202303/30掲載

3月24日  マアジ・イサキなめろう比べ

やはりマアジがいちばん

アジのなめろう

40年以上前のことだが、防波堤釣りに外房千田(現千葉県南房総市)に行ったはいいが、荒天のために磯はおろか港にも入れなかった。天気予報くらい聞いて(念のために当時は電話)から来るべきだったとは思ったものの、もう遅い。お金がないのでおんぼろシビックで車中泊したその日の夕食は白浜あたりの食堂でとった。
あまりにも寒いので熱燗をお願いしたら、「悪いねイサキしかなくて」と言ってオバチャンが出してくれたのが、「なめろう」だった。
10年間くらい防波堤釣りに外房に通っていたが、「なめろうの基本はアジなんだ」と心に刻んだ気がする。
ちなみに魚の身をみそ、香辛野菜と包丁で叩いて作る料理を千葉県外房や徳島県南部では「なめろう」という。三陸などでは「みそたたき」だ。魚の料理は同じ物でも地域ごとに呼び名が違う。徳島県南部の漁師はマグロ漁などで日本各地を巡っている。「なめろう」という言葉が徳島県南部に存在するのはこの漁師さんたちの交流からかも知れない。
ちなみにボクが「なめろう」というのは外房で最初に教わったからで、三陸で教わっていたら「みそたたき」と言うと思う。それがスジというものだ。
さて、「悪いね」と言うくらいだから「イサキのなめろう」は「マアジのなめろう」よりも劣るのだろうか?

イサキもうまいと思うがやや劣る

イサキのなめろう

3月〜8月にかけて両種の身質の変化を見ているので、両種揃い踏みという日もある。せっかくなので並べて比べてみた。
材料はねぎと三重県四日市のみそとしょうがだけの一番シンプルなものだ。いつもはいきなり酢をかけるのだが、今回は酢をかけないで交互に食べる。
酒もビールも飲まないで真剣にじっくり吟味して食べてみたが、やはりマアジが上だ。イサキだってまずいわけではないが、並べて食らうとやはりマアジに箸が行く。
マアジは背の青い魚(回遊魚)の味と、白身魚の味を併せ持つが、背の青い魚の味の方が強い。
イサキは白身魚の味というよりも磯魚特有の白身の味であり、背の青い魚の味があまり感じられない。
「なめろう」に欠かせないのは背の青い魚の味なのだ。
アジ以外の「なめろう」は、外房の民宿でタカベ、ホウボウ、マダイ、ヒラメ、マゴチと食べているが、タカベがいちばんおいしかったと記憶している。ヒラメ、マダイ、マゴチはあえて「なめろう」にする必要はなく、きっと「悪いねアジがなくて」といったものだ。
味見している内に、今年は徹底的に「なめろう」してみよう、などという思いが浮かんできた。

このコラムに関係する種

マアジのサムネイル写真
マアジJapanese horse-mackerel, Japanese jack mackerel海水魚。大陸棚を含む沖合〜沿岸の中・下層。北海道全沿岸〜九州南岸の日本海・東シナ海・太平洋沿岸、瀬戸内海、屋久島、種子・・・・
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イサキのサムネイル写真
イサキChicken grunt 三線磯鱸、三線雞魚、黃雞仔、雞仔魚、番仔加誌、黃公仔魚、黃雞魚、三爪仔、雞魚(澎湖諸島)、青筆海水魚。浅い岩礁域。新潟県〜九州南岸の日本海・東シナ海沿岸[長崎県橘湾にはいない、もしくはほとんどいない]、瀬戸内海、・・・・
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