小きんきもやっぱり煮つけかな
東京都民は昔々から「きんき」が大好きだった

いきなり話の寄り道、「きんき(キチジ)は昔から安かったのか」について。
1960年代まで、新橋(現山手線新橋駅)から築地までルノー(ルノーとは限らなくて背の高い車だったらしい)と呼ばれた乗り合いタクシーがあった。この乗り合いタクシーで仕入れに行っていたという、すし職人によく昔の話を聞いたものである。
「きんき」については、
〈(1950年代)新橋の食堂で「きんきの煮つけ」を何度か食べたことがあるが、高くもなかったけど、それなりの値段だったよ〉
この食堂は何を食べてもうまかったが、煮つけで有名だったらしい。
そのときの新橋の食堂の味は〈サッカリンの甘い醤油味〉だったけど、無闇にうまかったらしい。
いろんな人に「きんき」の値段について聞取しているが、「きんきは昔はとても安かった」とは簡単には言い切れないところがある。
東京都内で蒲鉾になったり、釧路で大正時代(1912-1926)に肥料にしていた記録が残っているが、釧路の場合の問題点は流通である。
明治以来、東京都内への魚の供給で重要なのが東北本線であり、常磐線である。
ともに「きんき」の産地につながっており、東京都での「きんき」の歴史は古い。
さて、最近、「きんきの煮つけ」は上品な味よりも、こってり甘辛いのがよくなっている。
今回の、50g〜100gの大小入り交じりも煮つけも甘辛こってり矢鱈にうまい。
肝など濃厚な味なのに、後味が軽い。
肝の味がすーっと消えてなくなるのに人生のむなしさを感じる。
そして、ボクのようなデブにとって、「きんきの煮つけ」でご飯、くらい恐いことはない。
まさかの二合飯、だったかも知れない。
これ飲んだら、医者はいらぬ、な

昼下がりに、腹に真空地帯が出来、おやつにご飯といきそうになったがぐっと我慢して、「医者殺し(骨湯)」を作る。
この甘辛い汁の、浮き上がった脂と、やたらにうま味豊かなところとで、意識を失いそうになる。
「医者殺し」ぶっかけで、ご飯を食べればよかったかも……。
大小混じりは消費者にはありがたい、けど

八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産に0.5kgの袋詰め「きんき(キチジ)」がものすごく安く売られていた。宮城県産だろうけれど、なぜ安いのか?
安いのにはわけがある。大きさが揃っていないのだ。小は50g、大は105gである。大だけを集めれば単価は2倍、小だけを集めてもこの日の相場にはなると思う。
世の中、未利用魚、未利用魚というけれど、未利用魚は魚種ではなく、選別する人手が足りないために生まれるのだ、ということを知らない愚かなヤカラが多すぎて困る。
今回の魚も、できればもっと細かく大きさを分けたかったはずなのである。
さて、非常に脂が乗っているし、鮮度もいい。
半分煮つけに、半分塩焼きにする。
水洗いして肝は腹の中に戻す。
両側に切れ目を入れて、湯通しする。
冷水に落として残った鱗とぬめりを流す。
水分をよくきり、酒・砂糖・醤油・水で甘辛く煮る。
調味料はなんでもいいのでお好みで。
■舵丸水産は、一般客に優しいので、ぜひ近くにお住まいの方は一度お寄り頂きたい。