但馬産赤イカはソデイカ

日本海を代表するイカ


3月の兵庫県日本海側但馬地方の旅では発見したことが多すぎて、いまだにテキスト化に励んでいる。いただいたものも多い。そのいひとつが、兵庫県但馬漁協、対山支所 フィッシャーマンズ・ビレッジの冷凍「赤イカ」 だ。
流通の場で「赤イカ」というと3種類のイカをさす。ケンサキイカ、標準和名のアカイカ、そして今回のソデイカである。ソデイカは日本海側では「たるいか」と呼ばれることが多いので、なぜ「赤イカ」なのか不思議でならない。
重さ20キロ以上になり、沖縄県のコブシメとともに国内最大のイカだ。水産的にも重要で、国内の基本的イカのひとつでもある。水産に関心があるという人の多くがイカはイカでしかない程度の国内では、まだまだ認知度は低いのかも知れない。すし職人に言わせると、値が張るので町ずしで夜にも使えるレベルのイカだという。
ソデイカは沖縄県から九州、日本海側にかけての暖流域で漁があるが、その多くが胴と耳(鰭)、げそに分けられ、ほとんどが冷凍される。特に胴の部分は皮を剥いて冷凍するので、解凍後そのまま食べられるなど、一般人にとってもありがたいものとなっている。
しかも本種は冷凍しないとおいしくないのだ。古くは都内の魚屋さんでも丸のまま仕入れて、自家製の冷凍イカを作っていたときがある。今やこの魚屋さんが作る冷凍ソデイカは貴重である。それを補っているのが産地冷凍なのだと思っている。
冷凍されたソデイカにも良し悪しがあるが、最近上物を手に入れるのは至難だ。特に国産ものなどめったに手に入れることができない中での、津居山産の冷凍ソデイカである。いただいたとき、思わずにやけてしまった自分が恥ずかしい。
解凍し、切って味見するだけで上物であることがわかった。実にイカらしいうま味が豊かなのである。肉厚なので口に入れるとイカのうま味が口いっぱいに広がる。冷凍することで何が変わるか? うま味が豊かになる以上に柔らかくなるのだ。歯触りムチムチというところが本種の魅力なのだ。

ソデイカのステーキは最高!


さて、ステーキ、刺身、湯引き、天ぷらにした。どれも予想外のうまさだったが、いちばんうまかったのはステーキだった。
ステーキらしさは粗挽きの黒コショウと、ブランデーでフランベしたこと、ホースラディッシュを添えたことだけど、ステーキは刺身なのだと強く強く思った次第である。

もっとも基本、刺身


ソデイカの胴の部分は刺身用として流通する。
当然、高価なもので希にスーパーなどでも売られているが100g単位でしかない。
単に切りつけるだけだけど、実に味わい深い。

ソデイカの湯引き


ブロックを切りつけやすい大きさに切って塩水の中で湯通しする。
やや長めに熱を通しても中心部分は生の状態である。
これを刺身に切りつける。熱が通った部分の味わいと完全に生の部分の対比がいい。

ソデイカの天ぷら


天ぷら種としても人気が高い。
厚みがあるので適当に切り、切れ目を入れて衣をつけて高温で揚げる。
肉厚なのでゴージャスな味になる。


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