マナガツオの刺身は西の味だった
鋭角的な味ではなく鈍角的な味だ
脂が身に均質に混ざり込んでいて、舌に乗せると、少しとろっとする。
ほの甘く、ちゃんと魚らしいうま味が感じられるけど、全体に淡い。
これこそがマナガツオの味なのである。
このちょっとわかりにくいおいしさが、最近、年のせいかもわからないけどわかりすぎるくらいわかるようになった。
若いとき、関西などに行くと何気なく食べるものでしかなかったが、最近では積極的に求めて食べるものに変わっているのである。
マナガツオは非常に高価だけれど、ついつい手が出てしまうのは、まずは刺身にしてうまいからだ、とも言えそうである。
和の料理にするならマナガツオは大きい方がいい
八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産に来ていたのは、沖合い底曳きが盛んな、愛媛県八幡浜のものである。鱗の剥がれやすい魚で、できるだけ鱗が残っているものを選ぶ。
選んだ体長32cm・1.493kgは今年最大のマナガツオだ。
マナガツオは昔、関東では漬け魚用の魚でしかなかった。当然、扱いが悪く刺身で食べられるものは少なかった。希に刺身にできそうなものの値を聞くと、非常に高価だった。
今でも高値は続いているものの、いいものが増えている気がする。
ちなみに昔はサワラも主に西日本の魚だったが、産地自体が北上したために関東でも人気が高くなっている。マナガツオの産地はいまだに西日本だが、関東での評価はじわじわと揚がってきているのだ。これなどハモと同じで関東において料理法が確立されて来たためである。
ちなみにマナガツオは1kg以上がいい。
築地場内(現豊洲市場場内)では、若い個体は中華などに使われ、大型は和に使われた。若い個体は数を揃えててさえいれば売れる商材だったが、逆に和に使う大型は売りにくいという仲卸もいたのである。
さてマナガツオの産卵期はそろそろ終わろうとしている。今回の個体は大きな真子を抱えていた。
産卵期の魚は難しいが三枚に下ろすと、いまだに脂はのっていて、切れ端を口に入れると脂の口溶け感がある。
皮を引いて刺身にする。
今回はわさびを添えた。