40cm SL 前後、重さ最大7.9kg前後になる。体高があり、体は黒く斑紋がない。下あごに房状のヒゲがある。
ヒゲダイの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)
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珍魚度・珍しさ
★★★
がんばって探せば手に入る魚貝の物知り度
★★★★
知っていたら達人級食べ物としての重要度
★★
地域的、嗜好品的なもの味の評価度
★★★★★
究極の美味
分類
顎口上綱硬骨魚類条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目スズキ亜ヒゲダイ科(イサキ科)ヒゲダイ属外国名
学名
Hopalogenys sennin Iwatsuki and Nakabo, 2005漢字・学名由来
漢字 鬚鯛 Standard Japanese name / Higedai
由来・語源 古くは「ヒゲダヒ」。下あごに鬚(ひげ)が生えているが、ヒゲダイ属ではいちばん鬚が長い。種小名「sennin」は鬚の長い仙人のこと。
ヒゲダイは東京、神奈川での呼び名だが、実は現ヒゲソリダイに対する呼び名だった可能性が高い。『日本魚類圖説』(岡田彌一郎、内田惠太郎、松原喜代松 三省堂 初版1935)
『日本産魚類検索』(岡田彌一郎、松原喜代松 三省堂 初版1936、第二版1943)にはヒゲダイの形態画で、学名 Hapalogenys nigripinnis (Temminck & Schlegel, 1843) を当てている。
田中茂穂のヒゲダイは形態画は明らかにヒゲソリダイで、現ヒゲソリダイの学名 Hapalogenys nigripinnis (Temminck & Schlegel, 1843) を当てている。
岩槻幸雄と中坊徹次は、後にこちらをHapalogenys nigripinnis (Temminck & Schlegel, 1843をヒゲソリダイとし、2005年に本種を新種として記載した。また形態的に2種を現在の和名にした。
■本種の地方名はヒゲソリダイとの混同である可能性が強い。
Iwatsuki
岩槻幸雄。宮崎大学、魚類学者。クロダイ属、ヒゲダイ属など。
Nakabo
中坊徹次(1949年京都府生まれ)。魚類学。魚類の分類の上で多大な功績を残す。また魚類検索を一般人の手の届く形にする。魚類検索という意味合いでは松原喜代松の後継者とみてもいいかも。地方名・市場名
生息域
海水魚。大陸棚砂泥地。
伊豆諸島、小笠原諸島、[宮城県気仙沼]、福島県〜九州南岸の太平洋沿岸、瀬戸内海、有明海。山形県〜熊本県天草の日本海・東シナ海沿岸(少ない)、有明海、種子島。生態
ー基本情報
生息域の極端に狭い魚で、国内の比較的温暖な海域に生息。より南の亜熱帯・熱帯域の琉球列島や小笠原にはいない。日本特産魚といってもいいだろう。
イサキ科の中では最大で8kg近くなる大型魚。ヒゲソリダイとは形態的にも大いに違っているが、呼び名で混同し、また分類的にも混乱があった。これも生息域の狭いこと、個体数の少なさに起因していたように思える。
古くは関東などでは非常に珍しかった。市場などで見ている限り、近年、体高のあるイサキ科同様、漁獲量が増えてきているのだが、本種も増加傾向にあるのだと思う。非常に味がよく見た目も面白いので東京の豊洲市場などにくるとそれなりに高値がつく。
味も白身魚としては上の部類で、高級料理店でも使えると思う。
珍魚度 珍しい魚ではないが、流通量がきわめて少なく、手に入れるのは難しい。水産基本情報
市場での評価 入荷は少ない。高値がつく。
漁法 定置網
産地 鹿児島県、千葉県、神奈川県などなど選び方
退色していない黒いもの。触って張りのあるもの。目が澄んでいるもの。鰓が鮮紅色のもの。味わい
旬は秋から初夏で非常に長いと思う。産卵後のみ味が落ちるのかも知れないがまだ確かめていない。
大きい方がうまいが、小さくてもそこそこ味わい深い。
鱗は硬く強い、取りにくい。皮は厚く強い。骨はあまり硬くない。
透明感のある白身で血合いは赤くない。栄養
ー危険性など
ー食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)
ヒゲダイの料理・レシピ・食べ方/刺身(セビチェ、マリネなども)、煮つけ、汁(みそ汁、潮汁)、塩焼き、ソテクリックで閉じます
ヒゲダイの刺身 比較的血合いが弱く、脂は身に混在するのだと思う。透明感の中に脂の微小な粒子を感じる。三枚に下ろして体高があるので背と腹に切り分けて刺身にする。強いうま味があり、後から脂の口溶け感が感じられる。印象深い味わいなのに後味がいいのも素晴らしい点だ。
ヒゲダイの焼き切り 小型でも十二分に味わい深いのが本種の特徴だろう。単に刺身にしてもいけるが、小さい方が皮が柔らかいので焼き切りに。三枚に下ろして腹骨・血合い骨を取り、皮目をあぶって氷水に落として粗熱をとる。水分をよく拭き取り、刺身状に切る。クリックで閉じますヒゲダイの煮つけ 水を使った料理にも向いている。煮てもあまり硬く締まらず、強く煮染まらない。ここでは兜の部分を湯通しして冷水に落とし、残った鱗やぬめりを流す。これを酒・醤油・水であっさり煮上げてみた。身離れがよく、身自体にもうま味があってとてもおいしい。クリックで閉じますヒゲダイの塩焼き ここでは切身ではなく、兜の部分を梨子割りにして焼いてみた。振り塩をして1時間以上置く。表面にでてきた水分をとり、じっくりと焼き上げる。脂がのっているので、焼き上げる香りがとてもいい。皮目にイサキ科独特の風味が感じられてとてもうまい。クリックで閉じますヒゲダイのバター焼き 小振りのものを沖縄の郷土料理バター焼きにしてみた。水洗いして二枚に下ろし骨つきの方に振り塩をする。塩コショウして多めの油でこんがりとソテーする。仕上げにマーガリン(バター)で風味づけする。醤油を垂らすとご飯に合う。クリックで閉じます好んで食べる地域・名物料理
ー加工品・名産品
ー釣り情報
ー歴史・ことわざ・雑学など
ー参考文献・協力
協力/長山正孝さん(宮城県気仙沼市)
『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年)、『日本産魚類検索 全種の同定 第三版』(中坊徹次編 東海大学出版会 20130226)