青森県津軽、木村守克2、カドザメカレー

戦後のカレーだとするとカレー粉のカレーかも


著者の木村守克は昭和11年(1936)弘前市生まれだ。「カドザメ(ネズミザメ)」は〈1853年(幕末)になると次第においしさが知られるようになり、多くの人々が賞味するようになりました〉とある。
また、〈カレーライスにも肉の代わりに入れて、よく食べられていました〉ともある。
よくよく考えてみると、津軽地方に限らず、カレーの材料としてネズミザメは普通に使われていた可能性が高い。
さて、木村守克の子供時代というと第二次世界大戦の戦前戦後と考えるべきだろう。

カレーは明治維新と同時に国内に来た。
これが北海道でじゃがいも、西洋ニンジン、玉ねぎが作られ始めるに従い普及する。
東京など大都市では、外食として、農村地帯では主婦の労働軽減のために国が政策として広めたとされている。
大都市部と農村地帯の時差がない料理だったといえる。
肉の代わりにネズミザメの身を使っただけの、昔ながらのカレー粉を使ったカレーにしてみた。
じゃがいもや玉ねぎ、にんじんなどの野菜と適当に切ったネズミザメの身を炒めて、カレーと小麦粉を油で炒めて合わせたものを加える。
ネズミザメの身は炒めて煮ても硬くならず、確かに食感は肉に近い。だまって出すと、鶏のささみのようである。
ただカレー粉を使ったカレーはどことなくもの足りない。昔のカレーはこんな味だったのかもわからないが、現在の肉などで作ったカレーと比較できない。

もっと普通に今どきのよくできすぎたルーを使って作ってみる


今販売されている一般的な、カレールーを使ったみた。もっとも昔からありそうなハウス食品のバーモントカレーである。
牛肉・豚肉・鶏肉の代わりにネズミザメの切り身を使う以外なんら変わりなく作ってみた。
材料はネズミザメの切り身、じゃがいも、にんじん、玉ねぎだ。
作り方は普通のカレーの作り方で、サメ肉・にんじん・じゃがいも・玉ねぎを炒めて水を加える。
ことこと煮込んで材料が柔らかくなったらルーを加えてふたたび煮込むだけ。
昔は出来上がりまでとても長く感じたものだが、今作ってみると、あっと言う間に出来る。

だれが食べても文句なしのおいしさである


カレー粉を使ったものと比べると格段にうまい。
牛肉・豚肉・鶏肉のものと同じようにうまい。
問題は魚らしくない点である。ウバガイ(ほっきがい)、たこ(マダコ)、さば(マサバ)など様々な魚介類で作っているが、こんなに正体不明の肉もないと思う。
うまいだけではない。非常に安いのである。豚こま肉や、鶏のささみよりも遙かに安くて、同じようにおいしいのがすごい。
ちなみにアミノ酸バランスや不飽和脂肪酸、鉄分などが豊富で、しかもカロリーが低い。
サメカレー専門店が出来てもおかしくない気がする。
参考文献/『みちのく食物誌』(木村守克 路上社)


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