SL 30cm前後になる。鰭も含めて全体に赤く背鰭後部に黒い斑紋がある。胸鰭の中程に欠刻がある。頬部に縦に並ぶ棘がある。
キチジの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)




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魚貝の物知り度
★★★
知っていたら通人級食べ物としての重要度
★★★
一般的(流通量は普通)味の評価度
★★★★
非常に美味
分類
顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目カサゴ亜目キチジ科キチジ属外国名
学名
Sebastolobus macrochir (Günther, 1877)漢字・学名由来
漢字 喜知次、吉次、黄血魚 Kitiji
由来・語源 田中茂穂は〈冬季水戸の夜市には是が澤山並べられて、頗る美観を呈する。左程美味ではないが。それでも食品として相当の価値がある。小さいものは蒲鉾材料となる〉と記している。水戸で採取した和名だろう。この水戸での呼び名をたどると宮城県石巻にたどり着く。石巻では「吉次」と書く。
〈カサゴ科キチヂ属キチヂ〉『日本産魚類検索』(岡田彌一郎、松原喜代松 三省堂 初版1938)
Günther,
Albert Karl Ludwig Gotthilf Günther (アルベルト・ギュンター 1830-1914 ドイツ→イギリス)。動物学者。地方名・市場名
生息域
海水魚。水深100-1504m。
北海道オホーツク海沿岸、北海道〜三重県大王崎の太平洋沿岸(千葉県以南には希)、希に日本海新潟県・島根県隠岐。
朝鮮半島元山、希にピーター大帝湾、オホーツク海、サハリン南東岸、千島列島、カムチャツカ半島南東岸〜ベーリング海、アリューシャン列島(少ない)。
■ 日本海にはいない。生態
■ 卵生。
■ 北海道周辺での産卵期は2月から5月。
■ 日本海にはほとんどいない。基本情報
三重県以北の太平洋沿岸、オホーツク海などで揚がる。代表的な産地は北海道、三陸などだ。特に北海道では古くから目抜け、アラスカメヌケなどとともに赤物のひとつとして重要だった。
古くは安い魚であったが、近年マスコミなどでも取りあげられる機会が多く、超高級魚のひとつだ。関東では非常に値が高く、1キロ1万円を超えることがある。
ただ、比較的地域性が高い。
関東、北海道、東北太平洋側で人気が高く。南にいくほど知名度が低くなる。特に日本海側ではアカムツとの競合から人気薄だ。
例えば、関西では流通しているものの知名度が低い。四国・九州では存在を知らないという人も多いと思う。
関東では古くは「きんきの煮つけ」として人気があったが、高騰で冷凍輸入のアラスカキチジに取って代わられている。
高価なのでスーパーなどにはなくデパートなどで取り扱われる。
水産基本情報
選び方
赤が鮮やかであるもの。鮮度がよいほど深紅に輝いている。これが時間がたつほどにオレンジ色に変色していく、そして黄色くなり、白っぽくなる。当然、北海道網走の釣りものなどはまさに深紅に輝いている。
触って硬いもの。腹を触って、しっかりしているもの。鰓が赤く鮮やかなもの。味わい
栄養
ー危険性など
背鰭など棘には要注意。刺されると非常に痛い。ときに長く激しく痛む食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)
キチジ(きんき)の料理法・調理法・食べ方/煮る(しょうゆ煮、塩煮)、焼く(塩焼き、干もの)、揚げる(唐揚げ)、生食(皮霜造り、刺身)クリックで閉じます
キチジの煮つけ(キチジのあっさり煮) 鱗を取り、内臓をずぼ抜き(口から割り箸などを入れて鰓、内臓を取る)、もしくは腹を割って内臓を抜く。肝はもどして酒・薄口しょうゆであっさりと煮上げる。煮汁はしっかりとしょうゆ味で、魚のうまいだしが出てとてもうま味豊か、これをほぐした身にからめて食べる。
きんきの煮つけ(キチジの煮つけ) 鱗を取り、内臓をずぼ抜きする。肝は元にもどす。湯通しして冷水に落として残った鱗やぬめりを流す。水分をよく切り、東京風にこってり甘辛く煮る。味つけは酒・砂糖・しょうゆ・(料理店ではたまりしょうゆも+)、みりんを使ってもいい。調味料は身に煮染まらない加減にして、箸でつまんで煮汁に浸しながら食べるといい。クリックで閉じます
キチジの塩焼き 大型を二枚に下ろして骨側の方を適当に切る。振り塩をして1時間以上置き、じっくりと焼き上げる。焼き始めると身や皮から脂が吹きだしてきて、表面が揚げ物をしているように思える。それを熱々の内に食べるとたまらない。もちろん冷めてもうまい。食べた後は骨湯(医者殺し)を楽しむべし。クリックで閉じます
キチジの一夜干し 水洗いして、開いて立て塩か振り塩をして一夜干しにしたもの。ここでは立て塩20分、肝はそのままつけて干し上げた。単に塩焼きもうまいが、干した方がうま味が凝縮される。干した風味も好ましい。クリックで閉じますキチジの刺身 三枚に下ろして皮を引き、刺身にしたもの。口に含むと脂の溶ける感があり、とても甘味が強い。食感は釣り物ではほどよくあり、またほんの少しだが魚らしいうまさもある。肝をそえて、肝しょうゆで食べてもいい。クリックで閉じますキチジの皮霜造り 脂の多い魚で骨際、皮にうま味があるので生食向きかどうかは迷うところ。皮のうまさを生かすために三枚に下ろして、皮目に湯をかけて氷水に落とす。粗熱を取り、布に巻いて水分をよく切り、刺身状に切る。身は口に入れると表面が溶ける。湯引きした肝を添え、そのまま食べる。肝しょうゆにしてもいい。皮目にうま味もあり、とても味わい深い。あらは煮つけにして欲しい。クリックで閉じます
キチジの唐揚げ 小振りのキチジは唐揚げにして美味だ。大きいと油を使う料理には向かないが、小振りのものは揚げ物にしてもくどくならない。また開きに加工されているものもあり、それを使ってもいい。じっくり二度揚げすると骨まで食べられる。クリックで閉じます好んで食べる地域・名物料理
北海道、東北太平洋側、関東
アカムツ地域である日本海、太平洋中部以南とキチジ(キンキ)地域である関東以北太平洋側、北海道に分かれる。
湯煮(湯あげ) 単にゆでて食べるだけの料理。味つけなどは無用。昆布だしなどを使うことが普通だが、古くは単にゆでていたのだと思われる。
吉次の湯炊き 岩手県宮古の郷土料理。吉次(キチジ)を湯で火を通して醤油、大根おろしで食べる。水から煮るとゆでた汁に出る。汁ごと食べるならその方がいいし、キチジ自体を味わうならあまり煮立たせていない低温の湯に入れた方がいい。きんきの湯だき(キチジの湯煮。料理名は土地土地で違うので大切に) 水洗いする。できるだけ鱗をていねいに取り、内臓をずぼ抜き、肝はもどしておく。表面の水分をよく切り、ゆっくり煮立てないで火を通す。低温調理器で70℃前後で30-40分加熱するとより簡単にできる。これを皿に取り、昆布だしの中でほぐしながら食べる。クリックで閉じます加工品・名産品
釣り情報
ー歴史・ことわざ・雑学など
東京市場では特別に名がない 〈近頃、東京市内の魚店へ澤山に表れるやうになったのは上記の(茨城県)久慈方面やその他の地方からの入荷であろう。〉『食用魚の味と栄養』(田中茂穂 時代社 1943)
東京では煮つけの魚 主な料理法は煮つけ。煮つけ魚とされることが多い。
総菜魚 古い図鑑などでは総菜魚と位置づけされている。
安かった 1960年代後半までは値の安い魚であった。
肥料 大正時代に釧路では動力船による底曳が始まり、その頃、キチジはほとんどが肥料となってしまっていたという。『釧路のさかなと漁業』(釧路叢書 釧路市)
笹かまぼこ 古くはとれすぎて「名物笹かまぼこの材料にしていた」という。(宮城県石巻漁港にて)
ブランド 網走市では「釣キンキ」をブランド化している。
赤物 オオサガ、サンコウメヌケなど「目抜け類」とともに「赤物」と言われる。参考文献・協力
『日本産魚類検索 全種の同定 第二版』(中坊徹次編 東海大学出版会)、『魚と貝の事典』(月賢二 柏書房」)、『新北のさかなたち』(水島敏博、鳥澤雅他 北海道新聞社)、『釧路のさかなと漁業』(釧路叢書 釧路市)、『新釈魚名考』(榮川省造 青銅企画出)、『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂)地方名・市場名 ?
チュウアカジ[中赤魚]
場所福島県いわき市 サイズ / 時期中型
オオアカジ[大赤魚]
場所福島県いわき市 サイズ / 時期大型魚
コアカジ[小赤魚]
場所福島県いわき市 サイズ / 時期小型 参考文献