40cm SL 前後になる。背から眼の前方、吻にかけて直線的。頬には皮下に埋没しない鱗がある(個体によっては皮下に隠れたように見えるものもある)。側扁(左右に平たい)し、全体に赤く背の部分が濃い。鰭(ひれ)、頭部は黄色い。背鰭の前の正中線は黒い。目から口に向かって白い線模様があり、目の後方に三角形の白い部分がない。[41cm SL・1.1kg]
キアマダイの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)
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珍魚度・珍しさ
★★★
がんばって探せば手に入る魚貝の物知り度
★★★★
知っていたら達人級食べ物としての重要度
★★
地域的、嗜好品的なもの味の評価度
★★★★★
究極の美味
分類
顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目スズキ亜目アマダイ科アマダイ属外国名
学名
Branchiostegus auratus (Kishinouye,1907 )漢字・学名由来
漢字 黄尼鯛、黄甘鯛 Kiamadai
由来・語源 岸上鎌吉の命名だと思われる。アマダイで黄色いため。
アマダイ3種について 〈アマダイは岸上(鎌吉)博士によると三種を區別することが出来て、アカ、キアマ、シラカワの三通りとなる。……〉。岸上鎌吉は3種もしくは2種であると考えていた。『魚と人生』(田中茂穂 楽浪書院 1934)
〈アマダヒ科アマダヒ屬キアマダヒ〉。『日本産魚類検索』(岡田彌一郎、松原喜代松 三省堂 初版1938)
アマダイの語源甘鯛 甘鯛とあるように肉に甘みがあるから。練り製品などにすると甘味があるため。
尼鯛 この魚の横顔が頬被をした尼僧に似ているから。Kishinouye
岸上鎌吉(きしのうえ かまきち 慶応3年〜昭和4年 1867-1929)。東京帝国大学教授。動物学者・水産学者。水産学の黎明期に甲殻類、棘皮動物、魚類など様々な分野を研究した。地方名・市場名
生息域
海水魚。水深30-300mの砂泥地。アマダイ類ではもっとも深い場所に生息。
千葉県銚子、相模湾、駿河湾、紀伊水道〜九州南岸の太平洋沿岸、若狭湾、島根県浜田市・隠岐、山口県日本海側、対馬、九州西岸。
東シナ海大陸棚、朝鮮半島南岸、台湾、広東省、海南島。生態
ー基本情報
国内でとれるアマダイはアカアマダイを筆頭に、シロアマダイと本種でアマダイ3種という。本種は比較的南に生息域をもち、和歌山県、四国太平洋側、九州南部に多い。比較的浅場にいるシロアマダイ、やや深場にいるアカアマダイ、そしてもっとも深い場所にいる本種と、生息する水深が異なる。水揚げ量もアカアマダイ、シロアマダイ、本種の順に多く、本種は流通の場でももっとも手に入れにくい。
他の二種はそこそこ水揚げがあるが、本種は非常に水揚げ量が少なく、珍しい魚といってもよいくらいである。
アマダイ3種の中でいちばん味が劣るという人がいるが、実際に3種を食べて比べていない可能性が高い。うまいまずい以前に、あまりとれないので、食べたという人自体が少ないのだ。
実はアカアマダイに負けず劣らす、うまい魚である。実際に値段的も安くはない。
珍魚度 珍魚ではない。アカアマダイ、シロアマダイはそこそこ流通するが、本種は関東などではあまりみかけない。時間をかけて探すしかない。水産基本情報
市場での評価 関東の市場ではほとんど見かけないもの。値段は一定しないが、高い。
漁法 釣り、底曳網
主な産地 鹿児島県選び方
赤身、黄色みの鮮やかなもの。触って硬いもの。味わい
旬は晩秋から冬だと思われる。秋から春にかけて味が安定している。大きいほど味がいい。
鱗は薄くやや大きい。皮はしっかりとして強い。
透明感のあるやや赤みがかった白身。あまり繊維を感じない上に水分が多いので鮮度が落ちると脆弱。
熱を通しても硬く締まらない。栄養
ー危険性など
ー食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)
キアマダイの料理・レシピ・食べ方/焼く(若狭焼き)、蒸す(酒蒸し)、煮る(煮つけ)、汁(潮汁)、ソテー(ポワレ)、揚げる(素揚げ、天ぷら)、生食(昆布締め、刺身)クリックで閉じます
キアマダイの若狭焼き アマダイ科の魚は皮と鱗に味がある。この鱗をいかに焼き上げるか、が焼き物においては肝要である。
鱗を取らないで水洗いして開く。水分を拭き取り、振り塩をして身を閉じて密閉、1日以上置く。ふたたび、表面に浮いた水分をていねいに取り、適当に切り、七部通り焼き上げる。最後に表面に若狭地(酒、醤油)を塗りながら仕上げる。これを若狭焼きという。醤油を加えないで酒だけを塗り、焼き上げてもいい。
表面はこんがりと鱗まで焼き上げているが、中はしっとり蒸し上げたようになる。鱗ごと食べる皮の味わいはこれ以上求めようがないといったものである。
キアマダイの酒蒸 鱗を引き水洗いする。三枚に下ろして適当に切り身にする。水分をよくきり、軽く振り塩をする。表面に出て来た水分を拭き取り、皿に昆布を敷いた上にのせて酒を振り蒸し上げる。口に入れると程よく繊維質の身は舌の上でほどける。皮と皮の直下、身に強いうま味があってとても味わい深い。クリックで閉じますキアマダイの煮つけ 頭がいちばんうまいが食べられる部分は少ない。こんなときは焼くのもいいが、煮た方が合理的だ。水洗いして梨子割りにする。湯通しして氷水に落として残った鱗やぬめりを流し、水分をよくきる。これを酒・みりん・醤油・水で煮る。可食部分は少ないものの、品のひとかけらに非常に味がある。皮など無類の味だ。クリックで閉じますキアマダイの潮汁 鱗を引き水洗いする。刺身などにして残ったあらを集めて置く。湯通しして冷水に落として残った鱗やぬめりを流す。水分をよくきり、昆布だしで煮出して酒、塩で味つけする。汁に甘味と濃厚なうま味ある。この甘味は甲殻類(エビなどと同じようなもの)、付着した身もとても味わい深い。クリックで閉じますクリックで閉じます
キアマダイのポワレ 身に豊かなうま味があり、それ以上に皮と鱗に味がある。これを丸ごと楽しめるのがポワレだと考えている。
皮を取らないで三枚に下ろす。切り身にして塩をして半日程度寝かせる(必ずしも寝かせなくてもいい)。表面に出て来た水分をとり
多めのオリーブオイルで身からソテーする。皮に油をかけながらソテーして、皮目を下にして返し、そりを戻すように押さえつけながらソテーする。皿に盛り付け、フライパンに残った鱗を切り身に乗せてしまう。残ったフライパンにライム、白ワイン、塩、ローズマリーでソースを作り、切り身の周りの流し込む。
鱗はかりかりと非常に香ばしく、皮に強いうま味が感じられる。身はアマダイ類独特の甘味がある。これが全部口の中に広がる。
キアマダイの素揚げ 今回は尾鰭近くと尾鰭を使った。素揚げにした尾鰭が非常にうまいからだ。三枚に下ろして尾鰭と尾の身の水分をていねいに取る。これを低温からじっくり高温に上げながら、こんがりと揚げていく。尾鰭と鱗はさくさくとやたらに香ばしくしかもエビに似た風味がする。身は鶏肉のように絞まり、これまた味わい深い。クリックで閉じますキアマダイの天ぷら 皮にエビに似た甘味を伴う味がある。この皮目の風味は天ぷらが合う。一汐(三枚に下ろして振り塩をして12時間程度寝かせたもの)を切り身にする。水分をていねいに飛ばし、中央皮目に切れ込みを入れて小麦粉をまぶす。衣を付けて高温で揚げる。身にも皮にも強いうま味があるので、揚げた香ばしさの先に魚のうまさがくる。非常に美味だ。クリックで閉じますキアマダイの刺身 活け締めされ鮮度がいいものは刺身にもなる。水洗いして三枚に下ろして皮を引く。比較的薄く切りつける。寒い時季、身に脂が感じられて口の中で甘味が広がる。うま味豊かで味がだれない。クリックで閉じますキアマダイの焼霜造り(あぶり) 鱗を引き水洗いして三枚に下ろす。腹骨・血合い骨を取る。水分をよくきり、まな板に皮の方を上にむけて、バーナーであぶる。氷水に落として粗熱を取り、水分をよく切る。刺身状に切りつける。皮目の味わいは無類だが、逆に身のうま味が弱く感じる。クリックで閉じます好んで食べる地域・名物料理
ー加工品・名産品
ー釣り情報
冬期に相模湾でマダイのコマセ釣りをしていて、水深が深いと本種とアマダイが外道として釣れる。釣り人や船頭はアマダイと区別しない。歴史・ことわざ・雑学など
ー参考文献・協力
『日本産魚類検索 全種の同定 第三版』(中坊徹次編 東海大学出版会)、『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂)