栃木県宇都宮市今里、梵天祭の料理

ハタについて

一般的に「ハタ」とされているものはハタ科ハタ亜科でアラ族、キハッソク族、ヌノサラシ族、ハナスズキ族を除いた種である。
狭い意味での「ハタ」はマハタ属をいい、関東では「ハタ」だが、中部地域・紀伊半島などでは「マス」、九州では「アラ」と呼ばれている。
クエ、マハタなど大型になる種が人気である。特に九州ではクエを筆頭に大型のハタ類「あら」をとても好んで食べる。
マハタ属以外では九州、沖縄などで揚がるスジアラ属が重要である。マハタ属の魚は小型種も含めて総てが高級魚で、近年好んで食べる地域が拡大していて、養殖も盛んに行われている。


梵天が山頂の神社をめがけ駆け上る


栃木県宇都宮市今里にある羽黒山神社の創建は平安時代康平年間(1060年頃)とされている。
ここでで秋、11月の第3土曜日に行われるのが梵天祭だ。
江戸時代の中頃に収穫を感謝して始まったもので、350年以上の歴史がある。
15メートルほどの2本の長い竿竹の先に梵天という房状の飾りをつけたものを、今里の町を揃いの半纏をまとった若者が練り歩く。
その後、一気に山上の神社まで運び上げ、境内に立て奉納する。

「あら」について

九州ではクエをはじめ大型になるハタ科の魚をハタと呼ばないで「あら」と言う。九州場所のある11月にはクエを使った「あら鍋」が有名であるし、唐津くんちのときに食べる「あらの姿煮」も有名であるために「クエ=あら」という認識が強い。
そこで問題になるのがハタ科ハタ亜科アラ族アラ属アラの存在である。この魚がしばしば九州の「アラ」と混同されているので要注意だ。
ちなみに九州の「アラ」はハレの日だけではなく、日常的にも食べられている。非常に高価なのでご馳走のたぐいではあるが「あらの湯引き」は九州ならではのものだ。


祭の日には親戚・家族が集まる

羽黒山神社境内に梵天を立てる。

今里内のお宅では親戚が集まり、けんちんや、里芋の入ったけんちんうどん、里芋など素朴な料理が並ぶ。
そこに欠かせなかったのが「さがんぼうの煮つけ」と「あゆのくされずし」である。

八王子綜合卸売センターは八王子市北野町の浅川の岸にある。なんだかんだと公園や住宅、バスの車庫などごみごみしたところである。地方の市場はだいたいこんなところにあるに決まっているといったら市場通にはおわかりだろうか? その隅っこにあるのが『市場寿司 たか』である。店主のたかさんといったら、決して名店を作ろうとも、儲かる店をつくりたいとも思っていない。だいたい朝の「豪海投げ込み丼(ちらし)」が500円ではとても儲けは出ない。しかも困ったことに毎日のように訪ねてくるのが、もっとお金に縁のないぼうずコンニャクだから、悲しいたらありゃしない。しかも毎回、無理を承知で頼んでくる。今回のテーマは今は幻のネタ、「煮いか」である。夏に旬のマダイの春日子も持ち込んで。ちょっと旬の特ネタのお話をする。ちなみに寿司屋やいちばんうれしいのは、その日のネタを聞いてくれること。定番のネタよりちょっと高いが、これがうまいんだな!


梵天祭のとき出される「さがんぼうの煮つけ」


また社務所で出される膳には「さがんぼの煮つけ」がのる。
この地区では梵天祭だけではなく、寒い時季には盛んに「さがんぼ」を食べる。
祭や正月などにも欠かせないものである。
「さがんぼう」は栃木県全域、茨城県の山間部、海から通り地域での呼び名だ。
江戸時代の『物類称呼』(越谷吾山著 安永4/1775 解説/杉本つとむ 八坂書房 1976)に〈下野国宇都宮辺にて「さがぼう」と云う〉がある。
語源は「つらら」の形が本種の皮を剥いた状態、剥きザメに似ているので、「つらら=すが」からだとの説がある。
明らかに供給地であったであろう、福島県や茨城県の海辺では「あぶらさが」という。
この「あぶら」がとれて、「さが」が残り、愛称などに使う「ぼう」がついたのかも。
剥き身にして運べ、煮つけにしてとても味がいいので、海のない栃木県で重宝されたのがわかる。
写真は羽黒山神社の社務所で振る舞われていた「さがんぼの煮つけ」。

梵天祭の日に出来上がる「あゆのくされずし」


梵天祭に合わせて、今里地区の方々が作るのが「あゆのくされずし」である。
夏、7月にとったアユは開いて塩漬けにしておく。
羽黒山神社の梵天祭の一週間程前に塩漬けしたアユを水洗いして、もどした切り干し大根、ご飯と漬け込む。
伝統的な製法そのままに作っている笹沼春子さんが作ったものだ。
比較的発酵臭が少なく、本なれずしではなく、ご飯とともに食べる「なまなれ」である。


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