味わい

宮城県産脂豊かなマサバで素直に塩焼きを作る

マサバという名前が決まったとき学問が始まる


マサバという標準和名からは、明治になり、箕作佳吉などが西洋から取り入れた近代的な動物学をがむしゃらに学び始めたときの、息吹というか、明治の動物学者未満の人達の青春時代を感じる。
この時代、北は北海道から南は琉球まで動物学者はあらゆる生物の情報、呼び名を集める。そして標準和名を決めていく。ボクが通っていた学校で「名前がないものは無なのだ」と教わったことがあるが、無から有を生み出す時代だったのだ。
「真鯖」は、日本橋にあった魚河岸でのゴマサバと区別するための呼び名で、当時、教授としても若手だったり、学生だった箕作佳吉、石川千代松などは無我夢中でもめをとり、個体の採取をも行ったのだと思う。
この時代、サバ属に関しては彼らにはよく理解できなかったのではないか? 例えば内村鑑三も石川千代松もサバ属の魚名を明確に採取していない。明らかにマサバ・ゴマサバの学名まではたどり着くが、タイプ標本のあるオランダは遠く、壁があったのだ。
このあたりがボクには無性に面白い。

ブランド魚を買うくらいなら並を買え


さて、26日に八王子総合卸売協同組合、マル幸で買った脂のりのりのマサバは、宮城県産だというがパーチも箱の文字も確認できていない。
宮城県らしきデブなマサバは値段からして並サバという代物で脂が非常にのっていて、これぞ旬だと感じるものだったとしかいいようがないだろう。
ちなみに太平洋側では秋(昔は晩秋である10月)に旬を迎えるが、日本海側は少し遅れる。「秋サバ」というのは太平洋側だけの話であり、季語である。
1㎏弱で1本税込み1000円弱は普通の値段である。普通がいちばんだと思っているので、飯の友に買う。

サバの塩焼きは塩だけで生まれる交響曲


帰宅後、半身を塩サバにする。正確には当日はサバの塩焼きで翌日からは塩サバである。
とりあえず水洗いして三枚に下ろし、半身に振り塩をする。
たったこれだけでマサバはただの魚1個体から、複雑で玄妙で無限大の美味に変化する。

背の方はしっとりと腹の方が揚げたように香ばしい


1時間寝かせて飯抜きの昼ご飯に食べる。
背の方はしっとり、腹の方は揚げたように香ばしい。
秋も終わりだが、これならマサバが秋の季語でもいい気がする。
この半身を4、5日かけて食べつなぐ。
塩サバはあくまでも飯の友であって、酒は無用。



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