま煮ると見栄えがいい。水洗いし、湯通しして鱗などを完全に取り去る。これを一本丸ごと煮つけにしたもの。味つけはみりん、酒、砂糖、水で少しこってりと煮上げた。砂糖・しょうゆ、酒・しょうゆなどお好みの味つけで。キンメダイは濃い味つけをしても脂が多いので中まで煮染まらない。あら煮や切り身を煮つけてもいい。
キンメダイのしゃぶしゃぶ 三枚に下ろして血合い骨を抜く。皮付きのまま薄く切る。これを昆布だしに酒、塩で味つけしたつゆでしゃぶしゃぶしながら食べる。生よりも食べやすく、ついつい箸が伸びる。ポン酢や柑橘類としょうゆが合う。クリックで閉じますキンメダイのしゃぶしゃぶ
キンメダイの魚すき(いり焼き、煮ぐい) キンメダイの皮付きの薄切り切り身をすき焼きの地で煮ながら食べるもの。すき焼き地はお好みで作るが、基本はしょうゆ、酒、砂糖、水で、好みでみりんを使ってもいい。具に玉ねぎは必須で、こんにゃく、青菜などを一緒にいろいろ煮てもいい。クリックで閉じますキンメダイの魚すき
キンメダイのちり鍋 まずはキンメダイの中骨と昆布だしで、鍋つゆを作る。味つけは酒と塩。このつゆのなかでキンメダイの切り身、野菜を煮ながら食べる。キンメダイのうま味が染み出した汁が非常に美味。仕上げは雑炊や麺類で。クリックで閉じますキンメダイのちり鍋
キンメダイの肝煮 ときどき本種の価値の半分は肝にあり、などと思うことがある。煮つけなどにするときにも、刺身にしても必ず添えたくなる。ただ肝だけを単体で食べた方がうまいと思う。肝を壊さないように取り出して、酒・みりん・醤油を煮立てたなかで火を通して煮汁にそのまま漬け込む。クリックで閉じますキンメダイの刺身 水洗いにして三枚に下ろし、腹骨・血合い骨を撮る。皮を引き、刺身にしたもの。舌に触れた途端に甘いと感じるのは脂の口溶け感からだと思われる。身にはそれほどうま味があるわけではないが、濃厚な味だと思わせてくれるのも脂だろう。クリックで閉じますキンメダイの肝たたき 水洗いして三枚に下ろし腹骨・血合い骨を取り、皮を引く。身ややや細かく切り、取り置いた肝をゆで、たたいたものと一緒に和える。身のやや単調な味わいに強い肝の味が加わると、刺身が濃厚な味に変身する。一箸のインパクトが強く感じられる。クリックで閉じますキンメダイの刺身(皮付き) 三枚に下ろして血合い骨を抜き、皮付きのまま刺身にしたもの。キンメダイの皮は柔らかく、見た目にも美しい。薄作りにしてねぎなどを薬味にして食べて美味。クリックで閉じますキンメダイの皮つき刺身
キンメダイの焼霜造り(焼き切り) 水洗いして三枚に下ろし、血合い骨・腹骨を取る。水分をよくきり、皮目をあぶり、氷水にとる。そーっと水分を取り、冷蔵庫で皮目を落ち着かせる。これを刺身状に切る。皮には強いうま味があり、あぶると香ばしさが加わる。上品な味わいから強い味わいに変身する。クリックで閉じますキンメダイのムニエル キンメダイの半身の血合い骨を抜く。塩コショウして少し寝かせる。これを多めの油のなかでじっくりとソテーする。今回は身を取り出してキノコ類ソテーしてトマト、シャリーを加えてソースにする。2〜3個のアサリをキノコと一緒に煮込むとより濃厚なソースになる。クリックで閉じますキンメダイのムニエル
好んで食べる地域・名物料理
ー加工品・名産品
釣り情報
関東では伊豆半島、房総半島などで釣りが盛んだ。サバやイカの短冊餌で胴づき仕掛け。針数が多いのでベテラン向きの分野となっている。面白いのはアコウダイなど浮き袋のある魚が釣り上げると原を浮かせて半死半生なのに比べて、浮き袋を欠いているキンメダイは水面近くまで元気にあばれている。これをうっかり落とすと、これまた元気に深海にお帰りになるので、くれぐれも取り込みは慎重に。歴史・ことわざ・雑学など
ー参考文献・協力
協力/岩崎薫さん(神奈川県)、田中水産(鹿児島県鹿児島市)、長宗商店(三重県熊野市)
『日本産魚類検索 全種の同定 第三版』(中坊徹次編 東海大学出版会)、『食卓にのる 新顔の魚』(海洋水産資源センター新魚食の会 三水社)