江戸前の、カレイといえばイシガレイ

久しぶりに食べるイシガレイの煮つけに江戸時代の江戸っ子の、魚の嗜好を思いやる。この淡泊でいながら味のある、嫌みのない味こそが江戸っ子好みだったのだろうな、だから江戸の街で「かれい」と言えばイシガレイだったんだろうな、と思う。
東京風に濃口醤油を終いに足し入れて、少し醤油の風味を利かせたら、ご飯のおかずなのに無性に酒が欲しくなる。
江戸の街で居酒屋（酒の小売店内で酒を飲む）が生まれたのは元禄期以降（18世紀初頭）で、二合半（こなから）に煮物で、現在の喫茶店でお茶を飲むように酒を飲んでいた。
そこでは、江戸前で揚がる江戸を代表するカレイの中のカレイであったイシガレイなど、いちばん上等な酒のつまみであったはず。
ちょっとだけ江戸の街を思いながら、普段はやらない昼酒をすこしだけやる。
その日の夜の煮凝りもとても味わい深くて、イシガレイのおいしさを改めて発見した気がしてきた。

さて、ときどき遠出して直売所・スーパーマーケットめぐりをしている。
今回のイシガレイは岐阜県可児市で売られていたもので、野締め（漁の間に死んだ）だったので、比較的安かった。
活けは少々お高いが、野締めは安い。この落差がイシガレイの特徴である。
九州南部や四国太平洋側・紀伊半島を除く日本各地で水揚げがあるが、やはり関東以北に多い。このスーパーのパックの産地も北海道である。
北海道根室漁協の競り場にも並んでいたのが想い出される。
体の有眼部（黒く目のある方）に大きな石が並ぶが鱗はない。
反対側は真っ白ですべすべしていて、とてもきれいな魚である。
この石を切り取って料理するのだけど、スーパーの切り身なのでキレイに取り去ってある。真子が小さいのは翌年産卵する個体らしい。
切り身は湯通しして冷水に落として表面のぬめりを流す。
水分をよくきり、酒・みりん・醤油・水を沸かした中で生姜と一緒に煮る。
なんどか煮汁の味をみて、終いに醤油を少しだけ垂らす。