コラム

相模湾で鮹さん大釣り、二番手はチダイ

チダイは血鯛

相模湾のチダイ

標準和名のチダイは関東、特に魚河岸で使われていた呼び名だ。鰓蓋骨の後ろ側が血がにじんだように赤いところから「血鯛」と呼ばれていた。小滝鯛という名もあった。
明治期から大正期にかけて魚類学者はさまざまな魚を記載(学名をつける)し、標準和名をすでにあった呼び名からとったり、つけたりした。本種は田中茂穂が1931年に Evynnis japonica Tanaka, 1931 という学名で記載して、東京での呼び名を標準和名にする。残念なことに国内の生き物を大量に持ち帰ったシーボルトとその後継者たちが、すでにオランダに持ち帰り、研究していた中に含まれていたために幻の学名となる。まあ1931年、オランダは遠すぎたということだ。これからわかるようにいかに分類が複雑で重労働かがわかる。
関東では花鯛(ハナダイ)という。船釣りなどでは大釣りできるので人気が高い。ただしたくさん釣れる浅い海域のは小型で、数釣りできない深場の方が大きいのだ。
蛸さんが釣り上げたチダイは明らかに深場のもので、非常に形がよく全長30cm ・427gもあった。こんなのがクーラーにいっぱい釣れたなんて凄すぎる。その上、触っただけで脂ののりが感じられるといった個体だった。

チダイの塩焼き

チダイの塩焼き

いただいてすぐに二枚に下ろす。骨つきの方に振り塩をする。
塩焼きは振り塩をして数時間寝かせてから、焼き始める。
途端に脂が液化して泡立ち始める。これが身に回り、身を焦がす。
このような料理はアチチといいながら手で食べるといい。
半身が瞬時になくなると思う。

チダイの刺身と酢洗い

チダイ刺身盛り合わせ

片身の背は刺身に、腹の部分を酢洗いにする。
まずは二枚下ろしの骨のない方の腹骨と血合い骨を切り取る。
腹の方に強塩をする。
30分くらいしたら背の部分の皮を引き刺身を作りはじめる。
刺身は数分で出来上がるので、強塩をした腹身を酢であらって拭き取らないでそのまま放置する。この数分で酢が馴染む。
刺身が出来上がってすぐに腹身の部分の酢を拭き取って適当に切る。
夜更けの酒の肴としてはやけにゴージャスなものとなる。
釣って半日以内なので食感が強い。脂がのっているためか甘みが感じられる。
刺身や塩焼き以上にうまかったのが酢洗いである。日本料理の基本的な料理だが、塩で締まった身の口に入れたときのボリュウーム感、食感のほどよさ、うま味の豊かさが一時にきて、最後に酢の風味でそれを納めてくれる。
最近お気に入りの『高清水 純米酒が』すすみ過ぎて困るといった味だ。
宇佐美沖で大釣りした鮹さんに大感謝!


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