コラム

やっと今季初、セコガニ

小さいけれど味は大きい雄に劣らない

ズワイガニ雌

今年は何もかもが遅れている。自然界もそうだが、自分自身も季節に置いて行かれている気がする。
立冬過ぎに買うはずが、11月20日にやっとセコガニが買えた。
ズワイガニの雌を日本海各地で、コウバコガニ(香箱ガニ)、コッペガニ、オヤガニ、メスガニなどと呼ぶ。今回のものは兵庫県但馬新温泉町浜坂で揚がったものなのでセコガニだ。
今夏、噴火湾のオオズワイガニ豊漁で、本場日本海のズワイガニがやってきてもどことなく気持ちが乗らなかったという感じだったが、11月のズワイガニ漁解禁は日本海に冬を告げるといった感があっていい。
季節を待つ大切さは年々忘れ去られようとしている。自然破壊をしても周年うまいものを食いたい、というのが今どきの主流だが、たまには待てをしてもいいのではないか。
ちなみに決して豊かではない我が家の財政からすると、今年中は雌ガニで我慢して、来年春に値が下がってから松葉カニ(雄ガニ)を買うつもりである。

おやつ代わりのセイコガニ


雌ガニは近年高くなったといっても千円札で、安いときには2ぱい、高くても1ぱいでおつりがくる。個人的に初ものは雌ガニで十分だ。
日本海のズワイガニの雄雌を比べると、雌は甲螺の幅は雄の半分、重さでは4分の1くらいしかない。その上、足が短く細いので、身(筋肉)もわずかしかない。だから値段は雄の3分の1くらいしかしない。
ちなみに昨年、京丹後市で、昔、雌ガニは子供のおやつだったとい、耳が痛くなるほど聞いている前置きがあって、子供のお小遣いで買えたというのは初めて聞いた。とすると当人の年齢を考えると1960年前後は1尾10円前後、現在の価値に換算すると100円くらいで買えたことになる。ズワイガニの漁獲量の減少と、雌ガニの価値の上昇で、今の貨幣価値だと5倍から10倍になっていることになる。
さて、持ち帰ったら、面倒なのでカニが入るぎりぎりのサイズの鍋に放り込んで、ひたひたに水を満たし、塩を加えて蓋をしてゆでる。今回は沸騰後12分ゆでた。

内子は宝石を思わせる

ズワイガニの内子

このところ酒を控えているので、山陰の子供を真似ておやつに食べる。当時のことはボクも覚えているが、甘い物が非常に恋しかった。そんな昔の気分で食べると、雌ガニの身がとても甘いことがわかる。
もちろん内子は最後の最後に食べる。
この濃密なうまさ、ねっとり感は文字にはできない。


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