体長20cm前後になる。やや側へんした円筒形で脂鰭があり、上顎よりも下顎の方が前に突出している。
ニギスの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)
-
珍魚度・珍しさ
★★
少し努力すれば手に入る魚貝の物知り度
★★★★
知っていたら達人級食べ物としての重要度
★★★
一般的(流通量は普通)味の評価度
★★★★
非常に美味
分類
硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区正真骨下区原棘鰭上目ニギス目ニギス亜目ニギス科ニギス属外国名
学名
Glossanodon semifasciatus (Kishinouye, 1904)漢字・学名由来
漢字 似鱚 Nigisu
由来 富山県での呼び名。沿岸の浅場にいるシロギスに似ているため。
〈ニギス科ニギス屬ニギス Argentina semifasciatus KISHINOUYE〉。『日本産魚類検索』(岡田彌一郎、松原喜代松 三省堂 初版1938)Kishinouye
岸上鎌吉(きしのうえ かまきち 慶応3年〜昭和4年 1867-1929)。東京帝国大学教授。動物学者・水産学者。水産学の黎明期に甲殻類、棘皮動物、魚類など様々な分野を研究した。地方名・市場名
生息域
海水魚。水深70〜430メートルの砂泥地。
青森県〜房総半島の太平洋沿岸、神奈川県三崎、駿河湾、熊野灘、遠州灘〜土佐湾の太平洋沿岸、青森県〜九州北岸の日本海沿岸、東シナ海大陸棚縁辺。
済州島、台湾南部。生態
■ 産卵は周年にわたるが、3月から9月に盛ん。
■ 水深200メートルほどの海底に生息。
■ 脂ののりはエサのツノナシオキアミで決まる。基本情報
本州から九州北部の沖合いに生息している。姿は似ているがキス(シロギス)とはまったく別系統の魚で、縁もゆかりもない。あえていえばサケなどに近い。
底曳き網の盛んな地域で比較的よく食べられているが、圧倒的に日本海側での漁獲量が多い。日本海側では至って在り来たりの食用魚である。また底曳き網のある県などでも見かける機会が多い。関東周辺では非常にマイナーな魚で鮮魚で見ることはほとんどない。
鮮魚は刺身や煮つけなど様々な料理に使えるが、鮮度落ちが早いのが難点。干ものなど加工品も少なくない。
珍魚度水産基本情報
市場での評価 ほとんどが干物加工になる。各地で鮮魚として食べられるが全国的流通は量的には少ない。値段は安い。
漁法 底曵網
産地(漁獲量の多い順) 島根県、兵庫県、鳥取県、愛知県、高知県、石川県など選び方
目が澄んでいる、身に透明感のあるもの。ややずんぐりしているものが脂がのっている。味わい
旬は秋から春。太平洋側では秋から春だが、日本海ではズワイガニ漁のない時季の底曳き網漁期と重なる。
鱗はほとんど気にならず、皮は非常に薄く柔らかい。骨は中骨以外は細く柔らかい。
白身でまったくクセのない魚。含まれる脂に独特の風味がある。
脂ののった時期には生食、焼き物などにしても美味。やや水分が多いので干物にしてよりうまい。
真子・白子もとてもおいしい。栄養
ー危険性など
ー食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)
ニギスの料理・レシピ・食べ方/生食(刺身、焼霜造り、酢じめ)、煮る(ゆあげ・ゆ煮、煮つけ)、揚げる(天ぷら、フライ、唐揚げ、薩摩揚げ)、 焼く(塩焼き、干もの)、汁(すり身・だんご汁)クリックで閉じますニギスの刺身
ニギスの刺身 関東など消費地ではなかなか食べられないが、新鮮なものは刺身にして非常に味がいい。三枚に下ろし皮を引いて腹骨を取り、小骨を抜き、刺身状に切る。見た目からは想像できないほど脂がのっていて、口の中でとろっととろける感がする。
ニギスの煮つけ 水洗いして煩わしいので頭部と尾鰭を落として使う。白子などはとても味がいいので捨てないこと。あっさり酒・しょうゆ味で煮ても、砂糖やみりんを使ってこってり甘辛にしてもとてもうまい。しかも上品な後味でいくらでも食べられる。クリックで閉じますニギスの煮つけ
ニギスの湯煮(ゆあげ、湯煮) 水洗いして水分を切り、煮立たせないようにゆでただけの簡単料理。何の味つけもしない水だけでゆでたもの。ゆですぎてはいけないが、完全に火を通すのがコツ。醤油と大根おろしや、ポン酢などお好みのもので食べる。クリックで閉じますニギスのフライ 脂は多いもののクセのない上質な白身である。水分が多いのが難点だが、火を通すことで適度に締まる。フライ材料として最上級だ。香ばしいなかに、身に豊かなうま味、皮に風味があってとてもおいしい。クリックで閉じますニギスのフライ
ニギスの天ぷら シロギスは江戸前を代表する天だねだが、ニギスも決して負けてはいない。天だねにはある種、個性的な部分、風味がなくてはならないが、皮目と脂からくる甘味は上げるとより強くなる。揚げてふんわり身が柔らかいのもいい。クリックで閉じますニギスの天ぷら
好んで食べる地域・名物料理
ーきすのだんご汁 ニギスを水洗い三枚下ろしにして皮を引く。これをよく叩いてだんごにしてしょうゆ味の汁(昆布だし、もしくはカツオ節だし)に落とす。火が通っても硬くならず、独特の脂が甘みと感じられる。毎日でもいいそんな料理だ。兵庫県但馬地方をはじめ産地では普通。醤油仕立ての他、みそ仕立てでも。クリックで閉じますめぎすのみそ汁 「めぎす(ニギス)」は水洗いしてぶつ切りにする。だしを沸かしてぶつ切りを入れてみそを溶く。薬味はお好みで。また、いいだしが出るので、カツオ節だしなどを使わず、ぶつ切りを水から煮て、みそを溶くというのもうまい。[一印上越魚市場、かねまん(新潟県上越市)で聞く 20160509]クリックで閉じますニギスのだんご揚げ 粗いすり身にしてだんご場に揚げたもの。すり身を使うと薩摩揚げになる。産地ではすり身が普通に売られているので様々な料理が作られるが、鮮魚を叩いて揚げた方がうまい。[写真/ひょうたん(兵庫県香美町香住)]クリックで閉じます関連コラム(郷土料理)
水と塩だけの、石川・福井の塩いり・浜いり
石川県、福井県で作られている「塩いり」、「浜いり」は呼び名は違うが同じ調理法だ。 「塩いり」は石川・福井両県でみられるもので、資料としても残っている。浜(漁港)・・・ 続きを開く未来永劫残したい香住の焼にぎす
古くは浜で揚がった魚貝類の多くは鮮魚ではなく、加工して山間部や近くの都市部に送られていた。無塩(ぶえん)ものなどと呼ばれている鮮魚などは冬だけのものだったのだ。・・・ 続きを開く加工品・名産品
すり身 日本海東北から山陰にかけてスーパーなどでもよく見かけるもの。薩摩揚げやだんごに使えて非常に重宝する。丸干し もっともよく見られる加工品が干もの。開きなどもあるが内臓そのままの丸干しが多い。内臓もそのままに干し上げたもの。内臓には独特の苦みがあり、うま味と脂が豊かで非常にうまい。[日本海、太平洋側など底曳き網のある地域ではもっともありふれたもの]クリックで閉じます沖うるめの丸干 高知市の大手繰りで揚がった大型の沖うるめ(ニギス)をやや強めに干したもの。まさに「うるめの丸干(ウルメイワシの干もの)」のように見えるが、独特の風味がある。[土佐の廣丸(高知市)]クリックで閉じますクリックで閉じます
焼にぎす 浜で上がったばかりのニギスを素焼きにしたもの。このまま焼き直してしょうがじょうゆなどで食べる。身や皮もうまいが、内臓のほろ苦さ、真子や白子などもおいしい。兵庫県の山間部では煮物にも使うが、豆腐などと醤油味で煮ると非常においしい。[浜貞商店 兵庫県美方郡香住町]
メギスの浜いり 石川県加賀市塩屋沖で揚がったメギスを、塩水で煮て、水分を飛ばしたもの。古くは保存食であったもの。もともとは浜(漁港)で作られていたものだが、今では鮮魚店で作り販売している。非常にうま味豊かでしかも食べやすい。[西野鮮魚店 石川県加賀市]クリックで閉じます釣り情報
ー歴史・ことわざ・雑学など
ー参考文献・協力
日本産魚類検索 全種の同定 第三版』(中坊徹次編 東海大学出版会)、『島根のさかな』(島根県水産試験場 山陰中央新報社)、『聞き書 兵庫の食事』(農文協)、『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂)