ニタリ

Scientific Name / Alopias pelagicus (Nakamura,1935)

代表的な呼び名オナガザメ

ニタリの形態写真

TL 3.9m前後になる。マオナガよりもずんぐりした頭部をしており、胸鰭の先端は鈍い。

    • 魚貝の物知り度

      ★★★★★
      知っていたら学者級
    • 食べ物としての重要度

      ★★
      地域的、嗜好品的なもの
    • 味の評価度

      ★★★★
      非常に美味

    分類

    上綱軟骨魚綱板鰓亜綱サメ区ネズミザメ上目ネズミザメ目オナガザメ科オナガザメ属

    外国名

    学名

    Alopias pelagicus (Nakamura,1935)

    漢字・学名由来

    漢字 似たり
    由来・語源 オナガザメ(真オナガ)に似ているから。

    地方名・市場名

    生息域

    海水魚。主に外洋の表層〜水深150m前後。でときに沿岸近くに出現する。
    青森県八戸〜九州南岸の大平洋沿岸、伊豆諸島八丈島、豊後水道、中国東シナ海沿岸、琉球列島。
    朝鮮半島南岸、台湾、フィリピン諸島中部、インド-太平洋の亜熱帯・熱帯域。

    生態

    尾鰭の上葉が非常に長く、これでサバなどをたたき気絶させて食べる。

    基本情報

    非常に尾が長く、漁港などで見かけても目立つ存在。近縁種のマオナガと見わけがつきにくいことから「似たり」と呼ばれる。外洋を回遊しており、しばしば定置網などに入る。練り製品の原料になる。伊勢などでは「たれ(サメの干もの)」が作られるが、いずれにしろ加工原料として利用されている。

    水産基本情報

    市場での評価 産地周辺で売り買いされている。
    漁法 定置網、巻き網
    産地 神奈川県など日本各地

    選び方

    触って張りのあるもの。表面に粘液が出ていないもの。

    味わい

    旬は不明。
    鱗はざらざらして取りにくい。皮は柔らかく分厚く、ゼラチン質の部分と一体化する。骨は軟骨。
    白濁した白身で酸味が感じられる。熱を通しても硬く締まりすぎない。

    栄養

    危険性など

    食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)

    ニタリ(オナガザメ)の料理法・食べ方/揚げる(フライ、唐揚げ)、煮る(トマト煮込み、煮つけ)、汁(みそ汁)、焼く(みそ漬け、幽庵焼き)

    ニタリのフライ フライはサメ類の定番料理である。本種の切り身に塩コショウして卵と小麦粉、少量の水を合わせたものをつけて、パン粉をまぶして180度の油で揚げたもの。適度に繊維質でふんわりと柔らかく仕上げる。とてもおいしい。

    ニタリの唐揚げ(竜田揚げ) 食べやすい大きさに切り、酒・しょうゆ・みりんの地につけ込む。風味づけにしょうが、にんにく、コショウなどお好みで。揚げる直前に片栗粉をまぶしてさくっと揚げる。表面はさくっと中はふんわり揚がってとても美味。
    ニタリのムニエル ムニエルもサメ類の定番料理のひとつだ。ネズミザメ(もうか)のように硬く締まらず、ふんわり仕上がるのがいい。筋肉自体にうま味はないものの、上品な仕上がりでバターと相性がいい。
    ニタリの煮つけ 骨つきの切り身にする。これを一度、湯通しして冷水に落としぬめりを流す。酒・砂糖・しょうゆで短時間煮上げる。煮染まるのは表面だけで中まで調味料が染みていない状体でいい。全体に調味料を行き渡らせたかったら煮汁のなかで鍋止めをする。あっさりして食べ飽きぬ味。

    ニタリのトマト煮込み 適当な大きさに切り、塩コショウする。これをにんにくで風味づけしてオリーブオイルでソテー。表面がこんがりしてきたら一度取り出す。そこに玉ねぎ(エシャロットでも)、セロリ、にんじんなどの香りのある野菜を入れていため、トマト(生でもトマト缶でも)加えて月桂樹の葉などを加えて煮込んだもの。白ワインにとても合う。パンを添えて朝ご飯でもいい。

    ニタリのみそ汁 中骨や鰭周りなどを集めて置く。湯通しして冷水に落として鱗、ぬめりを流す。よく水分を切って水から煮出してみそをとく。ここでは青みにボタンボウフウ(長命草)を使ったがなんでもいい。肝を加えると濃厚な味になる。

    ニタリのみそ漬け(西京漬け) ここでは京都の白みそを使った。白みそ、みりん、酒、砂糖を合わせて地を作る。これに振り塩をして1時間以上置き、水分を拭き取った切り身を漬け込む。1日以上漬け込んだものをじっくりと焦がさないように焼き上げる。少し硬く締まるがとても上品な味わいになる。

    ニタリの幽庵焼き(祐庵焼き) 祐庵地(幽庵地)はしょうゆ・みりん・酒を同量合わせたもの。これにゆずなど柑橘類で風味づけしてもいい。切り身に振り塩をして1時間以上置き、出て来た水分をていねいに拭き取り、地につけ込む。塩をして一度さっと酒・水を合わせたもの、水で表面の塩を流すこともある。1時間以上漬け込んでじっくり焦げないように焼き上げる。イヤミのない味わいながらうま味に欠けるところがある。

    ニタリの刺身 やや赤みがかった白濁した白身で、刺身はとても淡泊。さしみしょうゆやしょうが、わさびなどで食べるとまずくはないが味わいというか個性に欠けるところがある。

    好んで食べる地域・名物料理


    たれ・サメ干し・塩さめ 伊勢地方ではサメの身を塩で味つけし、干したものを「さめのたれ」という。伊勢神宮の神饌や饗膳にのぼる干鮫(乾鮫)のこと。今日では神饌のように強く干すことはなく、一夜干しに近く、甘いみりん干しも同じく「たれ」と呼ぶことがある。「めまる(マオナガ)」、「いらぎ(アオザメ)」などが上等で、「みずざめ(ヨシキリザメ)」、「てんぐ(ウバザメ)」は下等品とされた。三重県東紀州、和歌山県でも同様のものが作られているが単に干ものである。白干し(塩干し)とみりん干しがある。本種のものは全体に柔らかく焼くとふっくらとする。

    みりん干し 同上。

    加工品・名産品

    釣り情報

    歴史・ことわざ・雑学など

    参考文献・協力

    協力/海鮮市場 マルモト(神奈川県伊勢原市)
    『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年)、『日本産魚類検索 全種の同定 第三版』(中坊徹次編 東海大学出版会)、『聞書き 三重の食事』(農文協)
  • 主食材として「ニタリ」を使用したレシピ一覧

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