今年の新イカは残暑の頃

味がない気がするけど、それでもなんとなく


新イカにこだわっているわけではないが、東京の夏の風物詩のひとつでもあるので新イカらしいときに、必ず1度だけ買っている。
コウイカ(西日本ではハリイカということが多い)に味が出るのは外套長(刺身などにする部分の長さ)12cmくらいから
なので、今回の外套長6㎝前後では味がない。
味がないのにこのサイズに1ぱいに1000円以上出したいのが、東京人、特に高級すし屋の奇妙さなのである。
当然、客は、「新イカをつまみましたよ」と大枚腹って通ぶりたいのだろう。
ちなみにボクが買うのは1ぱい100円前後になってからだが、それでも高価である。
刺身と言っても軽く湯に潜らせたものだが、淡い淡い味しかない。
非常に脆弱で、食べていてはかない。
手放しでうまいとはいえない。
今回合わせた酒は岐阜県八百津の「玉柏」だが、酸味がほどんど感じられずさらりとしている。このさらり軽やかなところが新イカに合う。

出始めはピンポン球、今は上生菓子程度の大きさである


八王子総合卸売協同組合、舵丸水産にあったのは鹿児島県出水市、不知火海のものだろう、という新イカである。
8月になると値が落ち着いてくるが、7月初旬くらいまでは信じられないほどの高値をつける。
イカはコノシロの新子(稚魚に近い個体)とは違って1個体が重いので1ぱいがたいそうな値になる。
その高値を喜ぶ気持ちは、生まれが阿波のボクにはわからない。
しかも江戸時代の書籍にはこの走りのコウイカのっていない。
新イカは持ち帰ったら軽く洗う。
甲を取り、脆弱なのでげそを手で外し、外套膜を塩水の中でよく洗う。
布巾の上に並べて、皮とひれを取り、気になる薄皮をはがす。
この時点で水分をよくきり、沸騰させた湯に少し水を加えて冷ました中に一瞬くぐらせて氷水に落とす。
水分をよく拭き取って出来上がりだ。


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