相模湾、瓢箪からイトヒキヒメ
ヒメとそっくりでうっかりすると
4月も押し詰まったある晴れた昼下がりのことだ。
やたらにたまっている軟体類の撮影をしていたとき、頭の端っこの端っこに小さなシミのように張りついている何か、を感じて、払っても払えないままいた。小さな巻き貝を撮影するのに集中したいと思っても集中できないので午前中からのことを思い返す。
早朝からたつき仕事をやり、瓶牛乳を一気飲み。撮影済みの写真で気になることを整理して市場に行ったのだ。
八王子総合卸売協同組合、マル幸まで来たら、クマゴロウが「これやるよ」、とヒメをくれた。「ふん、ヒメかいな。ヒメはヒメでももっといいヒメを持って来いよ。コノヤロウ」と毒を吐いて帰ってきたのだ。どうせヒメなんだからと発泡に氷と一緒に放り込んでおいた。
小さなシミのようなものを拡大してみると、このヒメの背鰭の黄色い紐状のものだ。しかも触った感じがヒメじゃなかったような。
あたふたと発泡の氷をどけて見ると、ヒメはヒメでももっといい方のヒメだったのだ。相模湾にもいないはずはないと思ってはいたが、茅ヶ崎沖水深100m前後、マアジ釣りの外道で釣れたことがはっきりしている。ということでボク的には相模湾初のイトヒキヒメだ。
魚類学者でもないのに魚類学者のように笑いがこみ上げてきた。ワッハッハッなのだ。
国内にヒメ科は4種いるがヒメ以外は総て珍魚といっていいだろう。もちろん4種の中でも3番目に珍魚なのでたいしたことはないが、それでもめったに手に入らないことは間違いない。