クロムツ

Scientific Name / Scombrops gilberti (Jordan and Snyder, 1901)

クロムツの形態写真

SL 70cmを超える。紡錘形で体色は微かに紫がかった黒。金色でも茶系の色合いも感じられない。第1鰓弓の鰓耙数は上1-2、下9-13。
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SL 70cmを超える。紡錘形で体色は微かに紫がかった黒。金色でも茶系の色合いも感じられない。第1鰓弓の鰓耙数は上1-2、下9-13。SL 70cmを超える。紡錘形で体色は微かに紫がかった黒。金色でも茶系の色合いも感じられない。第1鰓弓の鰓耙数は上1-2、下9-13。第1鰓弓の鰓耙数は上1-2、下9-13。写真は上2、下11
    • 珍魚度・珍しさ

      ★★★
      がんばって探せば手に入る
    • 魚貝の物知り度

      ★★★★
      知っていたら達人級
    • 食べ物としての重要度

      ★★★
      一般的(流通量は普通)
    • 味の評価度

      ★★★★★
      究極の美味

    分類

    顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目スズキ亜目ムツ科ムツ属

    外国名

    学名

    Scombrops gilberti (Jordan and Snyder, 1901)

    漢字・学名由来

    漢字 黒鯥 Kuromutu
    由来・語源 ムツ科2種の中でも体色の黒いものという意味。クロムツの学名・和名は古いが、長い間ムツは1種類か、2種で意見が分かれていた。やがて1938年に1種になる。これが2種類に分類されるようになり、その黒い方であるという意味合い。ムツは、脂っこいことを「むつっこい」、「むつこい」、「むっちり」などというに由来。脂が多い魚の意味。
    ちなみに国内のムツ科は3種になり、アフリカ沿岸にも1種いるなど種はもっと増える。
    鈴木新氏(この方の来歴は不明)の調査によると神奈川縣三崎ではツノクチ、メダカ、キンムツの三型を分ち、
    ツノクチは口が尖って、頭が小く、體に平みがあって丸い。
    メダカは口が圓く、頭大きく、體は細長く、目が大きい。
    キンムツは體形メダカに似て、色は白みがゝった銀色を帯び、味は良好で且つ最も淺所に生息するが、数量は多くない。
    ツノクチとメダカとは同様に黑色であるが、ツノクチの方が稍や大きく、数量も多く味もよい

    田中茂穂はムツ科は1種としながらも、3形を挙げている。また文意からするとキンムツ(金ムツ)はギンムツ(銀ムツ)の誤りの可能性がある。(分かりやすく改行)
    『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年)
    スズキ群ムツ科ムツ屬 ムツ Scombrops boops クロムツ Scombrops boops は本種の成魚である。若魚は體が褐色で、鱗は離脱しやすいが、老成すると體は青黒色となり、鱗は硬くなり、離脱し難くなる〉。『日本産魚類検索』(岡田彌一郎、松原喜代松 三省堂 初版1938)
    『魚類の形態と検索』(松原喜代松 岩崎書店 1955)にはムツ1種のみ。『魚類大図鑑 南日本の沿岸魚』(益田一、荒賀忠一、吉野哲夫 東海大学出版会 1975)にはクロムツとムツがある。
    Jordan
    David Starr Jordan〈デイビッド・スター・ジョーダン(ジョルダン) 1851-1931 アメリカ〉。魚類学者。日本の魚類学の創始者とされる田中茂穂とスナイダーとの共著『日本魚類目録』を出版。

    地方名・市場名

    ロクノウオ オンシラズ
    備考ムツと同じ。江戸時代、仙台伊達藩主は代々陸奥守であったため、「むつ」と呼ぶことをはばかって「ロクノウオ」といった。「ろく」は「六」であり「むつ」を表す。 
    オキムツ カツチャムツ カナムツ カラス クジラトウシ クロマツ ツノクチ ムツゴロウ ムツメ メダカ メバリ モツ ロク
    備考ムツと同じ。 参考文献より。 

    生息域

    海水魚。水深200-500m。
    岩手県、宮城県・[宮城県気仙沼]、福島県、房総半島南東岸、相模湾、伊豆大島、伊豆半島東岸。

    生態

    基本情報

    関東では伊豆半島、伊豆諸島のクロムツとムツを確実に区別して売っているが、これが性格かどうかはわからない。ただクロムツの方が圧倒的に高価。魚類中もっとも値の張る魚である。
    関東では冬の魚として珍重し、また春が近づくと膨らんでくる卵巣を「むつ子」としてよろこぶ。
    本来は煮つけ用の魚だったがあまりの高騰に刺身として出されることが多くなっている。
    珍魚度 一般的な感覚からすると珍魚だ。成魚は相模湾などでしか揚がらず、非常に高価である。主に寒い時季から春に揚がる魚だが、小売店などではめったに見かけない。

    水産基本情報

    市場での評価 入荷量は少ない。小型のものはまったく見られず、大型魚ばかり入荷してくる。市場ではムツとクロムツは明瞭に区別される。ともに高級魚だが、クロムツの方が高い。超高級魚。
    漁法 延縄
    主な産地 東京都、静岡県ほか

    選び方

    黒光りしているもの。触って張りのあるもの。

    味わい

    旬は秋から冬。春になり卵巣、精巣がふくらむと脂がやや落ちてくる
    鱗は軟らかく大きく取りやすい。皮は厚みがあって強い。
    血合いが赤く、透明感のある白身だが、脂が身に混在するので白濁しやすい。熱を通しても硬く締まらない。

    むつ子 晩冬から春になるとクロムツの卵巣が膨らんでくる。関東ではこれを珍重する。卵粒が細かく、甘味があり、舌にねっとりとこくがある。

    栄養

    危険性など

    食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)

    クロムツの料理・レシピ・食べ方/煮る(煮つけ、芝煮)、汁(鍋、潮汁、みそ汁)、焼く(塩焼き、幽庵焼き、西京漬け)、生食(刺身)、蒸す(酒蒸し)、ソテー
    クロムツの煮つけ煮つけ 2000年よりも前はクロムツは煮つけ用の魚として有名だった。実際に煮て甘味があり実に美味しい。
    クロムツのちり鍋 身からもあらからも実にいいだしが出る。その上、煮た身が甘く美味しいので鍋ものなのに最適。みそ仕立て、塩味にしてもいい。
    クロムツの幽庵焼き(祐庵焼き)幽庵焼き(祐庵焼き) みそ漬けや単に塩焼きにしても美味しい。焼いても硬く締まらず、適度に繊維質なので口の中で適度にほぐれて甘い。
    クロムツの刺身刺身 身はほんのりと赤みがかり血合いが強い。脂が身に混在して実に美味。
    クロムツの蒸しもの蒸す 脂がのっていながら、味が上品。しかも上質の白身なので蒸しても味わい深い。いいだしが出るので一緒に蒸し上げた野菜なども美味しく食べられる。

    好んで食べる地域・名物料理

    加工品・名産品

    釣り情報

    水深200〜300メートルを胴つき仕掛けか天秤しかけ、餌はイカの短冊でねらう。

    歴史・ことわざ・雑学など

    ムツ野郎 口腔内が黒いことから。要するに腹黒いという悪口だ。

    参考文献・協力

    『日本産魚類検索 全種の同定 第二版』(中坊徹次編 東海大学出版会)、『新釈魚名考』(榮川省造 青銅企画出版)、『魚と貝の事典』(望月賢二 柏書房)、『魚河岸の魚』(高久久 日刊食料新聞社 1975)
  • 主食材として「クロムツ」を使用したレシピ一覧

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