温暖化を感じる魚15 ブリ

北海道から九州までブリのとれない地域はない


ブリはアジ科ブリ属の魚である。国内にブリ、ヒラマサ、カンパチ、ヒレナガカンパチと4種いるブリ属の中でももっとも北に生息域をもっている。
ヒラマサやカンパチとは違い生息域が琉球列島を除く日本列島周辺という、国内を代表する食用魚である。
最大で全長1m以上、20㎏前後になる大形魚でもある。
生息海域は古くは本州止まり、索餌回遊で北海道南部まで行くていどの魚だった。産卵場所は鹿児島県など九州周辺とか太平洋でも紀伊半島以西だ。生まれた稚魚は暖流に乗って成長しながら北を目指す。北の回遊域は津軽海峡周辺までで、以北は水温が低くて回遊できなかったのだ。それが今や北海道全沿岸に回遊している。

2010年頃、北海道オホーツク海をのぞむ、紋別からケータイがきた。
「見たことのない魚が揚がっている」という。
写真を見せてもらったら、なんのことはないブリだった。ただ、オホーツク海といえばサケを狙っているわけで、そこにとれたことのないブリとは、驚くのは無理がない。競ったことのない魚である上に、サケ1尾用の箱に入らないので大騒動になっているという。
まさか以後、北海道がブリの水揚げ量日本一に北なるなんてだれも想像していなかったはずだ。

この2010年は北海道で海洋熱波(一定期間高水温が続くこと)が見られた年に当たる。遊泳能力の高いブリがオホーツク海に現れた原因はそこにあるのだろうが、それにしても北海道全域でのブリの漁獲量はすさまじい。

初夏の羅臼では時知らずではなくブリが揚がる


本来、北海道では晩春から夏にかけて北の海域から「時知らず(サケの未成熟の個体で非常に高価)」が来遊してくる。ところがオホーツク海、羅臼ではサケではなくいきなりブリが揚がっているのである。
「時知らず」10数本に対して、それに倍するブリが、6月なのにとれている。
「時知らず」の水揚げは増えないままに、ブリの水揚げが徐々に増えていくのである。

大きさによって呼び名が替わる出世魚だが、全長50㎝以下は未利用魚で、70㎝くらいになるとやや高値をつける。
多くの地域で小は10㎝前後からとれ始めるのに対して、北海道でとれるのは成魚だけだ。北海道では売れるサイズからとれ始めるのである。
長崎県など多くの地域で大量のブリが揚がるのは索餌回遊(豊かな北の海域に向かう)するブリと、産卵回遊(産卵場所である南の海域に移動する)するブリの、南北の大動脈に沿っているからだが、北海道の場合はあくまで索餌回遊の途上でしかない。

7月なのに脂が乗っている北海道のブリ


富山県、石川県や新潟県佐渡のブリは冬に脂が乗るが、北海道は秋になると脂が乗ってくる。
北海道産秋のブリは2015年くらいには一定の評価が生まれはじめ、2025年には高値がつく。
ブリの旬が変わって来ているのである。

プロは見向きもしないのが7月のブリである。ただ、北海道産はこんなときにもそこそこに脂が乗っているのである。
知り合いの仲卸にすすめられた7月の羅臼産ブリなど、びっくりするほど脂が乗っていた。
9月になると北海道ブリは値を上げはじめ、11月になるとより高値となる。

飛騨高山の塩ブリは北海道産で作られている


歳取り魚(大晦日から正月にかけて膳を飾る魚)がブリという地域は本州中部以西であるが、もっとも有名なのが岐阜県飛騨地方、長野県松本である。
江戸時代から富山湾で揚がったブリに塩をして飛騨地方まで運んでいた。
飛騨高山では年末に「塩鰤市」が行われ、「飛騨鰤」と名前を変えて野麦峠を越えて松本平に届けられた。
この伝統ある「塩鰤」が北海道産に置ことは、暮れの飛騨高山の町で「塩鰤」を探し歩くと見えてくる。

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