体長1m前後になる。全体に褐色で頭が大きく、皮はぶよぶよしている。外見上キアンコウは上から見ると比較的楽器琵琶(びわ)形に見え、本種は楽器バンジョーに近い。口腔内に白い斑紋があり。上膊骨(じょうはくこつ)は先端がいくつかに分かれる。
アンコウの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)
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珍魚度・珍しさ
★★★
がんばって探せば手に入る魚貝の物知り度
★★★★
知っていたら達人級食べ物としての重要度
★★★
一般的(流通量は普通)味の評価度
★★★
美味
分類
顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区正骨下区側棘上目アンコウ目アンコウ科アンコウ属外国名
学名
Lophiomus setigerus (Vahl, 1797)漢字・学名由来
漢字 鮟鱇、華臍魚(あんごううお)、老婆魚、琵琶魚、蝦蟇魚 Ankou
由来・語源
本種は江戸時代以来東京では「くつあんこう」と呼ばれていて、一般的な「あんこう(キアンコウ)」よりも劣るとされてきた。
この事実を踏まえて、石川千代松、田中茂穂が標準和名をクツアンコウとしていたのに、アンコウとなった原因は、本種の学名に対して、明治時代の前期に標準和名アンコウが当てられていた歴史を踏まえて、松原喜代松が生真面目に先取の和名を採用したためではないかと考えている。本種の標準和名はクツアンコウであるべきだ。
〈Lophius, Artedi. setigerus, Nahl (Vahlのmisspellingかも) アンコウ〉。『内村鑑三の魚類目録(1884年/明治17、未発表)について』(時田●(文字不明)、小林喜雄 北海道大學水産學部研究彙報)
〈setigerus くつあんこう 安房〉。『帝国博物館天産部魚類標本目録.帝国博物館』(石川千代松・松浦歓一郎 1897/明治30年)
〈有柄亞目アンカウ科アンカウ屬 アンカウ Lophius setigerus (VAHL)〉『日本産魚類検索』(岡田彌一郎、松原喜代松 三省堂 初版1938)
あんこう・あんこ「暗愚魚(あんぐうお)」の意味。「暗愚」とはのろまで愚か者の意味。見た目のぶよぶよして、太っていることからきたもの。「あんぐうお」が「あんこう」に転化。
〈華臍魚(あんごう) 老婆魚 綬魚 琵琶魚〉。『和漢三才図会』(寺島良安 正徳3年/1713 東洋文庫 平凡社)
あんこう・あんこ これ自体でふっくらした。丸みのあるという意味合いがあるのではないか? 髪を結うとき髪にボリュームをつけるためのすき髪のことを「あんこ」というのと同じ。和菓子の餡とも関係がありそう。Vahl
マルティン・ヴァール(1747-1804)はノルウェー生まれ。植物学者で魚類学者(動物学者)。デンマークのコペンハーゲン大学で講義をする。地方名・市場名
生息域
海水魚。水深30メートル〜510メートル。明らかにキアンコウよりも浅場にいる。
北海道〜九州南岸の日本海・東シナ海、北海道噴火湾〜九州南岸の太平洋沿岸、瀬戸内海、東シナ海大陸棚域。
朝鮮半島全沿岸、済州島、中国(長江沖を除く)東シナ海・南シナ海、台湾、希にピーター大帝湾、インド-西太平洋。生態
産卵期は4月〜6月。基本情報
国内では北海道から九州までの沿岸域で水揚げがある。料理店・流通の場・市場などでは「くつあんこう」と呼ばれている。一般的に「あんこう」とはキアンコウのことで本種ではない。底曳き網、刺網などで水揚げされるキアンコウ(本あんこう)よりも安く、水揚げ量は圧倒的に少く、浅場にいるので水揚げ時季も異なる。
外見は一般に鮟鱇として人気のあるキアンコウと変わらないが、市場人はしっかり区別して取り扱っている。キアンコウと比べると値段もかくだんに安い。
キアンコウ(本アンコウ)よりも少し水分が多く、煮て弾力がないが、まずいというほどでもない。
珍魚度 珍しい魚ではないが、流通することがあまりなく、水揚げ量も少ないのでがんばって探すしかない。水産基本情報
市場での評価/「本あんこう(キアンコウ)」と比べて入荷量は少ない。値段は小振りが多いので安い。書物などでもアンコウとキアンコウを逆転して記載していることがある。これは要注意。アンコウの入荷量は少なく、めったに流通上では見かけない。また関東の市場でも本種を「くつあんこう」と区別できる仲買も少なくなっているように思える。
漁法/底曳網、刺網
主な産地/選び方
触って張りのあるもの。粘液が大量に出て白濁したものは古い。味わい
旬は冬。キアンコウ(本アンコウ)と比べると筋肉などに水分が多く、身崩れしやすく味は劣る。
鱗はなく、歯以外はすべて料理に使える。肝や胃袋なども美味。
柳肉(上身)よりも皮、肝などの内臓の方が味がいい。栄養
ー危険性など
ー食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)
アンコウの料理・レシピ・食べ方/煮る(しょうゆ仕立て鍋、みそ仕立て鍋、煮つけ)、汁(みそ汁、すまし汁)、揚げる(唐揚げ、フライ)、ソテー(ソテー)クリックで閉じますアンコウ鍋関東風
しょうゆ仕立てアンコウ鍋 秋になるととれ始め、最初は珍しいので眼を引くが、キアンコウ(本あんこう)が出始めると、見向きもされない存在となる。水分が多く、肝が小さい上に小型だからだ。ただ鍋ものにすると、決してまずいわけではない。
歯の部分のみ取り除き、皮を剥き、内臓を分けて適宜に切る。これを湯引きし、冷水に落としてぬめりなどを流す。水分をよくきり、少量のカツオ節だし、水、酒、しょうゆ、塩の汁で煮ながら食べる。基本的に肝も胃袋なども含めて「本あんこう(キアンコウ)」と同じ味わいでとても美味。
みそ仕立てアンコウ鍋 歯の部分を切り取り、皮を剥き、内臓を取り分ける。湯通しして冷水に落としてぬめりを流して、よく水分を切っておく。白みそと赤みそを合わせて昆布だしでねる。これを鍋に入れて、野菜とともにアンコウを煮ながら食べる。鍋のあと残った煮汁で食べるご飯は最高!クリックで閉じますアンコウ鍋
アンコウ煮 歯を切り落として皮を剥き、肝などを分けておく。適宜に切り、湯通しして氷水などに落としてぬめりを流す。水分をよくきり、酒、しょうゆ、砂糖の味付けで煮る。臭い消しはしょうが、八角、山椒などお好みで。あっさり塩味で煮てもうまい。クリックで閉じますアンコウ煮<
アンコウの煮凝り 煮つけを冷やすと煮こごる。ここでは甘辛くにて、冷ます。骨を取り除き、胃袋などは細切りにする。これを流し缶に入れて冷蔵庫で冷やす。からしをそえて出す。とても日本酒に合う。クリックで閉じますアンコウの煮凝り
アンコウみそ汁 江戸時代などの「あんこう汁」はみそ仕立てだったのだと考えている。本種も本アンコウ(キアンコウ)も区別なく、ぶつ切りにして肝も胃袋も皮も身も入れて汁を作った。ここでは適当に切り、一度湯通しして冷水に落とし、表面のぬめりを撮る。水分をよくきり水から煮出してみそを溶いた。クリックで閉じますアンコウのタイ風スープ 柳肉を適宜に切る。ゆどうしして冷水に落としてぬめりを流す。水分をよく切っておく。鍋に水、ナンプラー、コブミカンの葉、唐辛子を加えてアンコウを煮る。煮えたらライムジュースを加えてシャンツァイを飾る。柳肉自体にはあまりうま味がないのでナンプラーや辛みで補う。クリックで閉じますアンコウのタイ風スープ
アンコウの唐揚げ 水洗いして皮を剥き尾の部分を唐揚げにする。クセのない白身で水分が多い。その水分が揚げることで放出されて適度にしまる。水分が多い分、中は豊潤で外はかりっと香ばしい。カレー粉やヒハツモドキなどスパイスを利かせてもうまい。クリックで閉じますアンコウの唐揚げ
アンコウのフライ 柳肉は3枚に下ろす。片身を開いて厚みを均等にして火を入れやすくする。塩コショウして、小麦粉をまぶして、溶き卵をからめパン粉をつけて揚げる。香ばしいなかに淡泊な白身の味があって捨てがたい味。クリックで閉じますアンコウのフライ
好んで食べる地域・名物料理
ー加工品・名産品
ー釣り情報
ー歴史・ことわざ・雑学など
あんこ 相撲で「あんこ」、「あんこ形」というのは丸みがあって太っている力士をいう。これはもともと「魚のアンコウのような体形」という意味だ。参考文献・協力
協力/長野淳さん(長宗商店/三重県熊野市)、海鮮市場 マルモト(神奈川県伊勢原市)
『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年)、『日本産魚類検索 全種の同定 第二版』(中坊徹次編 東海大学出版会)、『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂)