温暖化を感じる魚11 アカハタ

ハタ科ではもっとも北に生息域を持っていた


ハタ科アカハタ属の魚だ。ハタ科の中でも小型である。古くは本州中部以南という曖昧な生息域だが、現在は、本州以南に生息している可能性が高い。
アカハタ属はハタ科の中でももっとも種が多い。南に行くほど種が多くなるが、アカハタはもっとも北に生息域を広げていた。関東では昔、地物のハタというと本種とマハタ属のマハタだったことがある。
現在は北上しているが、昔、関東では伊豆諸島には非常に多く、まとまってとれる魚だったが、相模湾北部に、いることはいるがとても少なかった。駿河湾、遠州灘、紀伊半島なども産地だったが、最大の産地は九州だった。

関東で見ていても明らかに北上している


さて2024年に神奈川県真鶴町岩(伊豆半島東岸北部)にいて、短い竿を持った若いグループがいたので、「カサゴかい?」と聞いたら、「最近これだね」と見せてくれたのがアカハタだった。真鶴町といえばテトラポットの間のカサゴ釣りのメッカだったが、それがアカハタに置き換わっているようなのだ。
実際、相模湾北部の小田原魚市場でもアカハタの水揚げが増えている。もっと顕著なのは東京湾である。1980年代には千葉県内房(東京湾側)富津辺りによく釣りにいったものだが、アカハタなど一度も見ていない。それが今や立派なターゲットとなっている。
要するに伊豆諸島にはいたが、相模湾北部にはほとんどいなかった魚が、今や相模湾北部で漁業対象となっている、ということは相模湾北部が伊豆諸島と変わらない水温になってきている、ということだ。
このような目立たない変化は日本中で起きているはずだ。

昔から高級魚だったが、特殊な魚でもあった


非常に味のいい魚で、安定的に高値をつけていた。
若い頃、図鑑や魚類検索で知っていただけの魚を実際に築地で、探しては買っていたとき。アカハタが手に入る仲卸を教わって訪ねていったことがある。「いくら欲しい」というので「2匹くれ」というと、そんなことやったことがないと言われて、なんと1尾ただでもらったことがある。
昔、東京市場が築地にあった時代(今もあるのかも)にはアカハタ、キグチ、キダイなどを集めて扱うという仲卸があった。アカハタは特殊な存在で用途は中華料理である。宴席などのメインディッシュの蒸し魚の材料としてなくてはならない魚だったのだ。当然、量が必要なので、産地を問わず買い集めて大きさを揃えて中華料理店に出していた。

今や至って当たり前の鮮魚になっている


これが変わり始めたのが、2010年くらいからだろう。活魚が増えてきたのもあるし、東京都内でも特殊な魚ではなく、普通の鮮魚になった。
すし店ですし種になり、料理店で刺身になる。まとまって入荷して、安いときには居酒屋の煮魚にもなった。
抜群に味がいいし、鮮度落ちが遅い、しかも小型なので買いやすい。料理店などでこれほど重宝する魚もないだろう。明らかに関東での入荷量は増えているのに一向に値崩れする気配がないのは人気があるからだ。
温暖化は東京市場仲卸の業態自体にも変化をもたらしているのだ。

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