アカアジは相模湾ではお馴染みだけど、探すとたいへん!
水揚げが少なく、そっくりさんもいてややこしい
小田原,アカアジ
2024年1月19日、神奈川県小田原市、小田原魚市場でアカアジを発見した。相模湾のアカアジとは長い間ご無沙汰だったので浮き浮きして帰宅する。
ときどき不用意に「これはマイナー魚」だとか「マイナー魚」ではないとか、「未利用魚」だとか違うとか言う人がいるが、ちゃんと理解して話している人に今のところ出会っていない。マイナー魚がわかっている人はまったくいないと言っていいだろう。
例えばリュウグウノツカイはマイナー魚だが、マイナー魚度がかなり低い。非常に知名度が高いのと言う点からするとマイナーではない。ただしめったに揚がらないという意味ではマイナーだ。
今どきの言語を使うとレア度というべきか。要するにレア度は高いがマイナー魚度は高くないのだ。基本的にマイナー魚とは知名度が極端に低い、もしくはレア度が極端に高い魚ということになるが、希に両方を兼ね備える魚もいる。
ちなみに大正8年、神奈川県小田原市生まれ関東大震災経験者の船頭曰く、「リュウグウノツカイは珍しくない。もし見つけても、見て見ぬ振りをする。定置網などに入っても逃がす」と話していた。これは小田原の現役漁師でも同様の人がいるので、昔から嫌がられている、忌避される、縁起の悪い魚だと考えられていたことがわかる。だいたい、リュウグウノツカイのニュースなど見飽きていると思う。
千葉県外房、相模湾周辺が北限ではないかと思っているアカアジは世間一般の知名度はゼロに等しい。ひょっとしたら、知っているのは魚類学者と、魚類に取り分け関心のある一部の人間、また漁業者の一部だけだろう。要するに国民の0.001%以下しか知らない魚なのだ。
見た目通りにアジ科の魚で、もっと絞り込むとムロアジの仲間である(スズキ目スズキ亜目アジ科ムロアジ属アカアジ)。
この魚、鰭などが赤みを帯びているということ以外、見た目は実に平凡なのである。
平凡なということは印象に残らず、かなり魚に詳しくないと、その珍しさに気づかないまま、通り過ぎてしまうといった魚なのである。
珍魚というほどではないが、平均的にみるととれる量が極めて少なく。ときどきたくさんとれることがあっても、安定しない。
このような魚をボクは「がんばって探せば手に入る魚」としている。
ただ、最近、キツネアカアジという超ソックリサンが国内にいることがわかった。
この「アカアジに似てキツネ顔をしている魚」という、とても魚類学的な名の魚は紀伊半島が北限となっているが、相模湾にもいないとは限らないのだ。
魚類検索などで検索するだけではなくキツネアカアジではないことも検索(違いをちゃんと認識、撮影)しなければならなくなった。
以上のことから、珍しい上に、同定が難しいという意味では「ぎりぎり珍魚」としてもいいと考えた。
こんなに平凡な魚にも、これだけの脳内旅行を強いられるのが、水産生物の食文化を調べているボクの日々なのだ。