味わい

寒くなってやってきて、サヨリな日々は楽し!

秋も深まるとサヨリが頻繁にやってくる

愛知県産サヨリ

師走の朝のことである。
「サヨリってやっぱり高いのね」
「大丈夫だよ。1本が軽いからさ」
市場人となんとなく不毛な会話をする。
ときどき八王子総合卸売協同組合、舵丸水産でサヨリの拾い買い(いいものがあったら買うことで、計画性のない買い方のこと)をしている。
サヨリが非常に高いことの利点は、ボクのような仲卸に対して情け容赦のない人間が、平気で一本買いできることだ。
キロあたり4000円しても1尾40gなのでタバコを吸う人のタバコ1本くらいの値段ではないかと、久しぶりに市場でタバコを吸う人を見て無意味にも思った。
味見は1尾で充分なのだけど、このところ連続してきている愛知県産があまりにもいいので、がんばって3尾かって食べてみた。
当然刺身である。
サヨリくらい料理していてきれいな魚はない。
サヨリは日本中の内湾に普通にいる魚で、体が非常に細く、下顎が長くクチバシのように伸びている。水面を泳いでいるので紫外線対策で背中が黒く、下から敵に襲われないように腹部体側が銀色をして海面に溶け込んでいる。食べるのは海面近くにいる昆虫や甲殻類、海草などである。
煮ても焼いてもおいしいが、やはりある程度の大きさになったら刺身にして食べたい。

工夫はいらない、刺身がいちばんうまい

サヨリの刺身はいくらでも食える

魚の中でも刺身に造る難易度はとても低い。三枚下ろしはほぼ大名下ろし(包丁で一気に片身引き切る)だし、薄い皮は意外に強くさーっときれいに引ける。
食べやすい大きさに切る。
あとはあれこれ考えず、自分の好みのものをつけて食べるといい。
晩秋くらいになると、脂が乗ってくる。脂と言っても皮下に層を作るわけでも、身に混在して白濁しているわけでもない。味にこく(深み)を感じるだけだ。
またサンマにも通じるある種の渋味というか風味がある。この独特の味わいこそがサヨリの魅力である。
この味が春まで楽しめる。
日本酒の肴として造っているのだけど、残念なことに今は、5勺しか飲めない。せめて1尾で5勺、3尾で1合5勺くらいはやりたい。


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