真ツブとも、Bツブとも言われたりするエゾボラモドキ

巻き貝の同定は写真だけではできない。経験が重要


八王子綜合卸売センター、『福泉』にBツブが来ている。噴火湾で揚がった典型的なエゾボラモドキである。
この流通名と標準和名が違う点がこの刺身用の巻き貝を難しくしている。
流通上はBツブだけど、北海道オホーツク海では真ツブなのだからやっかいである。
「A、B」と、「真ツブ、真ツブ以外」という、2つの考え方があるのも混乱の原因だ。
記載者のGeorge Brettingham Sowerby III は19世紀から20世紀にかけて活躍したイギリスの動物学者でありイラストレーターであるが、なぜ日本列島の北海道と本州に多い巻き貝の記載をしたのかがわからない。タイプの個数も未知の世界なので、貝類学的にもやっかいな御仁である。
個人的にはエゾボラモドキは北海道噴火湾とオホーツク海の固有種ではないかと思っている。だから新種記載すべきである。というのは、専門的過ぎるかも。
さて、最近、生食用の巻き貝はアワビ類、サザエよりもエゾバイ科の巻き貝の方が量的には多い。
今や、刺身用巻き貝の主産地は北海道となっているのである。
市場ではエゾボラという巻き貝をAツブ、本種やたぶんだれにもわからないと思うけど標準和名を挙げると、クリイロエゾボラ、フジイロエゾボラ、アツエゾボラなどをBツブという。
そのBツブのなかではもっとも値が高い。
ちなみにAツブは昨年から今年にかけて信じられないほどの高値をつけた。そのときもっとも強く影響を受け高値をつけたのも本種である。

巻き貝の刺身というと本種エゾボラモドキかエゾボラか


このやっかいな北の巻き貝の遺伝子的なやりとりをしている記念に、せっかくなので刺身で食べる。
貝殻から取りだし、内臓の肝膵臓を塩ゆでにする。
足は二つ割りにしテトラミン(強くはないが毒性がある)を取る。
ボウルなどに入れて揉みヌメリを出し、仕上げに塩もみする。
水でヌメリなどを洗い流し、水分を切り、薄く刺身状に切る。
本種の刺身はもっともAツブに近い。
味のよさも準じていると考えている。
輸送状態によってはAツブ以上かも。
貝らしい風味が豊かで、甘味が強く、エゾボラ特有の心地よい食感がある。
北海道の一部で真ツブというのだから市場的にもAツブとしてはいかがだろう。


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