鹿児島のメヒカリはとろける

鹿児島県阿久根産アオメエソ

鹿児島県産アオメエソ

鹿児島県鹿児島市にある田中水産さんにアオメエソを送って頂く。鹿児島県ではメヒカリと呼ばれているようだ。
古くは阿久根から出船するタカエビ(ヒゲナガエビ)漁の混獲物でしかなかったが、深海魚を積極的に利用しようと言うことでクローズアップされつつある。
さてその前に、アオメエソについて。1905年にスタンフォード大学のジョーダンとスタークスによって記載されている。日本との関わりの深いふたりが記載した標本はどこでとれたものか、などはわからないが、なぜか生息域が千葉県銚子以南となっている。本種と形態的にそっくりというか区別がつかないマルアオメエソの方は記載につかった個体はどうやら銚子沖らしく、1955年版、魚類検索で生息域はマルアオメエソは銚子沖、アオメエソは相模湾以南となる。
近年、両種は同種であり、マルアオメエソはシノニム、新参和名と決まったのかと思っていたら、いまだに変更されていない。
閑話休題。
さて、田中水産の田中積社長から、「あぶって食べて見てください」というメッセージが送られてきた。ここ数年、決着のつかないアオメエソ問題を受けて未改訂であったのもあって、じっくり本種の味を楽しめないでいたが、いいきっかけをいただいた気がしてきた。

溶けては固まり、そしてとろける


今回はアドバイスのままあぶってみた。作り方は簡単である。
水洗いして三枚に下ろして腹骨を取る。
水分をよくきり、皮目をあぶって氷水に落とし、ふたたび水分をよく取る。
いただいた半分を造ったら、あれっ、という間になくなる。
不得要領のままではいけないので、いただいた0.4kgの残りを全部あぶったらやっとその真価がわかってきた。
舌に乗せた途端、溶けるように消える。たぶん、あぶると豊かに含有されている皮目の脂が溶ける。氷水に落とすと一瞬でこの溶けた脂の表面だけがもう一度凝固するのだ。
口に入れると、表面の凝固した脂が舌の上で破壊されて豊かな脂が皮の香ばしさと一緒に一瞬で口中に広がり、柔らかな身と一緒に消えてしまうのだ。
こんな味は過去に出合ったことがない。
酒を飲むのも忘れて一言、「おーい田中さん、メヒカリ、お代わり」。


関連コンテンツ

サイト内検索

その他コンテンツ

ぼうずコンニャク本

ぼうずコンニャクの日本の高級魚事典
魚通、釣り人、魚を扱うプロの為の初めての「高級魚」の本。
美味しいマイナー魚介図鑑
製作期間5年を超す渾身作!
美味しいマイナー魚図鑑ミニ
[美味しいマイナー魚介図鑑]の文庫版が登場
すし図鑑
バッグに入るハンディサイズ本。320貫掲載。Kindle版も。
すし図鑑ミニ ~プロもビックリ!!~
すし図鑑が文庫本サイズになりました。Kindle版も。
全国47都道府県 うますぎゴーゴー!
ぼうずコンニャク新境地!? グルメエッセイ也。
からだにおいしい魚の便利帳
発行部数20万部突破のベストセラー。
イラスト図解 寿司ネタ1年生
イラストとマンガを交えて展開する見た目にも楽しい一冊。
地域食材大百科〈第5巻〉魚介類、海藻
魚介類、海藻460品目を収録。