キチジ

Scientific Name / Sebastolobus macrochir (Günther, 1877)

代表的な呼び名キンキ

キチジの形態写真

SL 30cm前後になる。鰭も含めて全体に赤く背鰭後部に黒い斑紋がある。胸鰭の中程に欠刻がある。頬部に縦に並ぶ棘がある。
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SL 30cm前後になる。鰭も含めて全体に赤く背鰭後部に黒い斑紋がある。胸鰭の中程に欠刻がある。頬部に縦に並ぶ棘がある。SL 30cm前後になる。鰭も含めて全体に赤く背鰭後部に黒い斑紋がある。胸鰭の中程に欠刻がある。頬部に縦に並ぶ棘がある。SL 30cm前後になる。鰭も含めて全体に赤く背鰭後部に黒い斑紋がある。胸鰭の中程に欠刻がある。頬部に縦に並ぶ棘がある。SL 30cm前後になる。鰭も含めて全体に赤く背鰭後部に黒い斑紋がある。胸鰭の中程に欠刻がある。頬部に縦に並ぶ棘がある。
    • 珍魚度・珍しさ

      ★★
      少し努力すれば手に入る
    • 魚貝の物知り度

      ★★★
      知っていたら通人級
    • 食べ物としての重要度

      ★★★
      一般的(流通量は普通)
    • 味の評価度

      ★★★★
      非常に美味

    分類

    顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目カサゴ亜目キチジ科キチジ属

    外国名

    学名

    Sebastolobus macrochir (Günther, 1877)

    漢字・学名由来

    漢字 喜知次、吉次、黄血魚 Kitiji
    由来・語源 「キチヂ」の初出は『内村鑑三の魚類目録(1884年、未発表)について』(時田●(文字不明)、小林喜雄)である。
    田中茂穂は自ら採取して和名と採用したように記している。〈冬季水戸の夜市には是が澤山並べられて、頗る美観を呈する。左程美味ではないが。それでも食品として相当の価値がある。小さいものは蒲鉾材料となる〉。この水戸での呼び名をたどると宮城県石巻にたどり着く。石巻では「吉次」と書く。
    〈カサゴ科キチヂ属キチヂ〉『日本産魚類検索』(岡田彌一郎、松原喜代松 三省堂 初版1938)
    Günther,
    Albert Karl Ludwig Gotthilf Günther (アルベルト・ギュンター 1830-1914 ドイツ→イギリス)。動物学者。

    地方名・市場名

    生息域

    海水魚。水深100-1504m。
    北海道オホーツク海沿岸、北海道〜三重県大王崎の太平洋沿岸(千葉県以南には希)、希に日本海新潟県・島根県隠岐。
    朝鮮半島元山、希にピーター大帝湾、オホーツク海、サハリン南東岸、千島列島、カムチャツカ半島南東岸〜ベーリング海、アリューシャン列島(少ない)。
    ■ 日本海にはいない。

    生態

    ■ 卵生。
    ■ 北海道周辺での産卵期は2月から5月。
    ■ 日本海にはほとんどいない。

    基本情報

    三重県以北の太平洋沿岸、オホーツク海に生息する深海魚だ。代表的な産地は北海道、三陸など。特に北海道では古くから目抜け、アラスカメヌケなどとともに赤物のひとつとして重要だった。
    古くは安い魚であったが、近年マスコミなどでも取りあげられる機会が多く、超高級魚のひとつだ。関東では非常に値が高く、1キロ1万円を超えることがある。
    ただ、比較的地域性が高い。
    関東、北海道、東北太平洋側で人気が高く。南にいくほど知名度が低くなる。特に日本海側ではアカムツとの競合から人気薄だ。
    例えば、関西では流通しているものの知名度が低い。四国・九州では存在を知らないという人も多いと思う。
    関東では古くは「きんきの煮つけ」として人気があったが、高騰で冷凍輸入のアラスカキチジに取って代わられている。高価だが東京都などでは非常に人気が高くスーパーなどでも売られている。
    珍魚度 普通の食用魚だ。地域にもよるが、どこにでも売られているというものではないが、ちょっと探せば手に入る。

    水産基本情報

    市場での評価 近年の脂嗜好から、非常に高価となっている。関東では入荷量は決して多いとは言えないものの絶え間なく入荷してくる。小さいものは安いが、大きくなると非常に高価だ。網走などで釣りものがブランド化されており人気がある。
    漁法 底引き網、釣り
    主な産地 北海道、青森県、岩手県、宮城県、福島県

    釣もののキチジ 網走では「釣きんき」でブランド化している。大きくて赤身が強く鮮やかなものは、釣りものではkgあたり卸値10000円を超えるのは普通。

    選び方

    赤が鮮やかであるもの。鮮度がよいほど深紅に輝いている。これが時間がたつほどにオレンジ色に変色していく、そして黄色くなり、白っぽくなる。当然、北海道網走の釣りものなどはまさに深紅に輝いている。
    触って硬いもの。腹を触って、しっかりしているもの。鰓が赤く鮮やかなもの。

    味わい

    旬は秋から冬だと思うが、年間を通して味がいい。
    棘が細く鋭く強い。刺されると長く痛むので、用心して下ろすべきだ。
    鱗は柔らかく取りやすい。皮は厚みがあって強い。骨は柔らかい。
    白身で血合いはほとんどない。皮下、身全体に脂が混在する。

    白く見えるのは脂が身に混在しているため。比較的低温で液化して、また冷えるとすぐに固まる。
    下ろして肝が大きいととてもうれしい。煮つけなどは肝があるかないかで、魅力度が変わる。

    栄養

    危険性など

    背鰭など棘には要注意。刺されると非常に痛い。ときに長く激しく痛む。

    食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)

    キチジ(きんき)の料理・レシピ・食べ方/煮る(しょうゆ煮、塩煮)、焼く(塩焼き、干もの)、揚げる(唐揚げ)、生食(皮霜造り、刺身)

    キチジの煮つけ(キチジのあっさり煮) 鱗を取り、内臓をずぼ抜き(口から割り箸などを入れて鰓、内臓を取る)、もしくは腹を割って内臓を抜く。肝はもどして酒・薄口しょうゆであっさりと煮上げる。煮汁はしっかりとしょうゆ味で、魚のうまいだしが出てとてもうま味豊か、これをほぐした身にからめて食べる。

    きんきの煮つけ(キチジの煮つけ) 鱗を取り、内臓をずぼ抜きする。肝は元にもどす。湯通しして冷水に落として残った鱗やぬめりを流す。水分をよく切り、東京風にこってり甘辛く煮る。味つけは酒・砂糖・しょうゆ・(料理店ではたまりしょうゆも+)、みりんを使ってもいい。調味料は身に煮染まらない加減にして、箸でつまんで煮汁に浸しながら食べるといい。

    キチジの塩焼き 大型を二枚に下ろして骨側の方を適当に切る。振り塩をして1時間以上置き、じっくりと焼き上げる。焼き始めると身や皮から脂が吹きだしてきて、表面が揚げ物をしているように思える。それを熱々の内に食べるとたまらない。もちろん冷めてもうまい。食べた後は骨湯(医者殺し)を楽しむべし。

    キチジの一夜干し 水洗いして、開いて立て塩か振り塩をして一夜干しにしたもの。ここでは立て塩20分、肝はそのままつけて干し上げた。単に塩焼きもうまいが、干した方がうま味が凝縮される。干した風味も好ましい。
    キチジの刺身 三枚に下ろして皮を引き、刺身にしたもの。口に含むと脂の溶ける感があり、とても甘味が強い。食感は釣り物ではほどよくあり、またほんの少しだが魚らしいうまさもある。肝をそえて、肝しょうゆで食べてもいい。
    キチジの皮霜造り 脂の多い魚で骨際、皮にうま味があるので生食向きかどうかは迷うところ。皮のうまさを生かすために三枚に下ろして、皮目に湯をかけて氷水に落とす。粗熱を取り、布に巻いて水分をよく切り、刺身状に切る。身は口に入れると表面が溶ける。湯引きした肝を添え、そのまま食べる。肝しょうゆにしてもいい。皮目にうま味もあり、とても味わい深い。あらは煮つけにして欲しい。

    キチジの唐揚げ 小振りのキチジは唐揚げにして美味だ。大きいと油を使う料理には向かないが、小振りのものは揚げ物にしてもくどくならない。また開きに加工されているものもあり、それを使ってもいい。じっくり二度揚げすると骨まで食べられる。

    好んで食べる地域・名物料理

    今や全国的に有名な食用魚となっている。

    めんめの湯煮 液体を使い、低温で煮立たせないようにして火を通す料理は日本全国にあるようである。地域地域で料理名は違っているが、北海道では「湯煮」ということが多いようだ。北海道目梨郡羅臼町では地物の羅臼昆布(標準和名はオニコンブとも、マコンブの地方形であるとも)と水、塩でゆっくり煮立たせないように煮上げる。
    ゆっくり煮立たせないことでうま味や脂が液体に放出しないで熱を通すことが出来る。しかもふんわりと口の中でとろける舌触りになる。まるで豊かなうま味を凝縮したババロアのようである。

    あかじの湯だき 岩手県宮古の郷土料理だ。キチジをやや低い温度でゆでて、醤油や大根おろしで食べる。北海道の湯煮と同様の料理である。セイダガレイ(サメガレイ)やマダラでも作る。
    キチジ(上)とアカムツ(下)
    キチジ(上)は日本海には生息していない。三陸以北で水揚げが多く、関東では古くから食べられていた。
    アカムツ(下)は日本海の底曳き網でまとまって揚がり、三陸以南でも水揚げがあるが、日本海ほど多くない。
    東のキチジ、西のアカムツといった感じがする。

    関連コラム(郷土料理)

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    加工品・名産品

    きんきんの干物 北海道
    きんき干もの(キチジの開き干し) 新鮮な個体を開いて塩をして干したもの。塩分濃度が低く、鮮魚を焼いたもの以上にうま味がある。[牧屋 神奈川県小田原市]
    吉次の笹蒲鉾 宮城県では昔、キチジをすり身にして笹かまぼこの原料にしたこともあったらしい。今も「吉次」、「きんき」などとうたっているものがあるが、タラ類の比率の方が多いのは難点ではあるが味はとてもいい。

    釣り情報

    歴史・ことわざ・雑学など

    東京市場では特別に名がない 〈近頃、東京市内の魚店へ澤山に表れるやうになったのは上記の(茨城県)久慈方面やその他の地方からの入荷であろう。〉『食用魚の味と栄養』(田中茂穂 時代社 1943)
    東京では煮つけの魚 主な料理法は煮つけ。煮つけ魚とされることが多い。
    総菜魚 古い図鑑などでは総菜魚と位置づけされている。
    安かった 1960年代後半までは値の安い魚であった。
    肥料 大正時代に釧路では動力船による底曳が始まり、その頃、キチジはほとんどが肥料となってしまっていたという。『釧路のさかなと漁業』(釧路叢書 釧路市)
    笹かまぼこ 古くはとれすぎて「名物笹かまぼこの材料にしていた」という。(宮城県石巻漁港にて)
    ブランド 網走市では「釣キンキ」をブランド化している。
    赤物 オオサガ、サンコウメヌケなど「目抜け類」とともに「赤物」と言われる。

    参考文献・協力

    協力/野圭太さん(丸の野水産 北海道羅臼町 ■https://www.tabechoku.com/producers/27483)
    『日本産魚類検索 全種の同定 第三版』(中坊徹次編 東海大学出版会)、『魚と貝の事典』(月賢二 柏書房」)、『新北のさかなたち』(水島敏博、鳥澤雅他 北海道新聞社)、『釧路のさかなと漁業』(釧路叢書 釧路市)、『新釈魚名考』(榮川省造 青銅企画出)、『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂)

    地方名・市場名

    フレソイ
    場所アイヌ語 
    キンギョ
    場所北海道、青森県八戸 サイズ / 時期10cm以下 参考青森県水産技術センター 
    キンキン[黄金魚]
    場所北海道札幌・胆振・日高、青森県 参考青森県水産技術センター 
    メンメ
    場所北海道網走市・根室・羅臼町 参考聞取 
    メイセン
    場所北海道羅臼町 参考聞取羅臼町野家 
    メンメン
    場所北海道釧路 参考『釧路のさかなと漁業』(桜井基博、山代昭三、尾身東美、阿部晃治 釧路叢書) 
    メイメイセン
    場所北海道釧路 参考文献 
    ジャミキン
    場所北海道釧路市 参考『釧路のさかなと漁業』(桜井基博、山代昭三、尾身東美、阿部晃治 釧路叢書) 
    メメキン
    場所宮城県石巻市 参考緒方清夫さん(宮城県石巻市) 
    アスナロ
    場所神奈川県三崎 備考田中茂穂は〈三﨑にあるが極めて少ない〉とある。 参考『食用魚の味と栄養』(田中茂穂 時代社 1943) 
    チュウアカジ[中赤魚]
    場所福島県いわき市 サイズ / 時期中型 
    オオアカジ[大赤魚]
    場所福島県いわき市 サイズ / 時期大型魚 
    コアカジ[小赤魚]
    場所福島県いわき市 サイズ / 時期小型 参考文献 
    アカジ
    場所福島県小名浜、茨城県久慈 参考文献 
    アカチヨ
    場所茨城県大津 参考福島の海産動物方言 
    キチジ
    場所茨城県水戸、宮城県石巻 参考文献 
    キンキ[黄金魚]
    場所宮城県、福島県相馬市・郡山市、関東の市場など 備考黄金色に輝く魚の意味。漢字では黄金魚となる。金色に輝くで「き」は魚名語尾だろうか。 
    ショウキン[小きん]
    場所北海道 サイズ / 時期12cm~13cm 備考キンギョ、ジャミキン、ショウキンなど大きさで呼び名を変えた。 
    メメセン
    備考黄金色に輝く魚の意味。漢字では黄金魚となる。 
  • 主食材として「キチジ」を使用したレシピ一覧

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