徳島県海陽町宍喰のヒライの焼き切り
2㎏を超えると高級魚そのもの

八王子綜合卸売協同組合『マル幸』に島根県産スマがきていた。2kg上もあって脂がありそうだったので買い求めた。意外にスマの旬はわかりにくい。例えばこの時季は生殖巣が膨らんだ個体が多く、初夏ほどには脂が乗っていないことが多い。
2000年以前はとてもローカルな食用魚だった。西日本の太平洋側に多く、あまり関東にはやって来なかった。それが今では北海道でも揚がり始めている。東京都豊洲市場では大きくて鮮度のいいものが普通に並んでいる。こうなるとますます水揚げ地が北に広がり、旬がわからなくなりそうである。
標準和名、スマは東京での呼び名だとしているが、明治・大正と活躍した動物学者岸上鎌吉が提唱した「やいと」の方が地方名などを見る限り、混乱は少なかったように思える。
卵巣は成熟しているものの脂はあった
材料はスマと玉ねぎ、柚子の酢だけ

刺身にすべきだ、とは思ったが、徳島県海部郡海陽町宍喰、長尾桂一郎さんに教わったばかりの「焼き切り」を作る。
ここではあくまで宍喰での呼び名、やり方で作るが、地域での料理名があればぜひ教えて頂きたい。
さて、今回は三枚に下ろして腹の身を使って作った。
表面をバーナーであぶる。
刺身状に切り、手に柚子酢と塩をつけてたたく。
後は玉ねぎのせん切りを乗せるだけだ。
辛い青唐辛子やにんにくなどを加えて食べてもいいだろう。
2㎏1尾分の腹身でたっぷりあるのに、すいすいと口に入る。濃厚なうま味と脂が舌の上でとろける感が心地いい。
昼間なのでノンアルコールビールにしたが、まんぞく、まんぞく、なのだ。