コイのうまさを知らぬは魚通の名折れ

神崎町の鯉洗いを食べて


京都の料理は京料理と言うらしい。京料理はその上、登録無形文化財だそうだ。そこにどんな意味があるのかと思ったら内容らしい内容がない。どうしてこんなに内容がないのだろう?
つらつら考えるに京都の食の歴史が抜けているではないか? 京都の料理は水産物でいえば、四十物(海や琵琶湖から焼いたり塩をしたり漬けたりしてもたらされたもの)と、生簀が重要だと考えている。
京料理は登録無形文化財なのに、観光客に受けそうなもので、あえて言えばフォトジェニックはモンばっかり、低級じゃねーか、とヤナ気持ちになる。
京都だけではなく、関東、三河・尾張・岐阜などの天下をとった地域、京都、大阪などの料理は淡水魚から始まっているのである。
ちなみに角倉了以は江戸時代初期に鴨川の水を京の街に引き込んだ。この高瀬川が多くの水路を生んだのが京の生簀の始まりである。
関東には広大な過疎地、平野が広がっていて、そこに徳川家が入り大量の人が流入する。水は農業にも生きるためにも必須である。関東平野に水路が多く、また取り残された河川が多いのも人口流入の結果である。この人口の水域が生み出すのが膨大な淡水魚だ。
これは遙かに水に恵まれている尾張・美濃など木曽三川地帯にも言える。河川はたたかう対象であるとともに、関東などと比べると遙かに水路が作りやすく、複雑な水域を作ることができる。そこから多種多様、膨大な淡水魚を生み出す。
大阪が大坂だった頃、大阪城が豊臣秀吉によって築かれた時代に鮒や鯉を売る市場があり、食用フナとして重要なカワチブナを作りだしたのも大阪である。
長すぎるけど、鳥取、島根(両県は並べると嫌がる人がいるのはなぜ?)の汽水湖周辺、岡山の児島湾(今では児島湖)周辺、九州筑後川、鹿児島など淡水魚を食べる地域は決して今でも少なくない。
日本料理を生み出した最初が淡水魚なら、もっと淡水魚は食べられてもいいはずだ。
久しぶりの千葉県神崎町で「鯉の洗い」を買った。洗いは作ったそばから食いたいとは思うが、さすがにそうもいかない。たぶん料理して12時間後くらいに食べたが十二分においしかった。洗いを食べながら浮かんできたものをつれづれに書くと以上になる。
千葉県神崎町のオッチャンなど「海の魚はまずくて食えない」と言う。そこまでは思わないけど、フナの洗い・刺身、コイの洗い・刺身などを食べると、いつもながらに素晴らしい食感、豊かなうま味に感動する。確かに海の魚の刺身など味気ない気がする。
千葉県神崎町、鯉洗いに合わせたのは、宮城県石巻の日高見で口中冷え冷えしてうまかった。


関連コンテンツ

サイト内検索

その他コンテンツ

ぼうずコンニャク本

ぼうずコンニャクの日本の高級魚事典
魚通、釣り人、魚を扱うプロの為の初めての「高級魚」の本。
美味しいマイナー魚介図鑑
製作期間5年を超す渾身作!
美味しいマイナー魚図鑑ミニ
[美味しいマイナー魚介図鑑]の文庫版が登場
すし図鑑
バッグに入るハンディサイズ本。320貫掲載。Kindle版も。
すし図鑑ミニ ~プロもビックリ!!~
すし図鑑が文庫本サイズになりました。Kindle版も。
全国47都道府県 うますぎゴーゴー!
ぼうずコンニャク新境地!? グルメエッセイ也。
からだにおいしい魚の便利帳
発行部数20万部突破のベストセラー。
イラスト図解 寿司ネタ1年生
イラストとマンガを交えて展開する見た目にも楽しい一冊。
地域食材大百科〈第5巻〉魚介類、海藻
魚介類、海藻460品目を収録。