野締めなのにびっくり美味なメイチダイ

野締めなのか疑わしくなるほど、しっかりした身に感激


刺身にするとき必ず、下ろしながら味見でちょっとつまむことが多い。
今回の小振りのものは、身色は野締めだが、味は活魚以上かも知れないと驚かされた。
水揚げから12時間ほどで、うま味成分であるイノシン酸が爆発的に増えたのだろう。
切り身を醤油をつけずに、そのまま口に放り込んでおいしいと思えた。

素直に、刺身から食べてみる。
活魚のメイチダイにはない、強いうま味がある。
呈味成分が複雑に絡みあって甘いとも感じる。
野締めのメイチダイは外見はちょっと寂しい感じがするのだけど、刺身はフルバンドのうまさが感じられる。
身が柔らかい分、余計にうま味が強く感じられるのかも知れない。
最後の一切れまで味がだれない。

皮目を焼いた方が万人向きの味となる、後は好みだ


湯を皮にかけて切りつける皮霜造りと、焼いて切りつける焼霜造りがあるがメイチダイの皮は厚みがあって強いので、あぶって切りつける方がいい。
あぶった皮の香ばしさに、その直下の身の脂分の豊かであること、身のうま味の強さなどで刺身にはない味になる。
純粋に身の味を楽しむのなら刺身だが、焼霜造りは、プラス皮の豊かなうま味なので1切れの存在感が強い。
立秋後に旬を迎えて、9月に最旬を迎える。
楽しみだ、次回の小田原。

小田原でメイチダイは活魚での水揚げが主流である


8月26日の神奈川県小田原市、小田原魚市場、二宮定置は大漁だった。種類も多く、今の時季、なくてはならないメイチダイもたっぷりとれていた。
二宮定置の若い衆たちもてんやわんやの忙しさ。
そんな最中、稚魚や変わった生き物を探す、ボクはただの邪魔者でしかない。
というのは何度も書いた。
いつもバケツにできるだけ売れないような魚を放り込んでいくのだけど、今回は野締めで、小振りだが(26cm・541g)、メイチダイも1尾入っていた。

古く相模湾ではあまりとれないし、安い魚だったメイチダイが急激に値を上げて、高級魚の代名詞になったのは、まとまって揚がるようになり、扱いによって味が変わることがわかったからだ。
今現在、メイチダイは小田原では活魚が中心である。
8月、9月には小田原魚市場の生け簀に大量にぴちゃぴちゃと音を立てていることがある。
どこの定置でもできるだけ活かして持ち帰るからだ。
死んでしまったら微妙な存在となってしまう。
もちろん売り物にはなるが、ほかの魚と一緒になって安く売られたりもする。
これぞ漁港の宝箱のようなものなのだが、もっとこの混ぜこぜに高値がつくといいと思っている。
ちなみにこの混ざり物を手に入れるには、神奈川のスーパー ヤオマサや小田原市周辺の魚屋に行くしかない。

小型だし、見た目がちょっと寂しい感じだし


これほど活魚と野締めの値段の差の大きい魚もいないだろう。
当然、陸送もの(地方から東京都などに送られてくる魚)も基本的に活け締め(生きている内に即死させた)に限る。
今回の個体は、最近、メイチダイと言えば活魚でなければとなっているので、漁の間に落ちこぼれたのかも知れない。
帰宅後、計測して撮影したものを水洗いして三枚に下ろす。
下ろしてみてビックリ。身が締まり、どことなく膨らみを感じたからだ。
活魚なら当日は身が透明だけど、今回のものは白濁して白い。
それ以外は活魚と変わらない。
まずは皮を引き、刺身に。
皮目をあぶって氷水に落として水分を切り、刺身状に切る。焼霜造りにしてみた。
二宮定置のみなさん、ありがとうございました。


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