30cm SL 前後になる。側面から見ると楕円形で側へんする。体側中央に大きな黒斑がある。
マトウダイの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)
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魚貝の物知り度
★★★★
知っていたら達人級食べ物としての重要度
★★
地域的、嗜好品的なもの味の評価度
★★★★
非常に美味
分類
顎口上綱硬骨魚綱新鰭区真骨亜区正真骨下区棘鰭上目マトウダイ系マトウダイ目マトウダイ亜目マトウダイ科マトウダイ属外国名
学名
Zeus faber Linnaeus,1758漢字・学名由来
漢字 的鯛、馬頭鯛 Matoudai
由来・語源 標準和名は分類学的なものではなく、実際に使われていた呼び名を採取し、採用したもので古い。東京、神奈川県などでの呼び名から。
〈かねたたき 東京市場、安房、長崎〉。『帝国博物館天産部魚類標本目録.帝国博物館』(石川千代松・松浦歓一郎 1897/明治30年)
魴 読みを「かがみいお」、「まといお」としているが、本草綱目からとったもので本種とは違うもののようだ。ただ、カガミダイとマトウダイを思わせる読みではある。両種は近しい種であることは江戸時代にも認識されていた模様。『和漢三才図会』(寺島良安 東洋文庫 平凡社 正徳2年 1712)
かがみだい 〈漢名魴魚綱目に出づ、状まなかつをに似て金銀二色あり、きんと称るもの金色をおぶ、美味し、ぎんと称るもの雲母紙(きらゝかみ)のごとく味あしゝ、各その腹背正中(まんなか)に一円の煙暈斑点(うすくるまのまだらほそ)あり、故に的たいともいう。、毒なし〉。カガミダイ、ギンカガミ(ギンカガミ科)、マトウダイを区分けして述べている模様だ。『魚鑑』(武井周作 天保辛卯 1831)
的 体の中心にある斑紋が弓道の「的」のようであるから。三重県、和歌山県の「まと」、「まとだい」など。
馬頭 顔が馬に似ているため。島根県などでは「馬頭」と書いて「ばとう」と言うのも馬に由来するもの。
Zeus 属名はギリシャ神話の全知全能の神、ゼウス。Linnaeus
Carl von Linné(カール・フォン・リンネ 1707-1778 スウェーデン)。二名法を確立。地方名・市場名
生息域
海水魚。水深30〜400メートル。
北海道〜九州の太平洋・日本海・東シナ海、瀬戸内海。
朝鮮半島東岸、釜山、済州島、台湾、広東省、海南島、オーストラリア沿岸、ニュージーランド、南アフリカ全沿岸、地中海、東大西洋。生態
晩秋になると抱卵している個体にしばしば出くわす。産卵期は冬から春。
魚を食べる、肉食魚。基本情報
西太平洋・インド洋・大西洋・地中海などの温帯域の浅場にいる肉食魚だ。フランス、スペインやイタリアなどで盛んに食べられている。フランスでは「サンピエール(Saint-pierre)」で、ムニエルの定番。
国内では太平洋側よりも日本海側でよく食べられている。日本海側ではときに高級魚でもある。
上品な白身で肝やあらなどがうまいので、鍋材料としても人気がある。水産基本情報
市場での評価 入荷は少なくはない。やや高値がつく。
漁法 釣り、定置網
産地(漁獲量の多い順) 統計などはない。選び方
触って張りのあるもの。体側の黒い斑文のくっきりしているもの。味わい
旬は秋から冬が旬。
身の弾力などは失われやすい。
鱗は細かく絨毛状で気にならない。皮とともに剥ぐことができる。骨は柔らかい。
透明感のある白身で血合いに色がなく軟らかい。熱を通すと締まる。
肝、卵は非常に味がいい。栄養
ー危険性など
ー食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)
マトウダイの料理法・レシピ・食べ方/ソテー(ムニエル)、揚げる(フライ、フリット、唐揚げ)、煮る(鍋、煮つけ)、生食(刺身、マリネー、昆布締め)、汁(みそ汁、潮汁)、焼く(塩焼き、祐庵焼、西京漬け、粕漬け)クリックで閉じます
マトウダイのムニエル フレンチの「サンピエールのムニエル」は高級である。やや水分の多い本種をもっとも生かす料理法でもある。三枚に卸して塩こしょう、小麦粉をつけて弱火でじっくりこんがりとソテーする。切身を取りだしフライパンにバターをたっぷり加えて生かし、レモンをしぼる。これをブール・ノワゼットという。最初に皿に入れて、上にムニエルをのでるだけ。
マトウダイのフリット 切り身に塩コショウ、小麦粉をまぶして衣をつけて揚げたもの。衣は小麦粉、ビール、塩、少量の油を合わせたもの。うんわりと揚がって表面はさくっとしている。これで白身の甘味と豊潤さが楽しめる。クリックで閉じますマトウダイのフライ 油で揚げるとふんわりとジューシーになるところが本種の持ち味。切り身に塩コショウして、小麦粉をまぶして溶き卵にくぐらせて、パン粉をつけてやや高温で揚げる。さくっとしたなかに甘味のある白身、これがとても好ましい。クリックで閉じますマトウダイの鍋 小振りのものを適宜に切り、振り塩をしておく。湯通しして、冷水に落としてぬめりを流す。これを昆布だしで煮ながら食べる。肝、胃袋なども一緒に。昆布だしのなかで煮た切り身は甘味があって身離れがいい。ポン酢、柑橘類としょうゆが合う。クリックで閉じますマトウダイの水炊き
マトウダイの芝煮 芝煮は鮮度のよい魚を薄味で煮るという料理。あらなどを集めて湯通しして冷水に落とし、ぬめりなどを流す。これを昆布だしで煮て酒、塩で味つけする。旬の根菜類などを合わせるといい。クリックで閉じますマトウダイのレモン締め(マリネー) 一口大に切り、塩とレモンで締める。少し寝かせて皿に盛ったもの。爽やかな味わいのなかに甘味が感じられてとてもおいしい。白ワインやスピリッツなどが合う。クリックで閉じます好んで食べる地域・名物料理
富山県から山陰山口県までの日本海側でよく食べられている。
島根県浜田市ではスーパーなど必ず刺身で必ず並んでいる。関連コラム(郷土料理)
湯引き・長崎県雲仙市富津の湯引き
長崎県雲仙市小浜富津で作られているもの。 魚を皮付きのまま湯通しするのを「湯引き」といい。 三枚に下ろして腹骨と血合い骨を取った状態で湯をかける「湯がけ」がある・・・ 続きを開く加工品・名産品
釣り情報
小アジ、小イワシなど生き餌によくくる。ヒラメ釣りなどの外道のひとつ。歴史・ことわざ・雑学など
■フレンチでの「saint-pierre(サン・ピエール)」。「サン・ペドロの魚」の意味。
■シタビラメとともに代表的なムニエル材料。
■学名の「Zeus」は神(ゼウス)ではなく魚という意味。ゼウスはギリシャ神話の最高神。サンピエール、ジョンドリーとともに人間的な呼び名が多い。
■寒くなるにしたがい味が良くなる。
■島根県など日本海側でとくに珍重される。
■皮はサビキ釣りなどの疑似餌材料となる。参考文献・協力
協力/青木清隆さん(新潟県糸魚川市)
『日本産魚類検索 全種の同定 第二版』(中坊徹次編 東海大学出版会)、『島根のさかな』(島根県水産試験場 山陰中央新報社)、『新釈魚名考』(榮川省造 青銅企画出版)、『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂)